東京に大雪警報が発令された1月6日昼過ぎ。その男は自宅玄関の扉を開け、降りしきる雪の中、周囲をきょろきょろと警戒する。しばらく後、寒さのためか巨躯を丸め、一歩を踏み出したーー。
取引業者からのリベートなど、約1億1800万円の所得を隠したとして所得税法違反容疑で逮捕、起訴された日本大学前理事長の田中英壽被告(75)だ。12月21日に保釈され、翌22日に自宅に戻ってから約2週間。保釈後初の肉声は、荒々しいものだった。
ーー「FLASH」ですが。
田中 ああ……。
ーー理事長を辞任されましたね。
田中 俺はもう辞めちゃったんだから、なんにも話す必要なんかねーんだよ!
ーー容疑も認めました。今後はどうされるんですか?
田中 ……。
仏頂面で、黙り込む田中被告。だが、優子夫人について聞くと、表情が一変した。
ーー雪の中、どこに向かわれるんですか? 入院中の奥さんのところですか?
田中 そうそう。
ーー奥さんの容体はいかがですか?
田中 死にそうだ。もう死にそうなんだよ……。
憔悴しきった声でそう語ると、二度と聞くなと言わんばかりに開いた傘を記者に向け、視線を遮った。そして迎えに来た黒塗りの高級バンに乗り込み、優子夫人の待つ日大病院へと出発したーー。
優子夫人が日大病院に入院したのは、昨年9月の家宅捜索後だった。日大関係者は優子夫人についてこう語る。
「優子夫人はもともと持病があり、興奮して血圧が上がったりしないようにしていました。ところが、家宅捜索が入り気が動転。捜索後に失神し階段から滑り落ち、頭を打ったと聞きました。症状は回復していないそうです」
もともと「妻にはいっさい頭が上がらない」と公言してきた田中被告。自著でも「彼女の協力を抜きにして、今日の私がないことは火を見るより明らか」と優子夫人への思いを書いている。田中被告にとって、彼女はなくてはならない存在だ。
「田中被告の行動は、“夫人を守る” という点で一貫しています。田中被告が逮捕された際『(逮捕されたことを)妻には絶対に言わないでくれ』と、真っ先に心配したほどです。
逮捕後、容疑についていっさい否定していた田中被告でしたが、優子夫人が共謀に問われることを危惧し、『妻が起訴されることは耐えられない』と供述。一転して容疑を認めました」(社会部記者)
田中被告が “完落ち” した一方、日大内部では着々と “浄化作戦” が進んでいるという。前出の日大関係者が語る。
「12月27日には外部有識者10人ほどで『日本大学再生会議』も設置しました。田中派とみられる理事や評議員、職員らは、事件前まであれほど田中被告にペコペコしていたくせに、嘘みたいに転向し『何事もなかった』という顔をしています。
結局、田中被告の周囲には、理事長という絶対権力にすり寄ろうとする連中しかいなかったんです。これでやっと改革が進むはずです」
すべてを失った田中被告に残されたのは、優子夫人だけ。ヨン様ならぬ “ドン様” の、“冬の愛妻ソナタ” は、どんな結末を迎えるのか。罪を償い、ふたりだけの幸せを手にしてほしい。
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