岩手・花巻東高校野球部に入部した新入生は、1年めの冬に「目標設定シート」を書く。将来への目標を81のマスのなかに書いていくのだ。
大谷翔平(27)も、この書き込みからメジャーリーガーへの第一歩を踏み出した。約11年前に書かれたそれをあらためて見返すと、驚くべき事実に気づく。その81の目標を、実現しているのだ。
シートの中央に書かれているのは「ドラ1 8球団」という文字。高校3年のとき「メジャーに挑戦したい」と表明したことで、大谷の指名は日本ハム1球団のみだったが、もし表明しなかったら、その実力、将来性を考えれば、8球団、いやそれ以上の指名があっても不思議ではなかった。
その横に書かれた「スピード160km/h」。これには、こんな逸話がある。大谷が15歳のころから取材を続け『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(扶桑社)の著書がある、スポーツライターの佐々木亨氏が語る。
「シートには『160km/h』と書いてありますが、じつは、ウエイトルームの天井には『163km/h』という、別の紙が貼ってありました。真意を本人に尋ねたら『160キロを目指したら158キロくらいで終わってしまう可能性があるので、目標数値は高めにしました』と。これには、花巻東高の佐々木洋監督も驚いていました」
シートには、野球に関する目標が多く書かれている。『体重増加』に関しては、メジャーデビュー時の97キロから、現在の体重は本人いわく102キロ。『体幹強化』も、二の腕の太さや太腿の張りを見れば一目瞭然だ。『フォーク完成』も現在、メジャーリーグで被打率がもっとも低いのが、大谷のフォークなのだ。
また、本誌が注目したのは、プレー以外の面だ。『審判さんへの態度』『あいさつ』は、もはや日常的。打席に入る際は必ず帽子に手を当て、球審に挨拶する。
不正投球がないかチェックを受ける際、ほかの投手が不満の態度を見せるなか、大谷はにこやかに対応する。『仲間を思いやる心』『愛される人間』についても、彼の周囲に、つねに笑顔が溢れていることからわかるだろう。
そして『ゴミ拾い』である。毎打席、バッターボックスに入ると、ホームベース上をチェック。本来、ゴミが落ちていれば拾うのは球審の仕事だが、大谷は自然に拾ってしまう。
日本時間6月18日のタイガース戦では、四球で一塁に向かう際、落ちていたゴミをさっと拾い上げ、左ポケットに入れた。こうした行為が一度や二度ではないので、米国のファンから「彼はパーフェクトボーイ」「模範」「一流の振舞い」と称賛を浴び続けている。
「大谷は、基礎を作ってくれた花巻東高時代の経験を大事にしています。そして、自分が言ったことに関して責任を持って、実現しようと努力しています。まさに有言実行の男なんです」(担当記者)
若くして模範になる男。だからこそ、全米の心をつかむのだろう。
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