「1年くらい、味をまったく感じなかった」
味覚障害になった過去を明かしたフリーアナウンサーの田中みな実。12月23日放送のTBSラジオ『田中みな実 あったかタイム』で、約10年前の体験を赤裸々に語った。
ゲストに迎えたヒップホップユニット・Creepy NutsのDJ松永と、食生活についてトークをしていた際に、田中は突然、「あんま味覚ないんですよね」と告白。「世にも奇妙な物語みたいな話じゃない」と松永を驚かせると、「だいぶ前(10年前)の失恋」をきっかけに味覚が弱くなったと続けた。
そのときは「味がゼロ」になり、じわじわ取り戻したものの、今も「100%ではない気がする」という。その失恋後も新しい交際相手はできたが、味覚が戻ったかどうかはわからないという。
さらに、味覚以外に変化はなかったかと松永に問われた田中は、「食べられない、眠れない、水も飲めない。なにも喉を通らない」と答えた。だが、その後、健康を意識して生活を見直すと眠れるようになり、肌もキレイになってビューティー誌の仕事が来るほどになったという。
味覚障害とはどのような病気なのか。医師で東大大学院医学系研究員の柳澤綾子氏が解説する。
「国際的な基準によると、田中さんが経験した症状は適応障害に含まれます。適応障害は環境の急激な変化によるストレスで引き起こされ、味覚障害、睡眠障害、摂食障害、抑うつなど、精神・身体両面でさまざまな症状をともないます。
適応障害のおもな原因は、失恋のほか死別、異動、転校、受験失敗などです。日本での患者数は、10年前と比べると約3倍に増えています。とくに、長時間労働などの職場環境の影響が大きいとされています。
注意していただきたいのは、適応障害は誰でもなりうる病気ということです。真面目でストイックな方がなりやすいと言われています。思っているよりもかかりやすく、患者さんも多い病気であることを理解してください」
適応障害になったら、どのように治療すればいいのか。
「適応障害の原因は自分ではどうしようもないものが多く、その場合は、症状に応じた投薬が一般的です。睡眠障害なら睡眠導入剤、味覚障害なら亜鉛の補充療法、抑うつには抗不安薬などを飲みます。あとは、カウンセリングや時が解決するのを待つといった方法です。
人間は徐々に環境に順応するものなので、適応障害は基本的には少しずつ改善します。適応するまでの間は、それぞれの症状への対症療法しかありません。
どんな症状が出るか、どのくらいの時間で適応できるかは人によって違います。失恋からすぐ復活する人もいるし、ずっと調子が悪い人もいる。同じ人でも、前回の失恋では適応障害にならなかったけれど、今回の失恋ではなったということもあります。
もし適応障害の根本原因が取り除けるものであるなら、もちろんそれを取り除く努力をすることをおすすめします。職場で配属変更になったことが適応障害を引き起こし、ずっと眠れないというのならば、元の部署に戻してもらう要望を出すべきでしょう」
就職や進学などで環境が変わりやすい春は、適応障害を発症しやすい季節と言われている。来年、身辺が大きく変化する可能性のある人は注意が必要だ。
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