「田中邦衛さんが亡くなられた後、『北の国から』のロケセットに半月ほど献花台を設置しました。全国から約1万人が訪れ、多くの方が涙を流していらっしゃいました。純役の吉岡秀隆さんや中畑和夫(地井武男さん)の妻を演じた清水まゆみさんの姿もありました」(ふらの観光協会・石川事務局長)
北海道・富良野の大自然を舞台に、人間の機微を描き出した『北の国から』(フジテレビ系)が10月9日、放送開始40周年を迎える。視聴率38.4%を記録した最終作の『2002遺言』から19年がたち、今年3月には主演の田中邦衛さんが88年の生涯に幕を閉じた。それでも、いまだに根強いファンが全国に存在している。
「ロケ地など『北の国から』の関連施設には最盛期150万人、昨年はコロナ禍なのに30万人も訪れてくださいました」(前出・石川事務局長)
1981年、連続ドラマの1話は妻の令子(いしだあゆみ)に不倫された夫の黒板五郎(田中さん)が子供の純(吉岡秀隆)と螢(中嶋朋子)を連れ、東京から富良野に移住する場面から始まった。以来、21年にわたってスペシャル版を含めて断続的に放送。同じ役者が演じ続けたことで、ドラマはリアリティを生んだ。熱狂的なファンのますだおかだの増田英彦(51)は、その魅力をこう話す。
「子供のころは純に感情移入をしていましたが、娘を授かった今は五郎の気持ちになって見てしまう。『’98時代』で、螢が結婚前夜に『お父さんの横に行っていい?』と布団を横に並べて一緒に寝る。最近はあのシーンがグッときます。同じドラマなのに、その時々の自分の立場や状況でいろいろな感じ方をできる。何度見ても飽きません」
■「螢会」ではなく「蛍会」の理由は…
増田は今もなお、グループLINEで『北の国から』について頻繁にやりとりをしている。そのメンバーには螢役の中嶋朋子(50)も入っているという。
「2年前にナイツの塙宣之君が呼び掛け、蛍原徹さん、中嶋さんとで食事会をしました。サプライズで中嶋さんが息子で俳優の西村成忠さんを連れてきてくださって、さらにテンションが上がりましたね」
現在23歳の西村は、幼いときに母と共演。螢の息子・快役で『2002遺言』に出演しているのだ。
「素直な好青年だったので、ホッとしました。あまりにも『北の国から』とかけ離れたイメージだったら、ショックじゃないですか(笑)。会が終わった後、塙君がその5人でグループLINEを作ってくれました。塙君は数年前に『北の国から』のファンになったばかりなので、『螢』という役名を『蛍』と勘違いしたみたいで、名前は『蛍会』になっています。LINEでも螢について話しているのに、蛍原さんが反応してかみ合わないときもあります(笑)」
「蛍会」の中心メンバーである蛍原は大阪府門真市出身なのに、『北の国から』好きが高じて、ふらの観光大使を務めている。自暴自棄になっていた20歳のころ、初めて富良野を訪れ、ロケ地巡りや市民との触れ合いを通じて気分一新。大阪に帰ると、事態が好転した。以降、人生で悲哀や歓喜を感じたときに富良野を訪問。100回以上も足を踏み入れているという。前出の石川事務局長が就任の経緯を語る。
「その話を知った私が観光大使を依頼したら、二つ返事で受けてくださいました。その後、富良野文化会館でのお笑いライブで就任の記念式を行いました。このときは、開館以来、初めて立ち見客が出た伝説のイベントになりました。富良野の魅力を発信し続けてくださる蛍原さんの力は、本当に大きいです」
増田も蛍原に負けず劣らずの熱烈なフリーク。『’95秘密』で使用された結婚式場を自らの挙式場に選んだほどで、ロケ地巡りをライフワークにしている。
「『ゴゴスマ』(TBS系)に出演しているとき、ある事件現場が映ったんですよ。そこは『’92巣立ち』で純とタマコ(裕木奈江)が初デートしたロケ地と同じ東中野の駅前だったんです。番組で言っても誰も共感してくれないと思い、放送後すぐに塙君にLINEで伝えました。『そんなのわかりませんよ!』と反応されましたけど(笑)」
■40周年トークショーの倍率はなんと4倍!
「蛍会」の食事会では、終始『北の国から』の話題で盛り上がったという。
「まるで純が父の五郎に接するように、息子さんが母の中嶋さんに敬語を使われていたんですよ。僕も蛍原さんも『純やん!』とテンションが上がりました。息子さんが『北の国から』を見たことないと言うので思わず『役者として見たほうがいいんちゃうか』と余計なアドバイスをしてしまいました(笑)」
ファンゆえに、出演者に会うと『北の国から』に対する思いを伝えたくなってしまう。
「あるとき、ガッツ石松さんにしつこく聞いていたら『富良野は寒いんだよ! 大変なんだ、あの撮影は!』と怒られてしまったことも。食事会のときも、僕や蛍原さんが熱く語りすぎてしまい、数日後、中嶋さんがLINEで『私も、北の国からもう1回見てみようかな』と書かれていました(笑)」
ロケ地の富良野では、今年6月から来年10月まで「思い出せ!五郎の生き方」をテーマに放送40周年記念事業を行っており、10月9日には脚本を手掛けた倉本聰(86)、音楽を担当したさだまさし(69)、中嶋、蛍原らで3時間にわたってトークショーが行われる。
「定員800人のところ、3千200通の応募をいただきました。当日はいろいろなサプライズがあると聞いています。記念事業の一環として、ロケ地を巡るバスツアーやスタンプラリーなども企画しています」(前出・石川事務局長)
増田も一観客としてトークショーに足を運ぶという。
「蛍原さんから『けえへんの?』とLINEが来たので、行かなあかんなと。『北の国から2021』を見に行く気分です。富良野の空気を存分に吸ってきたい。ファンは待つことも仕事。僕はまだ続編があると信じています」
今までも、田中邦衛さん亡きこれからも。『北の国から』は、それぞれの心の中で永遠に生き続けるーー。