新型コロナウイルスの影響で長く続いた自粛生活。この期間に、家庭でもいろいろな問題が起こりました。花まる学習会代表・高濱正伸先生は、「今こそ夫婦で話し合いを」と言います。それはどうしてでしょうか?「AERA with Kids秋号」で紹介している、高濱正伸先生の誌上セミナーの一部を公開します。
「消毒しない」「旅行したがる」能天気な夫…妻との“コロナの意識差”で家庭不和に
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今や人生100年時代と言われています。テクノロジーもどんどん進化しているし、環境も変わるし、今回のコロナのような思いもよらないことも起きる。今の子どもたちが大人になる10~20年後にどんな世界になっているか、どんな職業が「食っていける」のか、そんなものは誰にもわからない。これからの人生に正解はないんです。
正解はないからこそ、大切になってくるのは、やはり家庭のあり方だと思うんです。そして「わが家はこれでいこう」という軸が必要になってくる。
新型コロナウイルスの影響で長く自粛生活が続いてきたこの期間に、家庭で起きたことのひとつに夫婦関係の変化がありました。いわゆる“コロナ離婚”と言われる問題が、ゴロゴロ表に出てきました。
ところが逆に、仲が良くなる夫婦もいたんです。夫婦関係はもはや二極化したと言ってもいいくらい、はっきりと運命が分かれました。
“コロナ離婚”といっても、実はコロナのせいじゃない。離婚に至る原因でいちばん多いのは何だと思いますか?
「常識の違い」なんだそうです。
食事など普段の生活のマナーもそうだし、人に対する礼儀とか「当たり前のことが、なんでできないの?!」とか「これが当たり前の考えだと思っていたのに何でこうも違うの?」とか。「常識の違い」から湧く怒りは根が深い。ふだんは見て見ぬふりができていたのに、このコロナの非常事態で「バーーン!!」て爆発しちゃったんですね。
そもそも違う家で育った二人が夫婦になって子どもを持ったら最初にやるべきことは、家庭内の常識を一致させること。どっちの家に従うってことではなくて、子どもを含めた新たな家族の、新しい常識を作るんです。
それをしないと子どもが赤ちゃんの頃はいいかもしれないけれど、子どもにしつけが必要になったとき、進路を決めるときになったとき、方向性がブレブレになってしまう。
例えば、父親は地方の公立校出身で母親は中学校から私立に行っていたりするケース。母親は当然中学受験をさせたいと思うけれど、父親は「私立なんて行く必要はないだろう。会社だって役職につくのは公立出身者が多いし」と言ったり。それに対して母親は「やっぱり中高一貫行くと勉強の環境がよくて、いい仲間もできるよ」と言ったりする。
まさにそれが常識と常識のすれ違い、ということです。私も進路指導をしていたとき、夫婦の意見が一致しない家庭を山ほど見てきました。
それまでにきちんと話し合うことをしてきていないと、一方的に「俺はこう思う」と自分の常識だけを主張して、それが正しいと疑わなかったりする。すり合わせなきゃいけない、ということすらわかっていない。そうなると、「あの人には言ったところでムダ」となり、ますます話し合いから遠ざかる。だんだん亀裂が深くなると、もはや話し合うこと自体がムリ、という恐ろしい将来になってしまうのです。
今まで夫婦で話し合いをあまりしてこなかった人にとってはとても耳の痛い話かもしれません。
でも、今からでも遅くない。むしろ今こそ話し合いのチャンスだと思うんです。このコロナの時代だからこそ、話し合うべき問題が新たに出てきている。例えば今後もコロナが収まらなかったとき、学校は今まで通り行かせるのか、休ませるのもありなのか。塾や習い事の合宿などは出席させるべきか、否か、とか。危機的状況こそ話し合いのチャンスだと思います。
とはいえ、夫婦の話し合いは難しいのも事実。
たとえ結婚して、同じ家に住んでいても男と女は完全に分かり合うことはできない。だからといって完全に諦めるのではなく、無理に合わせるのでもなく、まずは「そういうものだ」とお互いに認めることが大事。
つまり夫婦で意見が違うなら違うで、相手はどうしてそう考え、行動するのかを考えてみる。相手を否定する前に異性の言動の特徴を知ったり、自分を客観的に見てみるようにしてください。この二つがあるだけで夫婦のコミュニケーションはグンと高まります。(構成=AERA with Kids編集部)
※「AERA with Kids秋号」から
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