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■驚異的なタイムの短縮
「復帰から数カ月でここまでタイムを縮められるのは成長過程のジュニア選手ならあり得るかもしれませんが、一般的には厳しいです。すごみを感じました」
「バタフライはクロール、背泳ぎ、平泳ぎの4泳法のなかで最も体力を消耗します。特に短距離はほんの少しの動きの違いが結果に響く、最も厳しい種目でもあります」
「回数を変えたそうです。(スタート直後の潜水で)ドルフィンキックを15メートル以上すると失格になりますから、一発勝負の本番でできる修正力と勝負勘が非常に優れています」
■決勝はターンもピタリ
「(3日の)予選でスタート後6回、ターン後4回だった水中ドルフィンキックを、(3日の)準決勝、決勝ではスタート後8回、ターン後6回に増やしていました。浮き上がりの初速も速く、前半50メートルでは予選より決勝が1かき少なく、後半は準決勝より決勝が1かき少なく泳げていました。特に決勝では、ターンのタイミングが合ったことも後半の初速を上げることにつながりました」
「復帰して初めてプールに入ったときの映像を見て驚きました。水を軽くかいていたのですが、基本の動きができていました。(水中で手を横に広げて推力をつくるときに)腕を45度に傾ける動きを忘れていなかったんです。子どものころ、雲梯(うんてい)で鍛えたといいますから、体に肩甲骨の動かし方なども染み付いていたのかもしれません。だから筋力は減っても泳ぎの技術は失われていなかったのでしょう」
「必要な筋肉をつけて体を戻していますが、これから別の体に仕上げていくかもしれません。アスリートとして体づくりを見直して、ゼロからリスタートを切れたとも考えられます。これからの飛躍が楽しみです」
※AERA 2021年4月19日号
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