いったい、どれだけのシュートパターンを持っているのだろうか。
スルーパスを引き出して決めたかと思えば、クロスに頭を、グラウンダーのボールに足を合わせてネットを揺らした。
こぼれ球をボレーで叩き込んだゴールもあれば、巧みなトラップからDFをかわして蹴り込んだゴールもある。
極め付きが6月13日のYBCルヴァンカップ・プレーオフ第2戦、ヴィッセル神戸戦で見せたループシュートだ。
宇賀神友弥のロングフィードに反応したキャスパー ユンカーは相手DFを追い抜くと、左足でボールを掬い上げる。GKの頭上を越す、美しい軌道のゴールだった。
「相手がかなり高いラインを保っていたので、それを利用するような形のゴールでした。宇賀神選手からスペースへいいボールが来ました。大事な時間帯でゴールを取ることができて嬉しいです」
これで公式戦9試合出場8得点――。
その活躍が評価され、5月度の明治安田生命JリーグKONAMI月間MVPに輝いたことが、6月11日に発表された。
5月のリーグ戦で決めた5ゴールのうち、最も印象に残っているのは、5月16日のガンバ大阪戦のヘディングでのゴールだ。身長が186cmあるユンカーだが、実はヘディングでのゴールは少ないという。
「足でのゴールが多い自分にとって、また違った次元のプレーを見せることができました。(ノルウェーリーグで得点王に輝いた)昨シーズンも、ヘディングからのゴールは少なかったですね。
僕が好きなのは、グラウンダーのクロスに合わせるシュート。DFにとって守りにくく、ゴールになりやすい形だと思います。ただ、確かに僕は背が高いので、浦和ではヘディングシュートももっと磨いていきたいと思います」
月間MVPにトロフィーとともに贈られる賞金30万円は、貯金するのだという。倹約家というわけではない。そこには確たる理由があった。
「そのお金でチームメイト全員と食事に行きたいんですけど、コロナ禍で難しいですから。そのときのためにとっておきたいと思います」
ストライカーだが決してエゴイスティックではない。チームメイト思いの人柄が、レッズに早く馴染めた要因だろう。ピッチ内でもチームプレーヤーの一面をはっきりと見せた。
件のループシュートを決める前のことだ。16分にGKと1対1の場面を迎えたが、小泉佳穂がサポートに来ているのを確認すると、迷わずパスを出して小泉に決めさせた。
「99%パスを出したほうがいいという状況でした。そのほうが簡単にゴールを取れるからです。それはFIFAのゲームをプレーしていても同じです。佳穂選手は目立った素晴らしい活躍を見せていましたので、2人でこのようないい場面を作れたことを喜ばしく思います」
日本語の習得にも余念がなく、最近覚えた日本語は「寒い」だという。
「今は暑くてエアコンを使わないといけない状況なので、『寒い』を覚えました。『暑い』は何週間か前に覚えています」
そう言っておちゃめな一面を覗かせる。ストライカーとして頼もしいだけではく、なんともラブリーなキャスパーにくびったけだ。
(取材/文・飯尾篤史)
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