横浜DeNAはセ・リーグ3位で2年連続のクライマックスシリーズ(CS)出場を決めた。今季本紙でチームの戦いを評論してきた球団OBの石川雄洋、須田幸太両氏が、シーズンを振り返りつつ、CSファーストステージ(広島戦)突破へのキーマンや展望を語った。
石川雄洋の目:ミスなくし、打ち勝て
正直、ちょっともったいないと感じることも多い1年だった。レギュラーシーズン最終戦の巨人戦(4日)もそうだ。ロースコアで試合が進んだが、バントや走塁面という細かい差で負けてしまった。
1点ビハインドで迎えた九回。安打とエラーで無死一、二塁のチャンスをつくったが、林の送りバントも楠本の走塁も中途半端になってしまった。その前の柴田のバントも決して良いとは言えないだろう。試合序盤のバントと、後半でのバントはプレッシャーのかかり方が違うからこそ、ランナーとバッターのお互いの助け合いが必要になってくる。DeNAとしては毎年の課題だが、短期決戦は一つのミスで流れが変わってしまう。
日本Sに行けるメンバー
短期決戦では、かなり独特な雰囲気があり、途中から出場する選手の使い方がかなり重要になってくる。ある程度、シーズンを戦ってきたメンバーを固定して使っていく方向性でいくのではないだろうか。勝負所でのベテランたちの活躍にも期待したい。
広島は、先発も救援陣もいい。床田や森下を打ちあぐねているが、向こうも東(広島戦4勝0敗、防御率1・84)と今永(マツダスタジアムで1勝0敗、防御率2・00)を打てていない。では、お互いどうやって1点を取るか。広島はノーヒットでも足や小技で点を取る野球ができる。DeNAはさっき挙げた巨人戦のようなミスをなくし、無駄な点を与えないことが大切だ。その上で打ち勝ってほしい。
主将の佐野がけがで離脱した。佐野に代わる選手はいないが、持ち味のチーム力で補って欲しい。センターはクワ(桑原)、レフト関根、ライトは左投手、右投手で大田、楠本の使い分けだろう。広いマツダスタジアムでの短期決戦なので、守備のうまいクワは外せないでしょう。
打線では牧、宮崎、ソトの核となる選手がいる。いかにこの前の上位打線がランナーをためてまわせるかだろう。何でもいい。チームが勝つためにどんな事をしてでも塁に出て欲しい。そういう意味でキーマンはやはり上位打線を打つクワ、関根、大田あたりだろう。
まずは先制点だ。敵地で戦うDeNAは先攻。先制できればプレッシャーをかけられるし、それ以上点を与えたくない相手投手はストライクゾーンの四隅を狙ってくるので、こっちはボール球を振らなければランナーがたまっていく。広島に2連勝して、ファイナルステージで阪神を倒す。2017年以来の日本シリーズに行けるメンバーだし、日本一になれることを信じている。
いしかわ・たけひろ
野球評論家。横浜高校から2005年に横浜(現横浜DeNA)入りし、俊足巧打の内野手として通算16年間で1003安打、118盗塁。横浜DeNAの初代主将も務めた。引退後はアメリカンフットボール選手としても活躍した。静岡県出身。37歳。
須田幸太の目:救援陣、フルで集中を
レギュラーシーズンとCSは全くの別物。CSは先発投手のでき次第だが、レギュラーシーズンよりも早め早めの継投になる可能性が高い。そのため、短期決戦に強い火消し役が1人は絶対に必要。ことしで言うと上茶谷だ。
上茶谷はハートが強い。どんなピンチでも物おじしないのが頼もしい。真っすぐもいいが、フォークボールを決め球としてしっかり投げ切れている。万が一、先発がバタバタして五、六回にピンチを迎えた時、そこを抑えられるかどうかで大きく展開が変わってくる。
今回もマシンガン継投に
先発が三回までに2点取られれば、どんどんつぎ込んでいくでしょう。2016年のCSファイナルステージ第3戦の広島戦では、3点リードの八回に3人が登板した。三上、田中が左打者に投げて、右打者に戻って僕。今回もマシンガン継投になるのではないか。
中継ぎの場合、レギュラーシーズンだと一回から九回まで集中するってことは、なかなかない。各自に役割があり、気持ちを入れるところが決まっているからだ。だが、CSはフルで集中しておく必要がある。レギュラーシーズンでそれをやると1カ月でメンタルがバテてしまうが、CSは短期決戦。いつ出番が来てもいいように、一度も気を緩ませてはいけない。
一番気を付けたいのはフォアボール。レギュラーシーズンにも言えることだが、出しても1試合で1個。3個も4個も出していたら大量失点しかねない。それと一発。ホームランは試合の流れが変わる。
ウェンデルケン、森原は、シーズンの結果は文句なし。2人は八、九回のどっちでもいける。伊勢も復調し、CSは心配なさそうだ。右腸腰筋遠位部損傷から復帰を目指すバウアーが中4日で先発できれば、チームにとって大きなアドバンテージになる。状態によっては短いイニングの登板もありそうだ。
あとは不振で9月に出場選手登録を外れた山崎に戻ってきて欲しい。経験という点でも、彼がいるのといないのとではブルペンの安心感が違う。しっかり勝ち上がって、ファイナルステージで阪神と戦う姿を見たい。
すだ・こうた
JFE東日本から2011年にドラフト1位で横浜(現横浜DeNA)入団。通算166試合で16勝19敗1セーブ、防御率4・81。19年からJFE東日本に復帰し、同年の都市対抗大会で初優勝。平日は会社員、週末は横浜商大投手コーチを務める。茨城県出身。36歳。