2022年1月4日、東京株式市場の終値は、2021年末比510円高の2万9301円と大発会では4年ぶりの値上がりとなった。2021年の大納会も2万8791円と32年ぶりの高値で終えており、引き続き景気の拡大が期待されている状況だ。
しかし、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」については、不安視する意見が少なくない。1月1日、首相官邸ホームページの「令和4年 年頭所感」で、岸田首相はこのように述べている。
《市場に過度に依存し過ぎたことで生じた、格差や貧困の拡大。自然に負荷をかけ過ぎたことで深刻化した気候変動問題。こうした、資本主義の弊害に対応し、持続可能な経済を作り上げていく》
こうした岸田首相の主張について、1月4日配信の「日経電子版」では、《今日の日本の資本主義は恩恵の分配が不平等にすぎるとみえているのかもしれない》とし、「新しい社会主義」につながりかねないと指摘した。
岸田首相は、企業が株主への利益還元などのためにおこなう「自社株買い」の制限や、株式の売却益などの「金融所得」への課税強化について、導入の可能性を言及。そのたびに、岸田首相を“株オンチ”“経済オンチ”呼ばわりするネット報道が相次いでいるのだ。
そんななか、ある経済ニュース専門チャンネルでの出演者の発言が、ネット上で急速に拡散されている。2021年12月30日、「日経CMBC」の『昼エクスプレス』で、あるストラテジストが(岸田首相の)「側近中の側近」から聞いた話として、こう語ったのだ。
「安倍さんとか菅さんみたいに、総裁室の中に株価ボードを入れてほしいんですよ。いま、株価ボードを撤去しちゃったらしいんですよ。安倍さんも菅さんも、自分の部屋に株価ボードがあったんです。私と20年来の付き合いのある側近の人に聞いたら『あれは撤去しました』と。(岸田首相は)本当に株に興味がない」
首相官邸の執務室には株価をリアルタイムで表示するボードがあり、歴代首相は執務にあたるあいだ、株価の値動きを注視してきた。岸田首相は、株に無関心なあまり、そのボードを撤去したというのだ。
岸田首相は株価対策に不熱心であるとみなしてきた個人投資家は、このエピソードに飛びつき、SNS上ではこのような発言が相次いだ。
《ワロタ、興味がない通り越して視界に入れたくないレベルとかもはや嫌悪やんけ…代わりに支持率のボードでも設置するんかな》
《救いようのないバカですよ》
《この方、株式市場に恨みでもあるのか…》
本誌は、岸田文雄事務所に株価ボードを撤去したことに対する真偽と、執務室の写真の提供を求めた。すると、すぐに以下のような回答があった。
「ご質問の件について、株価ボードを外したという事実はございません。執務室の撮影は禁止されているため、写真は提供できないことをご理解いただければ幸いです」
岸田事務所の主張に従えば「株価ボードを撤去した」という情報は“デマ”だったということになる。だが、新型コロナウイルスの感染者数は再び増加に転じており、上場企業ですら多くが人員削減を予定している。株価に注意を払いつつ、実体経済も底上げしてもらいたいものだ。
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