「今回、いちばんの “標的” とされた52歳の教官は『アオルタ』と呼ばれる胸部大動脈を撃たれ、病院に搬送された時点ですでに心肺停止状態。大量出血のため亡くなりました」(捜査関係者)
6月14日午前、岐阜市の「日野基本射撃場」での訓練中に、自衛官候補生A(18)に銃撃され、指導係を務めていた菊松安親(やすちか)1曹(52)と八代航佑3曹(25)が死亡。原悠介3曹(25)が3カ月の重傷を負った事件。
岐阜県警はAを逮捕し、殺人容疑で送検した。
岐阜県出身のAは、2023年4月に自衛官候補生に採用された際の適性検査で「問題なし」と判断され、これまでも問題行動はなかったという。
「高校2年のとき『装備や戦車、銃に興味があるから自衛官になりたい』と話していたんです。そして、『自宅を出たいから、寮生活もいいな』と」
こう話すのは、Aの高校時代の同級生だ。彼は自衛官への憧れを語るAを覚えていただけでなく、高校3年になると、岐阜県内の駐屯地に一緒に見学に行ったこともある。
「Aと彼の弟、僕で見学に行きました。寮の中を見たり、食堂でカレーを食べたり。Aは非常にテンションが上がっていて、楽しそうに見えました」(同前)
そんな彼が「寮生活」を希望するのは、家庭環境が影響していたのかもしれない。Aの実家はトタン外壁の借家。そこに、両親と6人きょうだいが暮らしていたという。Aは次男だった。
“自立”を意識していたのか、県立高校に通っていたときはそれぞれ別の時期に、計3カ所でアルバイトに勤しんだ。Aが働いていた、あるバイト先の関係者はこう話す。
「本人から『中学途中から里親に預けられたんです』と、聞かされたことがありました」
証言だけでははっきりとしないが、ほかにも何人かの同級生たちが「小学校に転校してくる前に、Aは児童養護施設にいた」「施設から学校に通っていたようだった」と話している。そうした生活からの“脱出”のためにも、自衛隊入隊を夢見ていたのかもしれない。
そんなAが心のよりどころにしていたのは、趣味のゲーム。小学校の卒業文集にも「ゲームのソフトを開発する仕事をやりたいです。ゲームが好きだから」と記していた。なかでも、彼が高校時代にハマっていたのは「バトロワ」とも呼ばれる「対人戦闘ゲーム」で、バイトで稼いだ給料はゲームに使っていたようだ。
「彼の家に遊びに行ったとき、対人オンライン対戦のシューティングゲームの設備がそろっていたことが、印象に残っています」(別の高校同級生)
高校時代は友人も多く、明るかったという。ただ中学、高校でAと同じ学校だった同級生は、こんな思い出を話す。
「中学のとき、Aの姿をほとんど見ることがなくなり……高校の入学式で、久しぶりに再会したんです。そうしたら、明るくて別人みたいで驚きました。中学時代は、団体行動が苦手な“一匹狼”といった感じだったんですよ」
小学3年で、現在の実家がある地域に引っ越してきた当初は、問題行動や学校を抜け出すことがあったという。
小学校の卒業アルバムを見ると、Aはつねにマスクを着用していた。そのことを不思議に感じた本誌記者が尋ねると、小学校時代の同級生の母親はこう話すのだった。
「まだコロナ禍でもなかったのに、Aくんはずっとマスクを着けていたんです。顔は見せても“顎マスク”。でも、周囲はAくんのマスク姿は普通だと思っていたので、当時は何も違和感を覚えなかったんです」
中学時代は同級生との接点がほとんどなく、高校では入学直後からコロナ禍に。Aは10年にわたって、人前でマスク生活を続けていたということか――。
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