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■具体的な目標設定語れ
「このくらいの感染者数まで下げることができれば、ワクチン接種をスムーズに進められる。あるいはオリンピック・パラリンピックも何とか開催の方向性が見える状況になる。そんな目標を示し、期待を持たせることで、みんなでもうちょっと辛抱してがんばりましょうという強力なメッセージが必要です」
「ただ『基準をクリアしたから解除します』では、『で、1週間前倒しすることに何の意味があるの?』という疑問が残ってしまいます」(尾崎会長)
「そのうえで、『いちおう目安は何日までだけど、目標が達成できなければさらに延ばしてがんばりましょう』みたいな話に最初からしておけばいい。みんな延長は嫌だし、早めに目標数値まで落とすためにもう少し我慢しようよという気持ちになるのではないか、と私は思ってます」(同)
「今、緊急事態宣言への慣れや気の緩みで、現に感染者が減っていない。『なぜ、延長になってしまったのか』を国と私たちがいま一度しっかりと共有することが大事です。そのうえで、仕事におけるリモートの徹底や飲食店の感染対策など具体的なポイントも挙げつつ、国や自治体のトップが『もう2週間、思いっ切り努力してみましょう!』と、雰囲気をガラッと変えるような訴えをしないと効果はない。今のままではむしろ『これ以上の我慢を続けるなんてもう限界だ』と、延長による反動でさらに緩んでしまう可能性もあると私は危惧しています」
■宣言の意味を見失った
「100年前のスペイン風邪は、終息に3年かかりました。今まさしく、100年に一度の試練がやってきました。でも、まだ戦いは1年です。経済も含めて、これからさらに年単位の戦いが続くと思っています」
「現状では『医療サイド』と『飲食業・観光業サイド』がバトルするような構図があり、それを政府や厚生労働省が傍観しているような形になっている部分があると感じている」
「不完全な形で緊急事態宣言を解除すれば、必ずリバウンドは来る。また緊急事態宣言を出すようなことになれば経済はさらに打撃を受ける。徹底的に、抑えられるだけ感染を抑えておくことが、経済にとっても早道になるんです」
「医療サイドも、経済でいま打撃を受けている飲食業や観光業の方も一緒になって、日本中のみんなが協力して乗り切りましょう、というメッセージをリーダーが出すべきです。現状では、たとえ緊急事態宣言が出ていても『何をどのように守ればどんな効果があるのか。どんな目標を達成できるのか』ということを、国民一人ひとりが見失っているように思えます。解除の是非の議論は、そこをいま一度見直すよい機会にもなり得ると考えています」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2021年3月15日号より抜粋
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