6月26日のエンゼルス―マリナーズ戦で起こった乱闘について、MLBは両チームの監督、選手を合わせて8人に退場処分を下した。
「エンゼルスの先発であるワンツ選手が、マリナーズのウインカー選手の臀部に死球を与えました。これをきっかけに、両軍の監督、コーチ、選手が総出となる大乱闘に。
DHとしてベンチに控えていた大谷翔平選手も乱闘に加わることになりましたが、通訳を務める水原一平氏が、大谷選手を守るように乱闘の間に割って入るシーンは、日本国内でも話題となりました」(スポーツ誌ライター)
体格の大きいメジャー選手の乱闘のなかに入り込む水原氏には《大谷のボディガードのよう》といった声が相次いだが、水原氏のようなスタッフまで乱闘に交じる光景は “異様” でもあった――。
元メジャー選手である伊良部秀輝氏(享年42)がウインターリーグのプエルトリコ、そしてテキサス・レンジャーズに所属している時代、彼の通訳を務めた小島一貴が、MLBでの乱闘について、自らの経験をこう振り返る。
「私がMLBでの乱闘に出くわしたのは、2002年、テキサス・レンジャースの開幕シリーズとなったオークランドでの4連戦でのこと。そのとき、リリーフ投手として勝ち試合の終盤で投げる予定になっていた伊良部選手とジョン・ロッカー選手の2人だけが、クラブハウス内に残っていて、ストレッチ等の準備をおこなっていました。
クラブハウス内にはモニターがあり、試合の状況が確認できたのですが、突如乱闘が起こった。その瞬間、ロッカー選手がクラブハウスを飛び出し、あっという間に乱闘の輪に入っていったのです。
当時、MLBでは乱闘が発生すると、ベンチにいる選手やスタッフは全員、駆け付けなければならないことになっていました。今もそれは変わっていないと思います。
全員で積極的に殴り合いしろという意味ではなく、味方の選手が殴られていたら仲間としてそれを助けよ、という意味が込められているのだと思います」
オークランドの球場のクラブハウスはバックネット裏の客席のさらに裏側の階段を登ったところにあったため、フィールドまでの距離はかなりあったという。
「ロッカー選手が猛ダッシュで駆けつけたのは、彼が血の気の多い選手だったからということもあるかもしれませんが、1秒でも早く加勢しなければという仲間意識が働いたのもあったと思います。この頃、MLBでは通訳はベンチに入れない決まりで、私は乱闘には参加しませんでした。
今回の水原氏のように、数十人の大男たちが暴れているなかで、体格に劣る通訳が物理的に選手を制したりすることは大変なことだと思います。賞賛されるべき行動でしょう」
小島氏は、もう一つ、過去の出来事を回想しながらこう語る。
「2001年オフのプエルトリコでのウィンターリーグでのこと。伊良部選手も参加していて、私も通訳として同行していました。
ある試合で乱闘が発生し、私も参加しなければならないのだと思い、ベンチを出ようとしたのですが、近くにいたクラブハウスマネージャーが『お前は行かなくていい。ケガするぞ。ベンチにいろ』と言って私を制したのです。
それでも伊良部選手が殴られたりケガをしたりしないかと心配になって、ベンチを出たあたりからやきもきしながら状況を見ていたことを覚えています。
特定の選手の通訳としては、当該選手が乱闘でケガなどしないかどうか、どうしても心配な気持ちになるものです」
大谷の “右腕” として活躍する水原氏。勇気あるその行動は、大谷を思ってこそのものだろう。
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