「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
世の中の、犬好きと犬嫌いの割合は、どのくらいだと思いますか? これを知っておくことは、犬を育てるうえで非常に役に立つのだそう。犬好きな人と嫌いな人の見極め方も教えます(編集部)。
「226」
前回に引き続き、数字で始まる当コラム。
昭和11年に起きたあの有名な226(ニーニーロク)事件とは無関係。
コレ、犬に関係する数字なのです。
何言ってんの? どういうこと? って、まぁ続きをお読みください。
さて、他人に慣れていない犬は、番犬となります。
番犬を望むなら別ですがそうでないのなら、来客にストレスを感じない、来客にかわいがられたい……そうした犬に育てたいのなら、他人に慣らす社会化は欠かせません。
また、番犬云々は別に、旅行にもお出かけにも連れて行き、楽しい時間を共有したいとお考えなら、これまた他人に慣らす社会化は欠かせません。
人間社会は人間だらけです。当然出かけた先には他人がいます。他人に慣れていないということは、飼い主は楽しめても、犬は旅行もお出かけも楽しめないことを意味します。
来訪者には必ず、外でも頼める相手には
重要なのは、人間社会のことやものへの慣らしに適した3〜4ヵ月齢までの社会化期。この時期、家に来る人はすべて、外では頼める人に極力頼んで、犬にフードを与えてもらう。
いいことが起きる状況を、犬のみならず動物は受け入れる。好きになる。
逆に嫌なことが起きた状況を避けるようになる、苦手になる。
友人だろうと、宅配便の配達員だろうと、家に来る人は、というよりも、あえていろんな人を家に来てもらってフードを与えてもらう。
外では、頼めそうな相手には頼んで、フードをあげてもらう。
ここで問題は、頼めそうな相手とは、どんな相手かということ。
「人に対する慣らしをしているので、フードを与えてくれますか」
そう相手に頼むのですが、断られるかもしれない。
断られると心が折れることもある。
喜んで受け入れるかどうかは、相手が犬好きかどうかということ。
犬好きを見極められれば、断られるリスクはなくなるわけです
226の意味するところ
ちゃんとした統計に基づくわけではありません、あくまでも私の経験に基づく印象からの話です。
犬連れでいると、犬を見て一瞬にして顔をほころばせる人たちがいる。その人たち間違いのなく犬好き。どのくらいいるかというと、割合でいうと全体の2割。フードを与えてと頼めば、待ってましたとばかりに頼みを聞いてくれる。
逆にあからさまに眉をひそめる人。近づくなよ、というオーラが出ている人。いうまでもなく、こういう人たちは犬嫌い。2割程度いる。
残りの6割はというと、嫌いではないがよっぽど暇でない限り、断られる可能性大。
もうお分かりですね。226とは2対2対6、犬好き、犬嫌い、それ以外の人たちの比率です。
で、頼む相手は犬好きの2割の人たち。6割の人たちは、頼んでも断られる、こちらの心が折れる、そういった可能性があるのであえて頼まない、ということです。
社会化期限定で
いろんな人から与えてもらう中で、ご自身の犬が人に対する警戒心がない、あるいは少しあったがなくなった、というのであれば、社会化期が終えたあとも続ける必要ありません。
というよりも、続けない方がいい。
家庭犬として将来望ましい姿は、他人がそばにいても無視ができ、飼い主に自発的なアイコンタクトを向けられることです。
社会化期の人慣らしが十分にできていれば、それ以上の人慣らしは必要なく、それ以上継続していると他人に過剰に興奮するようにしてしまうリスクが大きくなる。
社会化期の人慣らしが十分にできていれば、それ以上フードを与えてもらうことはやめ、以降は他人を無視するトレーニングを積み重ねる。これがイメージしている犬に育て上げる秘訣です。
もちろん、社会化期が終焉を迎えても、他人に対する慣れが十分でない(警戒を示す)場合は、フードを与えてもらうなどの人慣らしは継続すべきです。
最後に、フードを与えてもらう際の注意点を述べたいところなのですが、またまた大人の事情で(文字数の関係で)その話は繰り越すということで……。
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
西川文二氏 プロフィール
公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。