新型コロナウイルスによる家庭内感染は、大人が家庭に持ち込むケースが多い。だが、徹底した対策は子どもにとってストレスになりうる。子どもに配慮した対策を小児科医に聞いた。AERA 2020年9月28日号から。
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都内では、家庭内感染の占める比率が相対的に増えている。都の注意喚起などがあり、キャバクラなど「接待を伴う飲食店」や飲食店での感染が大きく減少しているからだ。
子どものいる家庭内での感染対策について、日本小児科医会公衆衛生委員会担当理事、峯小児科(さいたま市)の峯眞人院長は注意喚起する。
「バランスが重要です。家庭で感染を防ぐのは難しいので、感染が起きても保護者はまったく罪の意識を感じる必要はない。子どもは感染しても症状が出ないことが多いし、ほとんど重症化しません。心配はよくわかるが、過度に怖がって家で過大な感染予防策をとると、逆に子どもの心身に悪影響が出る恐れがあります」
峯小児科では子どものメンタルヘルスについても相談を受けているが、新型コロナウイルスで子どもの相談が急増しているという。
感染を心配する保護者から何かするたびに「触っちゃダメ」などと注意され、萎縮して、ご飯が飲み込めなくなった小学校低学年の子どもや、相談する相手が誰もいないと途方に暮れ、何年かぶりでやってきた思春期の子どももいた。
感染を持ち込まない
国立成育医療研究センターが6~7月にかけて実施した調査でも、回答した7~17歳の子ども981人の72%が何らかのストレスを抱えていた。
「子どもは親の心配やストレスを敏感に察する。親から色々と注意されると、親が自分のことを嫌いになったと誤解したり、相談したいことがあっても相談しづらく感じてしまったりすることがあります」(峯さん)
家庭の感染は、大人が外で感染し、それを家庭に持ち込む場合が多い。まずは外から感染を持ち込まないよう注意することが大切だ。
もし、3密の飲み会に出たなど感染リスクの高い行動を外でとった場合には、潜伏期間中は子どもとの接触を控えればいいという。
リスクの高い行動をとっていなければ、帰宅後、マスクをはずして処理し、手と顔を洗い、あればアルコールで手を消毒する。部屋着に着替えたければ着替えて、あとは自由に子どもと接していいと峯さんはいう。
タオルは、ノロウイルスやロタウイルスなどの感染を防ぐためにも、別々のタオルを使うかペーパータオルが望ましいが、その際には、「きたないからこっちを使っちゃダメ」と言うのではなく、子どもの好きなキャラクターのタオルを用意して、「〇〇ちゃんのだよ」と、子ども自らが使いたくなる環境を作るのも一つの方法だ。
歯磨き粉の共有で感染するかどうかは不明だが、気になるなら、子どもが使いたくなるシールを貼るなどして、楽しく区別できるようにするといい。子どもが大人のものを使いたがったら、大人の感染リスクが低ければ、共有しても構わないだろうという。
前出の峯さんは言う。
「大半の子どもにとって新型コロナウイルスは一過性の感染症。しかし、いったんこころの問題が生じると、それを回復するには長い時間がかかる。子どものこころに与える負荷もよく考慮した上で、対策をとってほしい」
また、風呂は、寮のように大勢が使う浴槽についても文科省の学校の衛生管理マニュアルが「リスクはない」としている。
家庭でもお湯を共有しても構わない。一方、便にはウイルスが排出されることがあるので、トイレの消毒はこまめにした方がいい。(ライター・大岩ゆり)
※AERA 2020年9月28日号より抜粋
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