ジャニー喜多川氏が生前おこなっていた性加害が、社会問題化している。そして、声を上げた先駆者たちの呼びかけで今、「ジャニーズ事務所被害者の会」が結成されようとしている。きっかけは「週刊文春」をはじめ多くのメディアで性加害を訴えている、ギタリストの二本樹顕理氏の発言だった。
「一個人が声を上げたところで、どうにもならないんじゃないかな」
5月21日放送の『真相報道 バンキシャ!』(日本テレビ系)の取材時だった。本誌が二本樹氏に真意を質すと、「ずっと一人で抱えてきましたから」と一度目を伏せ、「もっと横の連帯があれば、状況は好転するのかもしれませんね」と天を仰いだ。いまだジャニーズ事務所からはなんの音沙汰もないという。
二本樹氏も、ジャニー氏から受けた性加害のフラッシュバックに悩まされてきた一人だ。1996年に、13歳でジャニーズJr.のメンバーとなった二本樹氏だが、入所直後にジャニー氏から、彼の自宅でもある通称「合宿所」に泊まるよう告げられた。
夜を迎えると、二本樹氏はジャニー氏から性器を弄ばれ、口に含まれるなどの性加害を受けた。その後『ジャニーズのすべて』などの暴露本を読むと、性加害の描写は「ほぼ同じ」。そしてジャニーズ事務所が微動だにしないことを見て、無力感に陥った。
「私が在所していたころに、藤島ジュリー(景子)社長も在籍していたし、一切知らないというのは考えにくい」
二本樹氏が声を上げようと決意したきっかけは、3月に放送されたBBCドキュメンタリー『J-POPの捕食者』を見たことだった。
この番組に5年越しで関わってきたのが平本淳也氏だ。当初から、BBCの取材に協力し、自身も出演して、合宿所でおこなわれた “儀式” について生々しく語った。
そして、平本氏こそ、1988年に出版された『光GENJIへ』のプロデュースや、二本樹氏が読んだ数々の暴露本を世に送り出した人物。自らも受けたボスからの背徳行為を積極的に告発し続けた。ジャニーズ事務所には、1979年から5年ほど在籍した。
「ジャニーさんの能力は尊敬するけど、性加害の記憶は払拭しきれてません。僕が入所したころは、全員合わせても30人ほどでこじんまりしていたから、まさにファミリーだったし、誰がどんな被害に遭ったかも筒抜けでした。だけど、顔や名前を公表して証言する元メンバーはまだ少数派。連帯する機運があるなら、ぜひ参加して役割をはたしたい」
吉岡廉氏は、関西ジャニーズJr.の元メンバーで、現在、大阪でホストクラブの店長を務める。2012年に入所し、2019年に退所した吉岡氏自身はジャニー氏の性加害に遭っておらず、「有名になれるなら受け入れた」と、BBCの番組で発言している。
「ただ、自身が加害者になったメンバーはいました。現に僕も、デビューした年下の同期から性加害を受けたんです。食事中、いきなりトイレに連れ込まれ、自慰行為を見せつけられました」
後に、このメンバーからのセクハラ被害についての相談をいくつも受けたという。
「彼がそうした性癖を持ち、そんなことをしても許されると思ってしまったのは、ジャニーさんから幼いときに被害を受けたからかも。同じ過ちを繰り返さないために、やはり被害者同士の繋がりが必要ではないでしょうか」
平本氏の4歳下で、退所後に同じバンドで活動したのがハヤシ氏だ。BBCの番組にも登場し、回想中に大粒の涙をこぼした。ハヤシ氏も、入所後間もなく合宿所に呼ばれた。「ほとんどの仲間が性被害に遭っただろう」と語る。
被害者の会結成に向け、ハヤシ氏は本音を漏らした。
「もっとほかのみんなが後に続いてくれると思っていましたが、そうなっていない。その受け皿を作れるなら、僕も参加したいと思います」
ジャニーズ事務所は5月26日、ジャニー氏の性加害問題に関し、「被害者の相談窓口設置」などを発表。いかに被害者を救済し、組織を改革できるか注目だ。
取材&文・鈴木隆祐
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