2023年1月29日、SNSにアップされた1本の動画。そこには、岐阜県内の回転寿司チェーン「スシロー」のボックス席に座った金髪の少年が、備えつけの醤油の差し口や未使用の湯呑みを舐めまわして元の位置に戻したり、回転レーン上の寿司に、指につけた唾液を何度も擦りつける様子が映っていた。
この動画が拡散されると、SNSには、
《スシローの迷惑動画、本当に気持ち悪い もう行けないわ》
などの声があふれかえり、「スシロー」の運営会社「あきんどスシロー」の親会社「フード&ライフカンパニーズ(以下、F社)」の株価は暴落。一時は時価総額で170億円が吹き飛ぶ大損害を被った。
騒動直後、同社の広報担当者は、本誌の取材に「刑事と民事、両方で訴訟ということになります。犯罪行為ですし、私たちも商売のダメージを受けている状況ですので。そういう事実をちゃんと清算していただこうと、法にのっとって進めていく所存です」と語っていた。
あれから5カ月――。少年は、唾液のついた指で寿司を触るなどした器物損壊の疑いが持たれており、岐阜県警が6月28日付けで書類送検された。
また、F社の水留浩一社長は「彼は彼で被害者だと思っている」と温情をかけていたものの、「あきんどスシロー」は、3月22日付で、少年に対して約6700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴していたことがわかっている。
文字どおり、「刑事と民事」での裁きを受けることになった少年だが……本誌は事件直後、少年の母親に話を聞いている。
「今回は、もう……。皆さんにご迷惑をお掛けし、本当に申し訳ございませんでした」
記者が質問する前に、深々と頭を下げながら、そう切り出した母親。その様子は憔悴しきっていた。
――息子さんの状況は?
「(途切れそうな声で)あと先を考えずに、軽はずみな気持ちでやってしまって……。たぶん調子に乗っていたのだと思います。(息子は)自分がやってしまったことがたいへんなことになってしまって、どうやっておわびすればいいのか、混乱している状態です」
――スシローに謝罪に行った?
「私も一緒に行きました。本人に、相手さま方の顔を見て頭を下げてほしかったのと、私たち両親も、どうしても謝りたいと思いましたので、無理にお願いして、おわびをする時間を作っていただきました」
――相手方は損害賠償を求めるなど、厳正に対処する方針ですが……。
「悪いのは私たちなので、反省しておわびをすることと、あちらさまや警察の判断におまかせして、償っていくことしか、私たちにできることはないと思っております」
少年側は5月に地裁へ提出した答弁書で請求棄却を求めている。行為は認め、「反省の日々を送っている」としながらも、「客の減少は同業他店との競合も考えられる」と反論し、争う姿勢を示しているという。
耳目を集めた大騒動の落としどころは、はたしてどこになるのか。
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