以前 Japaaanでも紹介した、石を愛し、石に愛された男「木内石亭(きのうちせきてい)」。
→石を愛し、石に愛された男!シーボルトにも影響を与えた江戸時代の奇石コレクター「木内石亭」の石愛がスゴい
その生涯をかけて石を研究した木内石亭や、戦国時代に茶器や建築において「織部好み」というブームを作った古田織部(ふるたおりべ) 、後に世界中の芸術家に多大な影響を与えた”広重ブルー”を印象づけた浮世絵師・歌川広重。
その探究心から生まれた成果は、彼らが亡き後も多くの人の力となっていますが、今回紹介する「貝殻断面図案」という図案集もまた、ひとりの男の探究心から生まれた賜物です。
その男の名は平瀬與一郎(ひらせよいちろう)。明治時代〜大正時代にかけて貝類学にドハマリし、後に貝類の断面の文様美に魅了され「貝殻断面図案」なるニッチすぎる図案を刊行した人物です。
安政6年(1859年)に現在の兵庫県に生まれた彼は、まさに貝に人生を捧げたと行っても過言ではない一生を送った人物。明治〜大正時代に貝類についての研究を精力的に行いますが、その研究は、どこの研究機関にも属ず独自に行われていました。
そのため研究ににかかる費用は私財を投じ、現在の日本の貝類学の礎とも言える、さまざまな研究成果を発表しました。そんな平瀬與一郎が、貝の美しさに惚れ込み発表したのが、「貝殻断面図案」です。
「貝殻断面図案」は、貝独特のフォルムや文様の美しさに着目し、貝の姿のみで制作された図案集で、平瀬與一郎のライフワークとも言える貝類の研究においてアート的側面の成果とも言える作品となっています。
いわば自然科学とアートが融合した「貝殻断面図案」は、貝の独特な曲線美を活かしたとってもユニークな作品集となっています。テキスタイルパターン的な作品やロゴデザインのような作品まで、全て貝類の形がモチーフとなっており、平瀬與一郎の貝に対する愛がダダ漏れなのです。
貝類に関するさまざまな研究成果の発表、そして貝愛が溢れる貝殻断面図案の発表は現代の貝類学の研究に引き継がれ、 平瀬という名をとった、hirasei や hiraseanaと名付けられている貝類も多いそうです。