「マスク着用により、肌が荒れる人が増えています。肌の大敵は主に日焼けと摩擦と乾燥ですが、マスクを長時間着用すると、肌に摩擦と乾燥をもたらしてしまいます」
そう教えてくれたのは、内科・皮膚科医の友利新先生。コロナ禍により、マスク着用が重要視され、マスクをしていない人を非難する“マスク警察”まで現れる昨今。しかし、長時間のマスクが原因で、肌に赤みやかゆみ、吹き出物などができてしまうこともーー。
「まず、マスクによる摩擦についてですが、肌が擦れて炎症が起こると、肌のバリア機能が低下します。本来なら外的刺激から肌を守り、肌の水分をキープしてくれる働きですが、この機能が低下すると、肌が乾燥し、外的刺激により吹き出物ができやすくなってしまうのです」(友利先生・以下同)
しかも、呼気や汗により、マスク内は水分で潤っていると思いがちだが、実は大間違い。マスクの中の肌は長時間お風呂に入って、シワシワになってしまったのと同じ状態だというのだ。
「肌がぬれてふやけた状態が続くと、角質の間を埋めている細胞間脂質が溶け出してしまいます。すると、角質の間に隙間ができて、肌のバリア機能が低下してしまうのです。特に、日本人は肌の内部に水分を保持する力が弱いうえに、皮脂分泌は盛んな体質の人が多い。肌の保湿ができないと、肌は乾燥してしまいます。そのうえ、皮脂がたくさん出るので、乾燥しているのに吹き出物ができやすいのです」
マスクによる摩擦や蒸れにより、肌のバリア機能が低下し、乾燥して肌が荒れる。その状態でもマスクを着用し続けるため、さらに肌荒れが悪化し、肌トラブルが多発しているというのだ。
「いくら肌に優しいとされているシルクなどの天然素材の布マスクをしていても、マスクを着用し続けること自体が肌にとってのストレスです。衛生面や感染予防という面では不織布の使い捨てマスクのほうが安心です」
ほかにもマスクの弊害が。熱中症のリスクも高まってしまうのだ。
「医学的な論文や統計などのデータはまだありませんが、確実に熱中症のリスクは高まるでしょう。マスク着用により呼吸が浅くなり、呼吸数が増加します。体温自体も上昇。マスク内が蒸れているので、喉の渇きもわかりづらくなります。特に高齢者は注意が必要です」
肌荒れを改善させ、熱中症のリスクを低減させるためには、マスクの着用時間を短縮するしかない。新型コロナウイルスに感染するのは飛沫と接触だという基本を理解して、マスクを外すタイミングを見極めることが大切だ。
「マスクの役割は大きく3つあります。(1)自分の飛沫を飛ばさない、(2)他人からの大きな飛沫を防ぐ、(3)口や鼻を直接触らなくなるため、手に付着したウイルスを粘膜接触から防ぐ、の3つです。ですから、周囲に人がいない場合や対面の会話がないのなら、マスクを着用する必要がないのです」
TPOと安全状況を確認して、マスクのON/OFFを上手にできるようになろう!
「女性自身」2020年9月29日・10月6日合併号 掲載