26年ぶりのセ・リーグ制覇、そして日本一を目指す横浜DeNAが1カ月近くに及ぶ春季キャンプを終えた。エース今永が海を渡り、底上げが不可欠の先発陣では、高卒3年目の小園や深沢が登板を重ね、新加入の森唯や中川颯らも好アピールした。
野手陣では、ドラフト1位新人、度会(ENEOS)や同4位の石上(東洋大)らフレッシュな面々が存在感を示した。またチームとして長年課題としている走塁面で意識改革を徹底。チームがスローガンに掲げる「横浜進化」に向け、野手陣の取り組みやレギュラー争いの現況、首脳陣の思いに迫った。
24日、日本ハムとのオープン戦。1点を追う九回無死一塁、代走で起用された一塁走者の西巻は、次打者松尾の初球で迷いなく足を動かした。
二盗に成功し、悪送球の間に三塁に到達。松尾は三振に倒れるも、1死三塁から勝又の適時二塁打で同点に追い付いた。勝又は「外野フライを上げれば同点。それしか頭になかった」。好走が打席での余裕を生み、得点に結実した一幕だ。
牧、宮崎とタイトルホルダーを出しながらも、得点がリーグ4位の520、盗塁は最少の33で3位に終わった昨季。「勝ちにつながる走塁、得点につながる走塁」(石井チーフ打撃兼走塁兼一塁ベースコーチ)を掲げ、今キャンプでは意識改革が徹底された。
■盗塁王育てたアナリスト招聘
球団は楽天でパ・リーグ盗塁王、小深田を育てた佐竹学氏をアナリストとして招聘(しょうへい)。選手たちは、走者一、二塁から打球方向をイメージして走るベースランニングをはじめ、フリー打撃中でも打撃投手が投じた球がワンバウンドするとほぼ同時にスタートを切った。走路やリード幅の目安に白線を引くなど、実戦的な走塁練習を繰り返した。
ここまで対外8試合で盗塁を17回試みて成功は12。走者一塁から単打で三塁を狙う姿勢にも変化が見える。西巻と共にチームトップの3盗塁の林は「貪欲に次の塁を狙えるようになった。盗塁も自信を持ってスタートを切れている」と実感を込める。石井コーチは言う。「継続することもそうだが、僕らも言い続ける」
■1、2番の出塁率が鍵
昨シーズン、打順別の出塁率でいずれもリーグ最下位だった1、2番打者の輪郭も徐々に見えてきた。靍岡オフェンスチーフコーチはリードオフマンの理想像に「極論を言えばOPS(出塁率と長打率を足した打者の能力を表す指標)が高い選手を置きたい。出塁が鍵」と話す。
紅白戦を含む実戦9試合のうち5試合で1番に起用されたドラフト1位ルーキーの度会(ENEOS)は、前評判通りの巧みなバットコントロールで打率3割8分1厘をマーク。長打力もある背番号4が有力候補なのは間違いない。
■足を絡めた新たな攻撃スタイルへ
レギュラー争いが最も激しい遊撃は、経験豊富な京田に若手の林、同4位の石上(東洋大)が挑む構図となった。当初動きが硬かった石上は、対外試合で本職ではない二塁も守った。「細かなステップを身に付けてほしかった」(田中内野守備兼三塁ベースコーチ)との意図的な起用で、基本的な足の運び方を体に覚え込ませた。打撃でも林と競うように快打を連発しており、開幕までポジティブな悩みとなりそうだ。
25日のキャンプ最終日、三浦監督は「取り組んできた足を絡めた攻撃もできている」と手応えを口にした。オープン戦は残り17試合。準備と積極性を維持できれば、新たな攻撃スタイルは強力な武器へと進化する。
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