「死刑になりたかった」
こう供述したのは、中学3年生の少女だ。少女は8月20日の夜、渋谷の路上で見知らぬ母娘を刺し、2人に全治3カ月の重症を負わせ、殺人未遂の容疑で現場で逮捕された。
捜査関係者によると、少女は「不機嫌になると態度に出る癖があり、自分が母親に似てきているのが嫌だった」「母親と弟を殺す練習をした」などと供述しているという。
新学期が始まる直前、少女が起こしたあまりにショッキングな通り魔事件。中学生の “凶行” という点では、1997年の「酒鬼薔薇聖斗事件」を彷彿させる。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏はこう考える。
「今回の事件をみて、酒鬼薔薇聖斗事件の少年もそうでしたが、『愛情に飢えていること』が事件の背景にあるように感じました。
また、供述と実際の行動があまりにも違って、アンバランスなんですよね。
たとえば、『母親と弟を殺す練習だった』と言っていますが、本番を迎えるためには練習で捕まるわけにはいかない。わざわざ人が多い渋谷を選ぶ理由も、弟を殺したいのに年上の女の子を刺す理由もわからない。
一方で、凶器を3つ用意するほど強い殺意も持っています。本当は、少女は母親に愛情があったから殺せないんじゃないかな。だから仲のよさそうな母娘を狙った可能性もあります。
仮に、今回の事件がすぐに発覚しなければ、この少女は家族以外の別の人間をさらに傷つけていたかもしれない。エスカレートすれば、女版・酒鬼薔薇になっていた可能性だってありますよ」
中学校に入学後、部活をやめ、次第に不登校になっていったという少女。社会復帰には険しい道が待っている。
「逮捕され、反省してすぐに社会復帰というのは難しいでしょうね。どんな理由であれ他人に暴力を働いてはいけないなどの、道徳的な “普通の考え” を学んでいく必要があります。
この事件、今の時代の縮図みたいなものです。
たとえ家族関係が悪くても、友人関係があれば、悩みを相談して不満や鬱憤を解消することができたかもしれない。学校は勉強をしに行くだけの場所ではなく、家族以外との人間関係を結ぶ方法も学ぶ場所です。それを放棄して殻に閉じ籠もってしまったことが、原因の一つかもしれません」(小川氏)
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