『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの碇シンジ役で知られる人気声優の緒方恵美。声優デビューした1992年に『幽★遊★白書』の蔵馬役に起用され、大ブレイクを果たした緒方は「第3次声優ブーム」と呼ばれたムーブメントの中心にいた。当時の声優ブームををこう振り返る。
「声優デビュー時は、レギュラー番組が1~2本だったので、声優の仕事とトレーニングに専念できました。週1~2日が収録で、残りの日がトレーニングという感じでした」
「声優の仕事はあくまでも裏方。自分は黒子に徹するつもりで舞台女優から声優になったのに、表舞台の仕事も増えていったんです。雑誌のグラビア撮影をして、写真集を出す。歌をレコーディグして、ライブもやる。ラジオDJや雑誌のコラム連載、声優番組の司会もやりました。
「雑誌のグラビアを撮影するのに、ヘアメイクもいなかったんです。声優事務所側にも、そういったスタッフが必要という認識すらありませんでした。
『ヘアメイクやスタイリストなんておこがましい』と事務所にはっきりと言われたこともありましたが、そこは自分がしっかり主張しなければ、後輩たちもそうなってしまうと……。少しずつ状況と戦うというか、なんとかしようとしていた時代ですね」
「自分のことだけでなく、業界全体を考えるスタンスは変わらないです。仕事や人間関係のすべてはつながっていて、みんなで生きているわけですから、自分のことだけ考えていてはダメなんです。
「私の演技の基本は、仮面や鎧を身につける演技ではなく、捨てていくというもの。『本気で泣いて』と言われて泣けないのは、泣くという感情が出るのを年齢や経験で身につけた仮面や鎧で抑えているからなんです。それを自在に捨てられるかどうかが大切。
おがためぐみ
1965年6月6日生まれ 東京都出身 東京声専音楽学校卒業後「ネヴァーランド・ミュージカル・コミュニティ」に劇団員として参加。1992年、声優に転身し、同年『幽★遊★白書』の蔵馬役を務める。1995年から『新世紀エヴァンゲリオン』で主人の碇シンジ役を務める。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』4部作(2007年~2021年)で再び碇シンジ役を演じる。映画『劇場版 呪術廻戦0』では主人公の乙骨憂太を演じる。3月に自身が主催する音楽フェス『Precious Anime & Game Song Festival』のクラウドファンディングを実施中
写真・野澤亘伸
ヘアメイク・杉浦なおこ