(撮影:御堂義乘)
「今の状況は戦時下とよく似ています」……夏に行ったインタビューでも、そう語っていた美輪明宏さん(85)。第3波が猛威を振るい、相変わらず収束が見えないコロナ禍のなか迎える新年を、私たちはどう生きればいいのだろう? 美輪さんからの新しい1年に歩み出す希望の提言ーー。
’20年は、世界中が新型コロナウイルスに翻弄され続ける1年となりました。
ここにきて国内では東京、大阪、北海道、兵庫など各地で、一日での新規感染者数が過去最多を記録するなど、第3波の猛威は、すでに第1波、第2波を超える危険な状態だと感じております。
それは第2波以降、政府が規制を緩め、街には多くの人があふれるようになったから。
おそらく、長期にわたるコロナ禍の生活に慣れてしまい、“自分が死ぬことはない”と考える人が増えてきたからでしょう。
とくに若い世代の人たちは、高齢者の方々と比べて、重症化するリスク、死亡率も低い。“自分たちは大丈夫”だと、楽観的な人たちの多いことが、感染拡大に歯止めがかからない要因の1つになっていると思います。
私はコロナの収束が見えない今の状況は、戦時下と同じだと思っています。この状況ではとても怖くて出歩く気にはなれません。きっと戦争体験のある人なら、そう感じているはずです。
戦時中は、爆弾よけの防空壕を一軒一軒が造ったり、山の陰に横穴式に掘ったりして、いざというときに備えていました。都会の場合はそういう場所がないから、家の床を剥がして防空壕を床下に造っていたのです。
そして敵機来襲のサイレンが鳴ると、みんな防空壕に逃げ込んで、外には一切出ない。警戒警報の解除を知らせるサイレンが鳴るまでは、じっと息を殺して、その時を待つ。私たちはそういう体験をしてきたのです。
敵がいつ襲ってくるかわからない……。
今は、そのときと同じようなことが起きている、そう実感しております。
「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載