世界的アルピニスト・野口健の「粘着LINE」「みぞおちに肘打ち」を元マネージャーが"縁切り覚悟"の告白
《一瞬息が詰まり、鈍痛が走った。
「彼は本来きわめて魅力的な人物で、『自分が支えなければならない』とまわりに思わせる才能があります。だからこそ、スポンサーはあとを絶たず、僕も彼から離れたくても離れられなかったのです」
「“暴露本” として受け止める方もいるかもしれません。ただ、“暴露” の先にある人間の美しさやどうしようもなさ、つまり人間の存在のおもしろさに辿り着きたいという思いは常にありました」
「取り沙汰されていた政治家への転身から完全に身を引いた2010年ごろから、野口さんはすごく神経質になっていったのです。当時は、スポンサー契約は順調に集まっていて、さまざまな賞をもらったりと絶好調でした。しかし野口さんは、『こんな状態がずっと続くわけがない』と、独り言を呟くようになったのです」
「野口さんの機嫌を損ねたスタッフは担当から外され、電話やメールも無視されるようになりました。『野口健事務所は24時間営業だ』と言って、昼間の小さなミスに対し、深夜にLINEで長文の叱責が来るのです。理路整然と、執拗に矛盾を突いてくるような文章で、まさに正論ではあるのですが、見ていてつらくなるものでした」
「もともと僕は小説家志望で、野口さんは関係が良好なときは『知り合いの小説家を紹介してやろうか』などと、ずっと気にかけてくれていました。本書も、当初は野口さんの純粋な評伝を書くつもりで、執筆のきっかけも、じつは野口さんが作ってくれたのです」
「私はそれまで野口さんのタレント性に惹かれていて、登山家の側面にはまったく知識がありませんでした。そこで服部さんに話を聞くと、環境保護活動などは評価したうえで、『登山の実力は、市民ランナーレベル』と言うので驚いてしまったのです。これまで知らなかった野口さんの姿が見えてきて、真実の “野口健” に徹底的に向き合ってみようと思ったのです」
「書き終えた今、あらためて読み直すとこの本は、愛憎劇ともいえる野口さんと私の18年間をつづったある種のラブレターであると感じています。