11月14日、北海道札幌市で走行中の車のタイヤが外れ、歩行中の園児に直撃。園児は3歳ぐらいの女の子で、意識不明の重体であることが報じられた。
同日に配信された「北海道ニュースUHB」の記事によると、外れたのは車両の左前のタイヤで、オフロード仕様。車両は4輪駆動の軽乗用車で、車高を高く改造したとみられる。車両からはボルトが5本とも外れていたという。
警察は、車を運転していた40代の男を過失運転致傷の現行犯で逮捕した。
報道を受け、X(旧Twitter)では、「助かってほしい」「意識戻って」と女の子の回復を祈る声が上がるとともに、運転手への批判が広がった。「改造車」にも厳しい目が向けられている。
《明らかに改造の結果と思われ、事故を起こした人間は大きな責任を背負ってほしい》
《クルマ見た感じ違法改造車っぽいよね、タイヤが車体からはみ出てるし》
《車高を高くする改造?違法ではないのか?先日の渋谷スクランブル交差点の事故の車も、このような改造していたよね》
《改造車って全面禁止にできないのかな。渋谷駅前スクランブルの事故も改造車だったよな》
改造車について、モータージャーナリストの佐藤篤司氏が解説する。
「報道を見たところ、ワイドトレッド(ワイトレ)が原因の可能性があります。オフロード系のSUVは、車高を上げて迫力を出したいという人が多くいます。しかし、車高を上げれば、それだけ重心高も上がるため、バランスが悪くなります。カーブでの安定感が失われますし、とくにSUVは左右の揺れが大きくなります。
そこで、この問題を解決する手段として左右のタイヤの距離、つまりトレッドを広げ、安定感を確保するわけです。これがワイトレです。
ワイトレにするには、タイヤの中心のハブとホイールの間にスペーサーを入れます。そうしてタイヤを取りつけることで、左右のタイヤの距離が拡がるのです。
そのワイトレ・スペーサーの厚みは、3cm、4cm、5cmなどいくつか種類があり、なかには2枚重ねて挟み込む人もいます。車高を上げてワイトレ化すれば、ドレスアップ効果が得られます。
もちろんワイトレによって、軽自動車の規定車幅である1.48m以下という規定から外れた時点で違反となり、車検に通らなくなることがほとんどです。
また、ワイトレ・スペーサーを挟み込む際、それぞれの車に合ったスペーサーや正しい取りつけ方をしないと、ホイールの回転の中心がズレたりタイヤのブレが大きくなったりします。すると、タイヤを固定しているボルトに大きな負担がかかって緩んだり破損したりして、最終的にはタイヤが外れることもあります。
現時点では推測の域ですが、今回の事故も不十分な取りつけで起きた可能性が高いと思います。
この事故車両の場合、タイヤとホイールを合わせた重量は20kg程度と思われます。当時、どれくらいの速度で走行していたかはわかりませんが、仮に時速30kmとしても、その車から20kgほどの重量物が外れて飛んでくるとなれば、衝撃は相当なものです」
渋谷の事件以降、改造車への風当たりは強いが、改造は問題ないのだろうか。
「そもそも車は保安基準の範囲内でしか改造することができず、車検で決まっている範囲内でのカスタマイズはまったく問題ありません。その範囲を超えると、違法改造車になるということです。正規の改造申請をおこなえば、サイズを変更したり排気量を変更したりすることも可能です」
改造車で事故を起こした場合、責任は誰にあるのか?
「基本的に所有者に責任があります。車両管理をおこなう義務があるのは所有者です。しかし、その改造が違法であることを認識したままユーザーに渡して商売をしていれば、そのショップにも責任は及ぶと思います。このあたりの過失割合などは、法律の専門家が判断します。
保険については、違法改造であれば任意保険金は支払われません。任意保険の定款に、その旨が記されています。合法の改造でも、保険に入れない場合があります。ただ、被害者保護を第一義とする強制保険(自賠責保険)による支払いはおこなわれます」
女の子の回復を祈るとともに、改造車のオーナーにはさらに入念な保守点検を求めたい。
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