5月3日、CBCテレビは、三重県桑名市にある認定こども園「長寿認定こども園」で、不適切な行為があったことが判明し、桑名市が調査をおこなっていると報じた。
報道によると、昨年度、給食を食べ切れなかった園児に対し、ある保育士がおよそ4時間にわたり食べるように指導を続けた結果、園児はトイレに行けず失禁してしまったという。
「桑名市はほかに虐待行為がなかったか、立ち入り調査を進めているとのことです。園も事実を認めており、保育士は現在自宅待機中で、園長は辞職を申し出ているそうです」(事件担当記者)
三重県内の保育士は、「悪い噂を聞いたことはなかった」と首をかしげる。
「4時間も食べさせようとするのは明らかに異常で、完全な虐待ですよね。園の評判というのは、保育士同士の間でよく出回りますが、この園に関しては保育士がやたら厳しい指導をすると聞いたこともありません。“おかしな保育士” が混ざりこんでしまったということでしょうか……」
だが、県内の複数の保育士に聞いたところ、今回の “給食を食べさせる” という指導自体はよくおこなわれるもので、なかには行き過ぎた指導もあるという。
「給食時間内に食べ切ることができなかった園児を、完食するまで、机に残すことはよくありますね。
給食の時間が終わったら、すぐに歯磨き、昼寝と、休む暇なくバタバタしているんですが、もともと食が細い園児は、一口、二口ほどしか食べないこともあるんです。一口だけで片づけるわけにもいかず……給食の時間後も、できる限り食べ終わるまで見ることはあります。
ただ、私の園では長くても20分くらいで、食べることができれば『〇〇ちゃん頑張ったね』などと声をかけるようにしています。給食を食べてもらいたい気持ちはわかりますが、さすがに4時間は不思議です」
嘔吐させてしまった保育士もいるという。
「子供のころのほうが、食べ物の好き嫌いも多いじゃないですか。嫌がって食べない子は多いんですよ。しかし、年少さんのクラスで、その子に合わない早いペースで食べさせ、嘔吐させてしまった保育士もいました。
食が細い子、食べるのが遅い子などは、最初から給食の量を半分くらいに調節して、まずは完食するという成功体験を覚えてもらう工夫が大事なんです。
4時間は指導というよりも罰ですよね。その保育士さんは相当なストレスを抱えていたのかもしれません」(別の三重県内の保育士)
今回の異常な虐待の背景にあるのは、慢性的な人手不足だと指摘する保育士もいる。
「保育園や幼稚園、こども園での虐待や送迎バスへの放置など、トラブルが相次いでいますが、とにかく現場は人手不足なんですよ。だから “おかしな人” も紛れ込んでしまうし、ストレスを園児にぶつけてしまう人もいる。加害者だけの責任ではないと思います」
実際、本誌が過去に100人の保育士にアンケート調査をおこなった結果、「園児を虐待したことがある」と回答した保育士が1割近くに及び、「園で虐待が問題になったことがある」という回答も、16.4%にのぼった。1日の労働時間が8時間以上という回答が73%だったのに対し、年収300万円以下の保育士が半数以上だった。
低賃金・長時間労働の現場で虐待が起きないわけがない。
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