Vol.3「ラームショック」
今回もアメリカからリポートをお届けします。先週はザ・メモリアルトーナメントの会場にいましたが、第3ラウンドを終えてゴルフ界が騒然としました。2位に6打差をつけて大会連覇に王手をかけた、世界ランキング3位のジョン・ラームがホールアウト直後に棄権となりました。原因は新型コロナウィルスへの感染です。
前回もお伝えしましたが、アメリカは予約をすれば誰でも無料でワクチンを接種できます。選手やキャディ、ツアー関係者のワクチン接種状況を聞くと、8~9割は完了しているとのことです。しかし、ラームは自分の子供のことなどを考慮して、ワクチンを打って体調が悪くならないように、まだ接種していませんでした。
そして、不運なことに大会前週の日曜日に、知人が陽性となりラームは濃厚接触者と判定されました。無症状だったこともあり、大会期間中、毎日PCR検査を受けて陰性だと試合に出続けられるというルールのもと、試合に臨んでいました。毎日検査をするという徹底ぶりがすごいですよね。
ラームのPCR検査の結果は連日、陰性だったのですが、第3ラウンドが行われた土曜日の検査結果が、陽性反応を示して棄権せざるを得なくなりました。予選落ちや下位に沈んでいたら気持ちの切り替えもしやすいと思いますが、後続に6打差で単独トップに立っていたり、第2ラウンドにマークしたホールインワンなど、すべて消えてしまうという本当につらい出来事でした。
ワクチンを接種していればコロナ感染者と一緒にいた事実があっても、PGA TOURでは濃厚接触者扱いにはならないそうです。もしラームがワクチンを打っていたらと考えてしまいますが、何が正解で不正解なのか分かりませんからね。
ただ、この件に関して「人生であり得ることのひとつ。挫折に対してどう対応するかが人間性を問われる」というラームのコメントを見たときに、ハッとさせられました。ラームは本当にショックだったと思いますが、自分ではどうしようもなかったことでもあります。どんな時でも受け入れて、ポジティブに生きていくことが改めて大事だなと、考えさせられました。
ラームのチームスタッフもみんな普段から気をつけていたと思いますし、それでも感染してしまうのが新型コロナウィルスです。今回はギャラリーもたくさん入っていました。節度のあるギャラリーは、選手の好プレーに拍手だけでしたが、盛り上がるギャラリーは、大声で叫んだりしていましたから、すごく怖いなとも感じました。
何らかのリスクはあるのでしょうが、ワクチンを接種すれば、新型コロナウィルスに感染しにくくなりますし、重症化しないともいわれます。これを踏まえて、どんどん政策を動かしてほしいです。「Withコロナ」といわれますが、PGA TOURのようなしっかりとした検査体制、仕組みを作ることで成し遂げられると思いました。
Vol.2「マスターズ以上の美しさ」