2月22日、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、傘下の楽天モバイルの協力事業者向けイベントで講演。上限が3278円という楽天モバイルの安さを強調したうえで、「世の中に不可能なことはない」と述べ、携帯事業に自信を示した。
だが、携帯事業の道のりは険しい。2月14日に発表された楽天グループの2022年12月期第4四半期決算では、モバイル事業の赤字が4593億円に拡大したことが主因となり、グループ全体で過去最大3728億円の赤字となった。
こうした状況を受け、楽天モバイルを批判的に扱う報道も増えている。
2月20日、テレビ東京の『WBS(ワールドビジネスサテライト)』が、《楽天モバイル元社員らの不正請求事件で下請けが破産危機!? 7億円分の発注が白紙》と報道。
記事によると、楽天モバイルでは2022年、元社員らによる不正請求事件が発覚。実際に、2月14日に発表された決算では、不正請求に関連して119億円の費用を計上している。
一方、不正請求に関わったとされる企業が事業を停止したことで、孫請けへの7億円ぶんの発注が白紙になったうえ、すでに稼働している基地局に関しても、建設費用が支払われていないという。
同日、朝日新聞が《楽天が社員に携帯契約「ノルマ」?モバイル苦戦、紹介コード割り振る》と題する記事を報じた。
記事によると、楽天グループでは、従業員に「紹介コード」を割り当て、外国人の従業員は2回線、日本人の従業員は4~5回線の携帯電話の契約を求めているという。楽天社員のコメントとして、「会社は『紹介プログラムの結果が人事評価に影響することはない』と説明していたが、チームの評価には影響すると聞いた。実質のノルマだ」と報じている。
楽天グループ本社は、孫請け企業への未払いトラブルを把握しているのか。また従業員へのノルマはあったのか。本誌が改めて問い合わせると、楽天モバイル広報から回答があった。
ーーWBSでは、不正請求に関わったとされる企業の事業停止の余波で、孫請け企業への発注が白紙になったうえ、すでに稼働している基地局に関しても、建設費用が支払われていないと報じています。このような未払いトラブルが生じていることを把握しているのでしょうか。また、今後、基地局の建設費用を支払うことはあるのでしょうか?
「当社は個別の取引先からさらに業務を委託された取引先について、何等かの対応や関与を行う立場にございませんので詳細の回答は控えさせていただきます。
ーー紹介プログラムは全従業員が対象で、「ノルマ」なのでしょうか。また、契約の獲得数はチームの評価に影響するのでしょうか。
「楽天グループの従業員向けに『Rakuten UN-LIMIT VII 紹介プログラム』を実施しておりますが、このプログラムに参加した従業員の人事評価、各組織の評価等に契約獲得の有無が影響することはありません」
そのうえで、以下のような説明がされた。
「当社の対応状況について以下の通りご説明差し上げます。
当社元従業員と取引先による不正行為が発生したことは誠に遺憾です。本件については社内で判明し、警察に相談のうえ、捜査に全面的に協力しております。
当該元従業員は社内規程に基づき2022年8月12日付で懲戒解雇としており、今後は取引先を含め不正請求に関与した者に対して、刑事上および民事上の責任追及を行っていく予定です。
当社および楽天グループでは本不正行為が発生したことを厳粛に受け止め、社内調査、内部管理体制の一層の強化、社内規程の周知およびコンプライアンス教育を徹底し、グループ全体で再発防止に努めてまいります。また、引き続き事実関係の確認、原因究明および再発防止策の策定等を行っております」
ーー楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は2月22日、楽天モバイルの協力事業者向けイベントで講演し、携帯事業についても「世の中に不可能なことはない」と述べています。モバイル事業は基地局投資などで累積赤字が膨らんでいますが、今後、黒字化を目指すと考えてよいのでしょうか。
「モバイル事業については、契約者の増加、ARPU(編集部注:1ユーザーあたりの平均売上)の向上に加え、ネットワークコストの削減等に努めることにより、引き続き早期黒字化を目指してまいります。なお、2022年第1四半期の赤字のピーク以降、四半期での赤字は改善傾向にあります」
モバイル事業で4593億円、グループ全体で3728億円の赤字を黒字化できれば、たしかに「世の中に不可能なことはない」と言えるのだが……まだまだ茨の道が続きそうだ。
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