6月1日、神奈川県警は、バイクなど約150台で暴走行為を繰り返したとして、暴走族「川崎宮軍団」の43歳の代表・藤井敏容疑者を逮捕した。容疑は道路交通法違反(共同危険行為等の禁止)と、県暴走族追放促進条例違反(離脱の妨害)。離脱の妨害での摘発は、初めてのケースだという。
「川崎宮軍団」は、2019年に結成。横浜市や川崎市を拠点とし、10~40代の男女、約400人が所属する神奈川県最大規模の暴走グループだ。
藤井容疑者は、町中を走っている暴走族を見つけると、次々にスカウト。その全員が入団を余儀なくされ、メンバーになると、月3000円の支払いを強いられていたという。
藤井容疑者は2021年10月30日夜、メンバーと共謀し、川崎市や横浜市の国道など計約30km間で暴走行為を繰り返した疑いで逮捕された。と同時に、2021年12月ごろ、脱退を求める少年(17)に、SNSで脱退を妨害するメッセージを送った疑いももたれている。
この報道を受け、SNS上では「43歳の暴走族代表」にあきれる声があがった。
《43にもなってね…しかし、もはや伝統のスタイルですね。どの地域にもしぶとく生き残ってるようですが》
《43のいい歳したオッサンが暴走族の代表って恥ずかしすぎるね》
《43歳にもなって暴走行為を助長するって、相当だなと思う。カッコいいと思っている自分達が恥ずかしい》
「いまの暴走族は40代が多くて、なかには50代、還暦に近い人もいます」
暴走族の異常な高齢化を指摘するのは、警察や裁判所から年間100件ほどの鑑定依頼を受ける一般社団法人・法科学解析研究所代表理事の石橋宏典氏だ。石橋氏は、これまで数千件の鑑定依頼を受けてきた事件・事故鑑定のプロフェッショナルだ。
「2000年代から、暴走族の高齢化は始まっていました。それまでは、だいたい25~26歳になると暴走族を引退していたのに、引退できなくなったのです。理由のひとつは、構成員の人格が幼くなって、大人になり切れていないこと。それから、規制が厳しくなって、『暴力団』という暴走族の受け皿がなくなってきた、ということもあります」
若者のバイク離れも、暴走族が高齢化する要因となっている。
「後継者がいないから、引退できないと考えているのです。最近の若い人は、バイクが買えない。かつては、実家暮らしで2~3カ月もアルバイトをすれば、中古のバイクぐらいは買えました。ところが最近は、アルバイトのお金を家に入れる子も多くて、バイクなんていう余裕はありません。それから、若者が暴走族の人間関係を嫌がる傾向も出てきています。
暴走族の文化として、『疾風伝説 特攻(ぶっこみ)の拓』や『湘南爆走族』などのマンガがあります。80~90年代の人気マンガで、最近も続編やスピンオフが描かれていますが、読者の中心はもう40歳過ぎ。彼らの中には、若いころにバイクを買えなかったけど、ある程度、稼げるようになった今、趣味の範疇で『暴走族』をやっているという人も多いんです。
今回の神奈川県のケースは、43歳の代表にカリスマ性があったのではないでしょうか。お金だけ払っておく、というメンバーもいたと思いますよ。それでなにかあったら守ってくれる、みたいな。神奈川県の川崎市周辺の暴走族には、そういう文化があるようですから。
とはいえ、あと半世紀もしないうちに、暴走族は“伝統芸能”のような存在になっていると思いますよ」(石橋氏)
暴走族も、後継者不足に悩む時代になったのだ。
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