8月14日、兵庫県警は、生活経済課課長補佐の男性警部(49)が、事件関係者の氏名や住所が記載された捜査資料約400人ぶんを紛失したと発表した。
部下2人と酒を飲んだ後に路上で寝込み、資料が入った手提げカバンごとなくしたという。持ち出しの許可はとっておらず、内規に違反する。
「兵庫県警では、過去にもずさんな管理体制や組織上の問題などが報道されています。たとえば2012年には、尼崎市の連続変死事件で逮捕された角田美代子容疑者が留置場で自殺しています。
このときは、自殺をほのめかしていた容疑者を単独房に留置せず、しかも24時間の監視体制をとっていなかったことが強く批判されました。
2015年には、県警機動隊に所属していた男性巡査が自殺。遺族は、先輩や上司から受けたパワハラが原因だとして兵庫県に損害賠償を求めています。今年6月に出た地裁の判決では、『自殺との因果関係はない』とされたものの、パワハラの存在は認められました」(社会部記者)
じつは本誌は、24年前の1998年、兵庫県内の警察署がうっかり捨てた捜査資料を入手し、ズサンな管理の実態を報じている。
1998年1月8日、捜査に関連して撮影されたたカラー写真125枚、モノクロ写真1枚、未記入の留置人出入れ承認書3枚、留置人氏名欄に記入のある飲食物、金品差入れ等承認書1枚、そして警察署から検察庁に証拠書類を送付するためのものとみられる未記入の封筒2点が、神戸市内の粗大ゴミ集積場で発見された。
写真には、薬物反応を調べるため採尿させた被疑者、ガサ入れで令状を読み上げる捜査員とそれを見つめる女性、注射跡を確認するための肘の内側のアップなど、生々しい場面が写っていた。もちろん、被疑者は腰縄つきだ。
この捜査資料を拾った男性は、当時、本誌の取材に「捨ててあった古い事務机のいちばん下の引出しに無造作に入っていたんですわ。ホンマ、びっくりしました」と語っている。取材を進めたところ、兵庫県内の警察署から廃棄物として出されたゴミだと確認。あまりに杜撰な管理体制が明らかになった。
警察関係者が、当時、このように語っている。
「こうした写真は通常2セットあり、ひとつは検察庁に送り、もうひとつは署内の保管庫などに保存してある。保存期間は事犯によって3年、5年、10年などとまちまちだが、保存期間を過ぎれば、まとめて外部で焼却処分する。もちろん、警察立ち会いのもとでだ。
この写真はプリントしすぎたとか、撮影したが使わなかったものだと思う。しかし、保存しないものはすぐシュレッダーにかけたり焼却するのが普通。何かあったらすぐ顔などを確認できるように机の中にしまっていたのかもしれないが、お粗末という以外にないね」
写真のカラーコピーを持って県警本部に説明を求めると、「内部資料の流出した経緯について、徹底した調査をおこない、原因を究明する」との返答だった。その後、兵庫県警は警察署長など4人に処分を下している。
前出の社会部記者がこう話す。
「捜査資料を捨てることは、被疑者に対する明白なプライバシーの侵害で、絶対にやってはならないことです。犯罪捜査が終われば、市民のプライバシーなど気にもかけないという警察の体質が露呈した事件ですね。
今回報道された捜査資料の紛失も、そうしたおごりがもたらしたものでしょう」
記事を掲載してから24年たったが、兵庫県警の杜撰さはまったく改善されていないようだ。
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