7月に亡くなった安倍晋三元首相(享年67)。9月27日の国葬に先駆け、9月24日、台湾・高雄市で等身大の銅像の除幕式がおこなわれた。献花のほか、日本円で270万円余りの松の木の寄付もあったという
台湾の安倍元首相の銅像以外にも、森喜朗元首相(85)や、菅義偉元首相(73)の胸像も計画が進行中だ。
銅像建設の相場は500万円程度というが、全国各地に政治家の銅像は建てられている。銅像ジャーナリストの墨威宏(すみ・たけひろ)氏に聞いた。
「恩義を感じている人たちが募金を集め、土地を用意するなど、建立時は盛り上がりますが、除幕式が終わって数十年が過ぎると、建立した人々が亡くなり放置されてしまうことも多い。
管理団体が解散してしまい、自治体も所有者がわからなくなってしまうこともある。銅像はメンテナンスをしないと、酸性雨などでボロボロになり、なかには、腐食で幽霊のようになってしまう銅像もあります」
実際に田中角栄の銅像管理を聞くと
「把握してない」(自治体)
「管理してるかと言われると……」(田中角榮記念館)
とはっきりしない。
首相経験者の鈴木善幸の銅像も「建てたまま、特段メンテナンスはしていません」(自治体)と返答。
菅元首相や森元首相の胸像も、こんな悲しい末路を辿らなければいいが……。
以下には、超大物政治家の銅像10体の本誌が取材した「現在」について記載する。
●佐藤栄作(山口県・瀬戸公園)
山口県柳井市と周防大島に大島大橋を架けるのに尽力した佐藤栄作の功績を称え、1977年に「佐藤栄作先生銅像建立委員会」が建立。瀬戸公園が管理、費用は不明。
●池田勇人(広島県・広島城前)
【建設費】 2345万円
広島県が生んだ宰相の貢献を称え、1970年に「池田前総理銅像建設委員会」が建立。募金でまかなわれた総工費は2345万円。広島市に寄付され、市が現在は管理している。
●田中角栄(新潟県・浦佐駅前)
【建設費】 約2億円
“政界の闇将軍”ともいわれ、多大な影響力を持った田中角栄。2005年には、娘の眞紀子氏と「角友会」が、像の上への雪よけの屋根の設置をめぐって調停が起き、注目された。「管理していた『角友会』は解散しており、現在の管理者は把握していない」(自治体担当者)。
●石橋湛山(東京都・立正大学)
【建設費】 3体で1500万円
総理大臣経験者である立正大学16代学長・石橋湛山。「学長・石橋湛山」として、開校150周年を記念し、2022年に計3体建立。開校150周年記念事業募金から銅像制作をおこなった。
●竹下登(島根県・道の駅 掛合の里)
県議から平成最初の首相となり、地元島根県に“竹下王国”を築いた。「竹下登先生の銅像を建てる会」が2006年に建立し、雲南市の国道沿いにある道の駅に立つ。管理は前出の建てる会がおこなっている。約7000人から寄付が集まった。
●小渕恵三(群馬県・中之条町ツインプラザ前)
【建設費】 約2000万円
1998年に総理大臣に就任し、“人柄の小渕”として親しまれた。銅像は2002年に「小渕恵三元総理銅像建立委員会」が建立し、学習センターである中之条町ツインプラザ前に立っている。前出の建立委員会が管理する。1万人ほどから約2000円ずつカンパを集め、建設した。
●吉田茂(神奈川県・大磯城山公園)
北の丸公園に建つ吉田茂像は、総理大臣在任時に国民公園発足に尽力したこと、園内にある日本武道館で国葬がおこなわれたことから、「吉田茂生誕百年記念事業実行委員会」が1981年に建立。同年、当時の環境庁に寄付された。
また、吉田の父親の故郷・高知県にも、高知空港に銅像が建てられた。こちらは「吉田茂先生銅像建立期成会」が1984年に建立し、同年、高知県に寄付。大磯城山公園の旧吉田茂邸地区内の銅像は、1983年に顕彰碑建立委員会が寄付を募り建立。大磯観光協会が所有していたが、2017年、神奈川県に寄付された。
●鳩山一郎(東京都・鳩山会館)
内閣総理大臣を務めた鳩山一郎邸に、日ソ国交回復50周年を記念してロシアから寄贈された。2007年安倍元首相、フラトコフ首相出席のもと、除幕式を開催。銅像は「北方領土」返還を見つめ、モスクワ方向に向いている。
●小泉純也(鹿児島県・万世小学校)
小泉純一郎元首相の父で、防衛庁長官を務めた。彼の功績を称え、1971年に出身校である万世小学校に有志が建立。2021年に放送された旅番組で、孫の小泉孝太郎が紹介した。
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