外食するとき、情報サイトを参考にする人が増えている。利用者の投稿などを基に算出される点数(スコア)で決めるのだ。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号から。
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製薬会社勤務の男性(42)が「行きたい店リスト」を作り始めたのは2007年。欧米以外では初のミシュランガイド東京版が発売された年だ。
それまでは、いろんなつまみがあって値段も安い居酒屋チェーン店で十分だと思っていた。転機は、付き合っていた彼女(現在は妻)からの一言だった。
「おいしいレストランに連れていって」
ミシュランガイド、当時人気を集めていたグルメサイトのlivedoorグルメやaskU東京レストランガイド(12年閉鎖)、そして食べログなどで店を探し始めたところ、高スコアの店だからこその満足感にハマった。
■3.5点以上の店だけ
すでに行った店は4400軒。これから行こうと思っている店は1700軒。現在は、ミシュランガイド、食べログ、ゴ・エ・ミヨ(フランス発のレストランガイド)、OAD(Opinionated About Dining/世界のレストランランキングを提供する情報源)、LA LISTE(世界中の飲食データをベースにランキングしたレストランガイド)の五つをチェックし、高スコア店を地域別にリスト化している。「せっかく食べにいくのなら、損したくない」という思いがある。男性は言う。
「やむを得ない場合を除き、食べログであれば『満足できる確率の高い店』の基準である3.5点以上の店しか入りません。行きたい店がたくさんあるので、同じ店に2度行くこともありませんね」
食べ歩きが趣味の東京都在住の女性(49)も「絶対失敗したくない」という思いが強い。気になった店は事前に食べログでスコアを確認。スコアが低ければ行かない。高スコアなら、たとえ接客が悪くても「寡黙な大将がやっている店」「余計なおしゃべりがなくすがすがしい」とポジティブに捉えられる。
ただ、「◎◎◎という料理がおいしかった」ではなく、「高スコアだったから、やっぱりおいしかった」と思ってしまうところが、我ながら恥ずかしい。友人には「グルメな人」と認識されているが、「実は高スコアの店を回っているだけ」とは口にできずにいる。
「確実に面白いものに出合いたい」と言うのは、不動産会社勤務の男性(34)。韓国映画やドラマが好きで、映画・ドラマレビューアプリ「Filmarks」のスコアを参考に、見るものを選んでいる。以前は勘を頼りに掘り出し物の映画やドラマを発見するのも楽しかった。今は新しい映画やドラマ情報がどんどん入ってくる一方で、見られる時間は限られる。「アプリに頼らざるを得ないのも仕方ない」と割り切って利用している。
■本の購入も星の数で
10歳年上の恋人の行動を冷ややかに見ているのは、東京都内の飲食店で働く女性(32)だ。本好きの恋人はアマゾンの星の数を見て購入本を決める。しかし、見ているレビューには「迅速に届いたので星四つ」や「表紙が折れていたので星一つ」など本の内容とは別のことに触れているものも多々ある。「読んで自分が面白ければいいのだから星を気にするのをやめたら」と言うと、「客観的な評価だから信用できるんだ!」と激怒された。今は何も言わないようにしている。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2021年5月3日号-5月10日合併号より抜粋
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