思わず、唸った。
何がというと、キャスパー ユンカーの働きに、である。
ストライカーが結果を残せば、チームは勝利する——J1第14節のガンバ大阪戦は、その言葉を証明したゲームだった。
「理想を言うと、やはり我々としてはボールを握って試合を支配して進めていくことができればよかった」
試合後にリカルド ロドリゲス監督が語ったように、G大阪戦は相手にボールを保持される時間帯もあった。
それでも、いい守備はいい攻撃につながる。
これまたサッカーにおける定石を体現するかのように、浦和レッズの選手たちは苦しい状況に屈することなく、好機を見出した。
「ストライカーの仕事というのは、やはりボックス内。ペナルティーエリアの中で仕事をすることだと思います」
ユンカー本人がそう語るように、感嘆の声を上げたのは、チームの活路を切り開く、ゴール前での動きだった。
まずは16分、左サイドに入った武藤雄樹が縦パスを受けると、ユンカーに合わせてゴール前にクロスを入れた。
秀逸だったのは、このときの一連の動作。武藤のクロスに競り合うも、わずかに届かなかったユンカーは、ボールが右サイドにこぼれたと分かると、素早くポジションを取り直す。そして、再びゴール前に走り込むと、田中達也の浮き球のパスに合わせて頭で叩き込んだ。
上半身だけを使ってヘディングしたような力強さもさることながら、DFから逃げるように踏んだバックステップに思わず唸った。
2-0で迎えた40分に決めた追加点も、ストライカーとしての真骨頂が随所に散りばめられていた。
田中がスピードを活かしたドリブルで右サイドを突破すると、小泉佳穂がニアに走り込む。併走するユンカーは、それを見てゴール中央にポジションを取った。そして、田中のラストパスに合わせて左足ダイレクトでゴールネットを揺らしたのである。
このとき、ユンカーはマークに来るDFに一度、身体をぶつけるとブロック。DFとの駆け引きもさることながら、ゴール前での絶妙なポジショニングと工夫に、やはり唸った。
勝負どころとなるゴール前で最大限にパワーを発揮する。
まさにストライカーの仕事と言えるだろう。20分に田中が決めた得点シーンでは、大きくサイドチェンジをするなど、攻撃の起点になり、3得点すべてに絡む仕事を見せた。
「攻撃も守備も大事。みんなでベストを尽くしましたが、少しチームとして苦しんだ時間帯もありました。そのなかでも全員で戦えた。特に後半はチームのために全員が戦っている姿があったと思います。途中出場した選手も同じような姿勢で戦っていたので、チームとしての一体感があったこともよかったと思います」
チームのために——そうした思いがあるがゆえに、自分の勝負どころとなるゴール前では、より感覚を研ぎ澄まし、より一瞬に懸ける動きがあるのだろう。
公式戦3試合で4得点。浦和レッズが連勝を重ねている過程には、“唸らされる”ほどの責務を果たしているストライカーの活躍がある。
(取材/文・原田大輔)