「山中先生におかれましては、これまで素晴らしい研究成果や学内のご実績により、横浜市立大学のプレゼンスを高めてくださりました。今後も感謝の意を学内外へ伝えて参る所存です」
「山中先生」とは、同大学医学部を6月末で退職し、横浜市長選(8月8日告示、22日投開票)への出馬を表明している山中竹春氏(48)のこと。
「専門は、統計や数字をもとに結論を導き出す『データサイエンス』です。新型コロナワクチンが、日本人にも有効であるという解析結果を初めて示し、注目されました。『報道ステーション』や『ミヤネ屋』などにも出演する名物教授でした」(サイエンスライター)
「選挙は現職の林市長、小此木氏、山中氏の実質三つ巴の構図です。当初、立憲民主党は江田憲司衆院議員(党県連最高顧問)を担ぎ出そうとしましたが、江田氏は固辞。その代わりに、政界進出に意欲があった山中氏を口説き、立候補させました」(政治部デスク)
「その日の午後、大学側から『6月16日の新聞報道について』と題された文書がメールで届きました。その中で、山中氏について『御本人への連絡がつかない状況が続いています』とあり、大学当局も混乱しているのだと思いました」
「ところが、7月の下旬になって突然、山中氏サイドがこの文書について『(大学の)設置主体である横浜市の林市長に対して配慮した内容』であり『連絡がつかない』との文面も事実無根だ、と大学に猛抗議してきたといいます。
「山中先生の同僚、秘書、部下など、この数年間で15人以上が辞めているんです。多かれ少なかれ、先生の高圧的な言動が原因です」
「『干す』ことにより、●●先生は自ら去りました。■■君についても同様に対応した方がいいと思います」
「干す」という強い言葉にA教授は驚き、複数の同僚とメールを共有した。一方、若手研究者のBさんは「自分は山中氏から “干された” 一人だ」と語る。
「数年前、データ入力で、本来反映されているべきデータが抜け落ちているというミスを犯しました。作業の途中では起こり得るものなのですが、山中先生にはその一回のミスで『君には向いていない。休みをあげるから次の仕事を探してきたら』と言われました」
「別の先生が僕に仕事を手伝わせようとしたとき、山中先生が『あいつに仕事させるな』と言うのを聞きました。山中先生のハラスメントに耐えられなくなり、山中先生からもう一度『辞めてくれ』と言われたときに、退職することにしました」(同前)
A教授から人材採用を相談された山中氏が返したメール。「『干す』ことにより、●●先生は自ら去りました」
「2021年6月に山中先生は、結腸ガン患者の再発リスクを予測する論文を発表しました。ここで、データ解析の責任者を務めていたのがCさんでした。
「私が解析責任者だったことは、研究を実施するにあたって作成される研究計画書の最終版を見れば、わかっていただけると思います。でも、私はもう大学を離れていますし、この件には関わりたくありません」
「(「干す」というメールを送ったかについては)在職中の学内行政に関するものであり、関係者のプライバシーの保護、秘密保持の観点から、存否を含めて答える立場にない。なお、山中本人がハラスメント行為をおこなった事実はない。(Cさんを論文の共著者から外したことに関しては)ご指摘の事実関係はない。解析責任者は山中本人で、論文執筆者の決定は多数人でハンドリングするコミッティー(委員会)において判断されたものと承知している」
「職場でのパワハラは、通常(1)優越的な関係を背景とし、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えて、(3)労働者の就業環境が害されることをいいます。この定義を援用すると、Bさん、Cさんのケースは(1)から(3)すべてに該当し、パワハラであると認定されると思われます」
「過去にそのような仕打ちをしたことを誇らしげに語ることは、内容としてはパワハラに相応するといえるでしょう。