横浜DeNAに8人の新人選手が加入した。23年ぶりのリーグ制覇を目指す三浦新体制で飛躍を期すルーキー・牧秀悟の横顔を紹介する。
2016年7月12日。松本第一高3年の牧は、夏の長野大会初戦に臨んでいた。
春季県大会を制したシード校として初の甲子園出場も現実味を帯びていた。「3番・遊撃」の右打者は、2安打と実力の片鱗(へんりん)を見せる。しかし、チームは小諸商の投手を打ちあぐね、1─3で惜敗。前年に続いて夏は1勝もできなかった。県内屈指のスラッガーにとって、あまりに早い幕切れだった。
プロ野球選手への憧れは当然あったとはいえ、「チームの成績は悪いし、実力を全く出せていない。常に悔しかった」。不完全燃焼の思いをぶつけたのが中大のセレクションだった。
2日間の打撃練習で快音を連発し合格。全国的に無名ながら、1年春の東都リーグから遊撃手のレギュラーとして神宮デビューを果たした。
「初戦はグラウンドに立って緊張のあまり圧倒された」。周囲を見渡せば、甲子園経験者や名の通った先輩ばかり。最初のリーグ戦は11試合で打率2割2分9厘。大学のスピードについていけず、「いい投手ばかりで球を当てに行くスイングになってしまった」と述懐する。
意識が変わったのは2年のオフだ。
筋力トレーニングに力を入れ、体は一回り大きくなった。鈴木誠也(広島)や坂本勇人(巨人)の打撃を動画で研究し、重心を低くした下半身主導のフォームに改造。翌3年春に成果を上げた。広角に打ち分ける技術と勝負強さを身に付け、打率4割で首位打者に。転向したばかりの二塁手でもベストナインに輝いた。
その夏の日米大学野球では日本代表の4番を任され、本塁打もマーク。1学年先輩だった柳町達(慶大─ソフトバンク)から、打席で追い込まれた後の対応などを教わったことが大いに役立った。「ジャパンに選ばれて自分の道が開けた。プロへの決心がついた」。4年時は大学で主将も務め、約80人の大所帯をまとめた。
今月8日に始まった横浜DeNAの新人合同自主トレーニングは「疲れるけど周りもすごい人ばかり。楽しんでいます」。二塁手でのレギュラー争いに名乗りを上げ、「自分は長距離タイプじゃない。しっかり打率を残して打点にこだわっていく」とキャンプで猛アピールする。
大学ナンバーワン打者と呼ばれるようになったのも、高校時代の悔しさがあったからこそだと自覚する。「初戦負けして、もう周りに負けたくないという気持ちが芽生えた。今では本当に良かったと思っています」。逆境をはねのけてきた経験を胸に、最高峰の世界でさらに羽ばたく。
まき・しゅうご 内野手。長野県中野市出身。松本第一高─中大。高校では甲子園出場経験なし。大学1年春から遊撃手でレギュラー。3年春に東都大学野球リーグで首位打者とベストナインを受賞。大学日本代表の4番を担うなど主軸として活躍した。178センチ、93キロ。右投げ右打ち。背番号2。22歳。
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