「より安全安心な大会にするには海外の方と接触する大会関係者がワクチンを打って準備に取り組むことも、日本の組織委員会のおもてなしだ」
6月9日の記者会見で、こう発言したのは東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)。
NHKの報道によれば、日本の選手団や大会関係者には一般の枠とは別に、約2万人分の新型コロナウイルスワクチンがIOCから提供されているという。そんななか武藤敏郎事務総長(77)が8日、7万人を予定しているボランティアや国内メディアなどに向けて接種対象の拡大を検討していることを明かしたのだ。
冒頭の橋本会長の発言は、ワクチンの接種対象を拡大する意義について述べたものだった。
国内の五輪関係者を優先した接種は、海外の人々を迎え入れるための“おもてなし”。橋本会長の説明に、波紋が広がっている。
■大多数の国民は後回し
開幕まで、残すところ43日と迫ってきた東京五輪。国内の五輪関係者への接種拡大が検討される一方、大多数の国民には行き届いていない状況だ。五輪関係者向けのワクチンを用意するのはIOCだが、国内の接種状況を鑑みると公平さを欠くと指摘する声も。
「大阪の大規模ワクチン接種センターでは64歳以下の受付を開始すると報じられましたが、多くの地域では65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人に優先接種している状況です。五輪会場施設のある東京23区でも64歳以下の接種が計画されていますが、7月以降に開始される区がほとんどだといいます。厚労省によると接種してから免疫ができるのは、2回目の接種から7日程度経ったころ。五輪開催までに間に合わず、後回しにされていることに疑問を感じている人も多いようです」(全国紙記者)
13年9月、東京五輪招致の最終プレゼンテーションで滝川クリステル(43)が紹介した「おもてなし」。彼女のスピーチをきっかけに「おもてなし」は流行語となり、瞬く間に全世界に広がった。
当時のスピーチで、「東京は皆様をユニークにお迎えします。日本語ではそれを『おもてなし』という一語で表現できます」と滝川は紹介。
その意味を「見返りを求めないホスピタリティの精神、それは先祖代々受け継がれながら、日本の超現代的な文化にも深く根付いています」と説明し、「『おもてなし』という言葉は、なぜ日本人が互いに助け合い、お迎えするお客さまのことを大切にするかを示しています」と語っていた。
本来、感染防止が目的であるワクチン接種だが、五輪関係者に“おもてなし接種”することは果たしてホスピタリティの精神と呼べるのだろうか。橋本会長の「おもてなし」発言には、批判の声が相次いでいる。
《ドン引き。ワクチン接種はおもてなしをするためにするんじゃない、安全な社会を作るためにすることだ。ワクチン接種したからって感染しないわけじゃないし感染広げない訳でもないのに、何もかもがおかしい……》
《ボランティア、国内メディアまでもが優先接種されるのですか。私はまだいつ打てるのかわからないのですが。そこまで言うのならば、オリンピックまでに希望者全員に摂取してほしい》
《ワクチン接種が五輪のためと思っているらしい。この傲慢さは何だ? いい加減にして欲しい》