「4月初めには、今回の立ち入り検査の対象になったホテルから、ほぼ錯乱状態だった20歳前後の女性が救急搬送された。検査の結果、女性に覚醒剤反応が出て、新宿警察署に逮捕される事件もありました」
東京都新宿区の繁華街・歌舞伎町の商店主組合である、歌舞伎町振興組合の役員の一人はこう漏らす。
歌舞伎町・新宿東宝ビル周辺に出歩く若者「トー横キッズ」らの宿泊先になっているとして、「トー横」近辺にあるホテル4軒に立ち入り検査が入ったのは4月21日のこと。
1部屋を複数人で使用する旅館業法違反の疑いがあるとして、ホテルへの出入りを警察官が24時間体制で監視。宿泊客以外のホテル内への出入りに厳しいチェックを入れていたという。
「トー横キッズと関係がある者たちが、薬物所持容疑で逮捕されることはしばしば。4月に搬送・逮捕された女性も、やはりトー横周辺にたむろするグループにいたようです。もともと目立つことを避けていただけに、かえって薬物汚染が広がる結果になったわけです」
立ち入りされた4軒のホテルでは、深夜に自動チェックイン機から発行されるカードキーを使い回す手口で、若者たちは部屋の定員を大幅に超える人数で宿泊していたようだ。近隣の飲食店従業員がこう明かす。
「多くは未成年から、20代前半の男女。4軒のホテルは、いずれも1泊8000円程度で宿泊でき、1カ月前の予約や連泊で料金が大幅に割り引かれるシステムです。予約した一人が、TwitterのDM機能などSNSを活用し、同宿者を募って割り勘で宿泊しているのです」
歌舞伎町に続々と開業していた中級ホテルの多くは、コロナ禍で宿泊料金が大幅に低下。それまで歌舞伎町内のサウナに宿泊していたトー横キッズらがホテルに移動してきたという。なかには、シングルルームに10人以上も宿泊していたケースがあった。
もっとも、今回の立ち入り検査の理由は、旅館業法違反。この先、処分を受けるのはホテル側になるので、とんだトバッチリをこうむったともいえる。しかし、飲食店従業員はこうも明かす。
「部屋に行くため、フロント前を通過しなければいけない構造のホテルもあります。しかし、明らかに過剰な人数が出入りしていても、黙認状態だったとも聞いています。
予約者のなかには、利用者から宿泊代金を徴収し、その差益を手にする一種の貧困ビジネスもありました」(同前)
冒頭の組合役員は、歌舞伎町「トー横」周辺の実態をこう嘆く。
「なんらかの事情があるにしろ、十分な所持金もなく若者が盛り場に住みつけば、安全な状態で生活できるわけがない。
歌舞伎町を徘徊する若者に洗顔料や化粧水、コンタクトレンズ洗浄液まで無償配布しているNPOもあるが、こうした支援が不法定住を促進する結果になっています。
盛り場は、使えるお金がある人が来る場所です。そこは理解してほしいと思います」
実際、こんな目撃談も聞かれた。
「ホテルから出てくる20歳くらいの女性に、次々と携帯電話を渡している若い男を何度も見ました。おそらく、援助交際などの斡旋業者でしょう。出会い系サイトで取ったアポイントに女性を向かわせているのだと思います。
業者がアポを取ってきた携帯を女性に渡すことで、相手に怪しまれないようにするのでしょう。つまり、ホテルを待機所のように使うことで、業者からすれば24時間対応を謳えるわけです」(近隣の飲食店店主)
今回の捜査は、「トー横キッズ」たちへの救いの手となるだろうか。
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