「今回、第3波が来たことは間違いないです。これから冬を迎えて感染者が諸外国のように爆発的に増えるのではと心配されていますが、私はそうはならないのではないかと思います」
こう語るのは元WHO専門委員でハーバード大学院卒の医学博士・左門新先生。新型コロナウイルスが日本でパンデミックを起こす可能性について疑念を示す左門先生だが、状況は日々悪化するばかりだ。
北海道を皮切りに、埼玉県、大阪府などで次々と過去最多の1日での新規感染者数を更新。そして11月14日には全国でも過去最多となる1,708人を記録する事態となった。
ある医療ジャーナリストは緊迫した表情で言う。
「日本医師会会長は11日に『第3波と考えていい』と発表し、政府への対策を求めました。特に感染拡大が深刻な北海道は観光客が激減し、“Go Toトラベルキャンペーンから除外すべき”といった議論も起きています」
世界の状況はもっと深刻だ。
「アメリカは11月に入ってからも1日当たりの感染者数が15万人と過去最多を更新し、死亡者数も連日1千人超え。ヨーロッパもいまだに収まる気配はなく、イギリスやフランスなどで次々とロックダウンが行われる事態となっています」(前出・医療ジャーナリスト)
しかし、本誌が取材を進めていくと左門先生をはじめ、医師たちからは“日本の第3波は深刻化しない”と予想する声が相次いだ。その“根拠”を紹介する。
【1】死亡者数が少ない
第2波とされる8月前後から今まで、感染者増に対して死亡者は10人前後で横ばいに推移している。感染者数が今より少ない第1波よりも死亡者は減っている状況でさえあるのだ。
免疫学を専門とする順天堂大学医学部の奥村康特任教授もこう指摘する。
「感染者が増えているとはいえ、日本は欧米と比較しても重症者数、死亡率そのものが低いのです。
新型コロナウイルスだけで肺がダメになったり、血栓で亡くなる方というのは全体の1割くらいでしょう。またPCR検査で陽性だと診断されたあとに何かしらの持病があって合併症で亡くなった方も、新型コロナで亡くなったことにされてしまうケースも多いのでは、と感じています」
【2】ウイルスの致死率が低い&弱毒化している
日本の死亡率が低い背景にはウイルスの持つ“パワー”が関係しているという。奥村教授は言う。
「中国・武漢から発生したウイルスは3種類といわれていますが、大きく分けると2種類になります。欧米などはL型、アジアはS型といわれ、その差はアミノ酸がひとつ違うだけ。しかし、不思議なことに致死率が違うのです。韓国や台湾、日本などのS型はそもそも毒性が弱いのです」
左門先生は国内で流行しているウイルスの毒性が今後弱まっていく可能性を指摘する。
「強毒なウイルスは徹底した隔離などの対策によって広まりにくく、結果的に弱毒なものが生存していくことになります」
【3】“集団免疫”獲得の可能性
集団の大多数がウイルスへの免疫を保持していると、免疫を持たない人への感染が及ばなくなるとされる集団免疫。奥村教授によると、日本ではそれに近いことが起こっている可能性があるという。
「ふだんからS型にさらされるような環境にいたことで、ある種の免疫がつきます。普通の風邪は従来のコロナウイルスから発症します。つまり、新型コロナウイルス流行中に、普通の風邪をひいた人が新型に対してある程度の免疫ができるのです。これはある意味、集団免疫を持っている状況ともいえるでしょう。
また数カ月前にはアメリカの権威ある医学誌が『ウイルスのタイプ次第ではあるが、日本人で重篤な人が増えることは少ない』と発表していました」
【4】日本人の国民性
経済活動を維持しながらも、欧米より少ない感染者数を維持できた背景には、“日本人の国民性”があるとにらむのは左門先生だ。
「国の対策が不十分でも感染者が少ないのは、国民一人ひとりがしっかりやるべきことを守っているからでしょう。マスクも屋外ではあまり必要ありませんが、“とにかくマスク”と言われたことをきちんと守ったことで、必要な場面でも徹底されたわけです」
4つの根拠を見ると、つい安心してしまいがちだが、対策をゆるめていいわけでは決してない。奥村教授は、経済との両立を説きながらも、こう忠告する。
「経済活動が活性化すれば、感染者は増えていきます。もちろん、ロックダウンなどは経済活動のためにもするべきではありません。ですが持病のある方や高齢者は、免疫機能も低いですから手放しで旅行に行くのではなく、注意は必要です」
左門先生は日々の徹底した心がけが肝要だと説く。
「手洗いは10分おきなど頻繁にはできません。なので、アルコール消毒スプレーを日ごろから持ち歩き、何かに触ったらすぐに指先に吹きかけるほうがいいのです。スプレーしたら15秒ほどこすって、アルコールを満遍なく広げてください。マスクと消毒、国民みんながこれを徹底すればワクチンに匹敵する効果があるはずです」
「女性自身」2020年12月1日・8日合併号 掲載