朝日新聞 有料サロン"中退予防ネット"設立の裏で"大学退学者増加"のご都合記事連発!立命大講師が告発
「コロナ禍で休退学 5千人超」
「見出しを見て、コロナ禍で休退学者が増加しているのだと思いました。しかし、記事を読み進めると、昨年の同時期と比べて、全体の中退者は6833人、休学者は6865人も減っているとあるのです。意味不明でした」
「この記事を機に、私は同紙の『コロナ禍での大学生の休退学』報道に注目しました。そして、一連の報道のなかに、ある “異様さ” を見つけたのです」(蒲生講師、以下同)
「朝日新聞」は、コロナ禍での大学生の休退学を、いち早く取り上げている。2020年4月23日付の「『収入減で退学検討』大学・専門学校生の13人に1人」という記事がそれだ。
「冒頭に『秋以降に経済的理由による退学・休学が増え、経営の悪化を予想する大学も多い』とあり、大学側も休退学者の増加を特に懸念しているように読めるものでした」
「大学が現在『影響がある』と挙げたものは、上位から順に『授業の実施方法』『学生募集』『授業の開始・実施時期や回数』と続き、『経済的理由による退学・休学の増加』は、14項目中11位でした。大学は回答時点で、休退学の増加をほとんど重視していなかったのです」
「そもそも、現状と将来の “予想” を比較することが不適切ですし、夏季休暇明けや、後期の授業料支払い前に退学者が増えるのは常識です。どうしてこんな扇情的な記事を書くのか。『朝日新聞』はどうしたんだ、と思いました」
「8割の大学が “経営が困難になる” ととれる内容でしたが、よく読むと大学全体の将来予想で、自大学についての回答ではないのです。経済が不透明で、少子化の時代ですから、そうした予測が出るのは当たり前です。大本の資料を読むと、自大学の経営を心配している大学は1〜2割。こんな報道をする意図がわかりませんでした」
「読売新聞」は真逆の論調。中退理由の1位は「経済的困窮」。対2019年比で1%増だった
「4月に『朝日中退予防ネットワーク』(以下、中退予防ネット)がスタートしたのです」
「中退予防ネット」のHP上の案内によると、オンライン上での議論や、専門委員による講演の聴講、別途有料での個別相談ができるという。運営は、朝日新聞社の「A-portオンラインサロン」だ。
「『中退予防ネット』の月会費は、大学・高校などの法人会員で1万2100円、大学教員などの場合は3300円、高校教員などの場合は1100円です。私の場合、年額で3万9600円にもなります。一般的な学会の年会費が1万円前後ですから、かなり高額だと感じます」
「中退予防ネット」設立の経緯や、高額な会費に疑問を持った蒲生講師は、朝日新聞社に問い合わせた。
「企業の社会的責任(CSR)として、望まずに大学を中退する学生を減らすことに取り組むなら意義深いことです。しかし、朝日新聞社は『CSRではなく、事業化を目指している』と躊躇なく明言しました。
「中退予防ネット」の副委員長を務めるのは、大正大学地域構想研究所の特命教授・山本繁氏だ。
「朝日新聞」にはNPO時代にも登場しているが、コロナ禍以降は登場頻度が上昇。コメントを4回寄せている。
「『コロナ影響 休退学5800人』という見出しですが、中身は『全体の休退学者は約9万4000人と前年より12%減っている』という内容です。ここで山本氏は、『中退者が前年より減ったからといって、問題が起きていないわけではない。問題発生から退学届を出すまでに、平均11カ月のタイムラグがある』という説を解説しています」
蒲生諒太講師。今回の「朝日新聞」の報道について、70ページ超の報告書をウェブ上に公開している
「私は、その出典とされる『中退白書』を取り寄せ、隅から隅まで読みました。しかし、どこにも『11カ月』という文字がないのです」
「山本氏が根拠不明な “11カ月遅延説” を持ち出した意図は不明です。休退学者が増加しなかったことを正当化するためか、水面下で進行していた『中退予防ネット』の価値を保障するためか……いずれも信じ難いですが」
「『中退白書2010』には(11カ月という期間についての)集計結果を載せていませんが、調査自体はおこなっています」
「弊社では、新聞報道に携わる『編集部門』と、『中退予防ネットワーク』などを運営する『事業部門』は別組織で、それぞれ独自の判断で活動をしております。編集部門の記事はあくまでも調査結果のデータや専門家らに取材した内容に基づいて書いており、弊社の事業に有利な社会情勢を作るために、紙面やデジタル媒体において、『コロナ禍で退学・休学が増えている』という論調に誘導した事実はありません」
「例示いただいた記事については、『退学・休学の増加』は全体のなかでは上位ではないものの、(夏期休暇以降は)大きく伸びていることから、記事・見出しともに『学生募集』など、ほかの上位のトピックスと併せて紹介しています」
「『朝日新聞』の一連の報道はいまも続いています。11月21日には、コロナの影響での休学者を『昨年同期比1.65倍』と報じていますが、今回も中退者は減っていました。今後は増えることもあるでしょうが、『朝日新聞』が信頼を損ないかねない報道をしてきた事実は消えないのです」