写真は、「シナプス」著者の大木亜希子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
―― 前回に引き続き、多少ネタバレになります。
大木 木村は、記者としての責任感もあり、女性としての危うさも秘めている。
彼女は振り切ったはずの宮原に安易な行動をやめるように忠告しに行くが、結局、その場で体を合わせてしまう。会えば女に戻ってしまい、挙句に好きな男のためにスキャンダルの写真を消そうとする。
―― 第1回の記事で触れた呪縛ですね。
大木 そうです。このあたりから同僚の原田とのやりとりがあり、木村自身が週刊誌の記者としての仕事に向き合いだしていく。
―― 木村さんはデータを消さなかった。仕事のうえで、越えてはいけない一線を越えずに、ふみとどまりましたね。
大木 私自身の周囲を見ていても、好きな人のために、道からそれそうになる女性はいます。そして、そんな風に女性が追い詰められるのは誰のせいなのか。その危うさに触れたかった。
写真は、「シナプス」著者の大木亜希子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
講談社の編集者から熱いアプローチ
―― この作品を「小説現代」で発表することになったきっかけの一つは、大木さんの著作を読んだ講談社の編集者が大木さんの筆力に注目したからとお聞きしました。
大木 ありがたいことです。講談社の菅さんがお声をかけてくださいました。
―― 菅さんもちょうど同席していますので、担当編集として作品の読みどころをコメントいただけますか?
菅 大木さんの『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)の冒頭、紅白歌合戦でのシーンを読んで、その描写の臨場感、心情のリアルさに脳天を打たれたような思いになり、読了後すぐにお声をかけさせていただきました。
―― たしかに、各所の描写では景色が浮かび上がるような臨場感がありました。大木さんの作風の特長かもしれないですね。
大木 じつは、「小説現代2020年08月号」には、佐々木愛さんの「目をつむれば全部」という作品も掲載されています。よく読むと、「シナプス」と同じ登場人物が出てきます。ヒントは本屋さんのシーンです。
写真は、小説現代2020年08月号(講談社)
写真は、「シナプス」著者の大木亜希子さん(撮影:BOOKウォッチ編集部)
(BOOKウォッチ編集部)
■プロフィール
大木 亜希子(おおき あきこ)
1989年生まれ。15歳から芸能活動をスタートさせ2005年にドラマ「野ブタ。をプロデュース」(日本テレビ系)で女優デビュー。2010年、20歳でアイドルに転身しタレント活動と並行してライター業も開始。15年からは会社員として執筆業務を担当し、18年にライターとして独立。著書に『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)がある。
書名: 小説現代 2020年8月号
出版社名: 講談社
出版年月日: 2020年7月21日
定価: 1000円(税込)
■大木さんのインタビューを読む(LINEで読めます)
男女の一線を越えた先に何が見えたのか/「シナプス」大木亜希子インタビュー(1)
好きな男性のために、自分の進むべき道からそれないで/「シナプス」大木亜希子インタビュー(2)
仕事なし彼氏なしの元アイドル、年の差26歳のおっさんとの奇妙な同居生活(1)
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報われない恋はある。どうしようもない。 大木亜希子に寄せられた反響(1)
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