6月7日、東京都は「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」に基づき、渋谷・道玄坂2丁目地区を「街並み再生地区」に指定し、まちづくりのガイドライン「街並み再生方針」を定めた。
2003年に制定された同条例は、個性豊かで魅力のあるしゃれた街並みづくりを進め、東京の魅力向上に資するまちづくりに取り組むという内容だ。
道玄坂2丁目といえば、「SHIBUYA109」をはじめ、ライブハウス、飲食店、さらにはラブホテルなどが密集し、24時間、賑わうスポットとして知られている。
今回の「街並み再生」の意図について、東京都の「都市づくり政策部土地利用計画」課長はこう説明する。
「年々渋谷は大きく変わっていますが、世界の注目を集め、多様な方が活動する場所にしたいと思っており、界隈性と雑多な魅力にあふれたエンタメ都市の体現を守りながら、未来につなげたいという意図があります。
地区計画に関して、2019年くらいから地元の方と話を進めていました。大まかな方針としては、建物の低層部に店舗が入れ、それが続いているというイメージ。渋谷の音楽文化など、地域の個性を伸ばすような視線の誘導。そして、路地空間と大通りの賑わいを活かして歩いて楽しい空間の形成です。
そのためには老朽化して危ない建物は建て替えたり、歩道を整備する必要があります。道路斜線制限(建築物の高さ規制)を緩和して、しっかりした建物を作ろうと思っています」
しかし、SNSでは再開発に対し、こんな批判的な声があがっている。
《繁華街はこれからなくなり、大きなショッピングモールの中で皆な遊ぶのね。「しゃれた街並み」の中で、決められた場所で買い物し、決められた場所にたたずむのが街で遊ぶ、という意味になる》
《都市から“影”とか“いかがわしさ”が漂白されちゃったら、もう都市の意味は失われる。ただの“巨大な田舎“だ》
建築エコノミストの森山高至さんも、この再生に懸念を抱く。
「道玄坂は店舗の更新があまりされておらず、細い路地や風俗街がある独特の雰囲気があります。渋谷区の取り組みとして、言葉では “しゃれた街並みづくり” と言っていますが、実際には中身はなにもなく、たんに “渋谷区を賑やかにしました” というアピールなんですね。
路地というのは、道の幅と軒の高さが大事です。人間の感覚として、あまりに道幅が広いと魅力を感じにくい。しかし、建築や法律は、人の感性と関係ないですから、明治神宮外苑の再開発のように樹木を伐採するようなこともするんです。
道幅が狭いと、緊急車両が通れないといった問題もありますが、だったら、燃えにくい素材を利用して建て直すなどの対策を取ればいいんです」
そして、路面店にはチェーン店が増え、「若者にとってのチャンスが少なくなる」と森山さんは指摘する。
「再開発した場合、路面店には大きなテナントを入れることが多いです。敷地が大きいとテナント料も高額ですから、資金力のあるチェーン店が出店するでしょう。
ですが、区切りをたくさん作り、家賃を抑え、個人でも店を出せるようにしないと、若い人がチャンスを掴みにくくなります」
東京全体で再開発の機運が続いているが、渋谷に継ぐ再開発はどこなのか。
「新宿の “ゴールデン街” や “思い出横丁”、そして三軒茶屋にある “三角地帯” なんかは、すでに立ち退きが進んでいます。このエリアの特徴はやはり古い店が密集していることです。
こういう場所は再開発にあげられやすいですが、『なぜ人が集まるのか』というのを考えて慎重に進めた方がいいですね」
若者の街として知られてきた渋谷。いったいどのように変わってしまうのだろうか。
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