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家賃4万7千円のアパートに暮らす「統計王子」の自制心 衆議院議員・小川淳也<現代の肖像>

2020年10月7日 18:30 AERA/写真・葛西亜理沙

 映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」でも話題となっている小川淳也さん。その体に漲るのは「自制心」である。高校では野球部に所属しながら東大に合格。入省し官僚になったが、そこで気がついた。ここで働いて日本をよくできるのか、と。政治家になってからも、正道を踏み外すまいと、より自分を律する。頭にあるのは、いつか日本をよくしたいということだけだ。

* * *
 まもなく齢五十を迎える一人の政治家に、まだ蒼い、まるで蒙古斑でも残っているかのような青年の初々しさをみる──。

 初めて衆議院議員・小川淳也(49)に会った人は、皆一様に同じ思いを抱くという。すらりとした体躯と溌剌とした性格。その風貌はグラウンドを駆ける高校球児のようだ。事実、小中高と野球部に所属。今でも時間が許せば母校の野球部OB主催の練習試合に参加し汗を流している。

 しかし、国会の予算委員会の質疑など、政治の主戦場に立つと面立ちは変貌する。ファクトに基づく緻密な理詰めと大胆な論の展開。隙はない。利発な光を放った目は物事をよく捉え、体が敏捷に動く。

 選挙区以外では無名だった小川が「統計王子」の異名でメディアに取り沙汰されるようになったのはわずか1年前のことだ。厚生労働省が発表している「毎月勤労統計」の不正が明るみに出たのがきっかけだった。

 この時、無所属議員の小川を質問者に抜擢したのが立憲民主党の国会対策委員長(当時)だった辻元清美(60)だ。辻元は同僚の1年生議員に、本物の質疑の凄みを見せて学ばせたいと考えていた。ただ、統計という専門分野にうかつに手を出すのは危ない。そこで、元総務官僚で統計の扱いに慣れていた小川に白羽の矢を立てたのだ。無所属の議員が、党所属のベテラン議員を差し置いて、時の総理にも直接、質問できる国会の花形の質疑に立つのは極めて異例だった。辻元は「淳也、質問の千本ノックやるか?」と声をかけ、質疑当日に向けて徹底的に準備をした。

「トップバッターに要求されるのは、一発で相手を仕留めに行くこと。厚労省が勤労統計の調査手法を変更したきっかけが、麻生(太郎)財務大臣の経済財政諮問会議での『統計の精度を上げろ』という発言だったことを取り上げ、それを国会で本人に突きつけた質疑は圧巻でした」(辻元)

 躍動感に満ちる小川の全身に漲るのは自らを戒め、律する自制心だ。

「政治家、国会議員。そんなものになりたいわけじゃないんです。ただただ、この国の政治を何とかしたい。その気持ちは初めて国政に挑んだ日から変わりませんし、誰にも負けるつもりはありません」(小川)

 そのストイックさは生半可ではない。国の舵取りの一端を担う政治家である以上、まかり間違っても、少々のことでは浮かれない。絶対に正道を踏み外すまいと心に決めている。政治資金の使途も厳格だ。決して無駄遣いはしない。

「本格的な、本物の仕事をするためには、自己規律が基本だと思っています。僕は目立つことも得意ではありませんし、常に地面の上を実直に這うことくらいしか取り柄はありませんから」


 小川が暮らしている自宅は、家賃4万7千円のアパートだ。身にまとうスーツも地元の量販店で買い求めた一張羅。これをボロボロになるまで使い続ける。しかし、その気概を現代の修行僧だと笑う者もいる。愛想をつかした同僚議員も数知れないだろう。しかし、当の本人はどこ吹く風だ。

 現在、上映されている「はりぼて」という映画がある。2016年に富山で発覚した市議会議員による政務活動費の不正受給問題を描いたドキュメンタリーだ。映画の配給会社から感想を求められた小川は、司馬遼太郎の「峠」という作品の一節を引いてコメントした。

「男子の志は塩のように溶けやすい。生涯の苦渋はその志をいかに守り抜くかにあり、その工夫は格別なものでなく、息の吸い方、吐き方、箸のあげ方、下ろし方、それを守る日常茶飯の自己規律に貫かれておらねばならぬ」

 この言葉は、他ならぬ自分自身への戒めだ。その後、前首相・安倍晋三の「桜を見る会」の疑惑追及でも活躍。時の首相や官房長官を前にしてもひるまず、たじろぎもしない。豊かな鋭感を秘めた、ドキドキするような思いで見守りたい次世代の旗手は、こうして頭角を現した。この頃から小川は劇的に化ける気配が充満していた。

(文・中原一歩)                                                 

※AERA 2020年10月12日号より一部抜粋

【「8割おじさん」のはち切れそうなシャツから妻が感じたサイン 西浦博<現代の肖像>】

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臭い靴下+バニラ=チョコ においの足し算と引き算で脳が感知

2020年10月7日 18:30 AERA

 事実は小説より奇なり。朝日新聞が報じたB級ニュースを、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』で、夕日新聞社としてピックアップ! 2020年10月号からその記事を紹介する。

■日本初の「いちご学科」1期生募集

 (2020年7月7日 栃木県)

 いちごの生産量日本一の県はどこ? 答えは栃木県。1968年からずっと生産量トップを守る。いちごの本来の旬は春の5、6月だが、栃木は11~5月と品質のよいいちごを長く生産できるのが強み。

 そんな「いちご王国」に、来年4月、日本初の「いちご学科」が誕生する。同県宇都宮市にある県農業大学校で、在学は2年間。すぐれた技術と高い経営能力を持つ、企業的な経営ができる農業者の育成をめざすという。募集は10人。受験資格は高校卒業か、来年3月卒業見込みで、年齢の上限はない。卒業後に県内で就農することも条件だ。

 福田富一知事は「いちご農家は減り続けている。若い人を含めてぜひ応募してもらい、新たな人材を得ながら、いちご王国を守り続けていきたい」と語る。

 日本一を維持してきた先輩たちの期待がかかる。


■ホットドッグ早食い 日本人が7連覇

 (2020年7月4日アメリカ)

 アメリカ独立記念日の7月4日、ニューヨークで、1916年から続くホットドッグの早食い大会が開催された。毎年、多くの市民に見守られながら屋外で行われる人気イベントだが、今年は新型コロナウイルスの感染を避けるために、屋内の無観客試合となった。

 選ばれた5人が参加した女性部門では、ラスベガス在住で6大会連続優勝の須藤美貴さんが10分間で48・5個をたいらげ、7連覇を果たした。

 須藤さんは右手でソーセージだけを2本同時に食べつつ、左手でバンズを水に浸して口があいたら放り込むスタイルで、序盤から他の選手を圧倒。3年前の自己ベスト(41個)を塗り替え、12・4秒に1個という驚異的な記録を刻んだ。

 男性部門の記録は10分間で75個だって!

■臭い靴下+バニラ=チョコ においの謎に迫る

 (2020年7月3日福岡市)

 においは、鼻の奥にある神経細胞がさまざまなにおい物質を感知して、脳に伝達して感じる。これまで複数のにおい物質をかいだときは、各成分の「足し算」としてにおいを感じるという定説があった。だが、臭い靴下のにおいと、バニラの香りを合わせると、チョコレートの香りに感じるなど、説明できない事例も知られていた。

 九州大学などの研究チームが、このしくみを解明するために、マウスを使ってにおいへの反応の強弱を調べたところ、各成分の「足し算」としてにおいを感じるだけでなく、抑制化される「引き算」のケースもあると発見した。複数のにおいを混ぜてかがせると、反応がより高まる「相乗効果」や、逆に弱まる「拮抗作用」がみられるケースも。靴下とバニラの例では、靴下の臭さを拮抗作用で抑え、相乗効果でチョコの香りを感じている可能性があるという。

「引き算」のケースは世界初の発見なんだって!

■海水浴場に巨大ワニ!?

 (2020年7月9日青森県)

 青森県鰺ケ沢町の海水浴場に砂で作られた巨大なワニ2匹が相次いで現れた。体長はそれぞれ5mを超える。

 近くに住む男性によると、7月3日に砂浜で何かを作る若者たちが目撃され、翌日朝には1匹目のワニが完成していた。そして9日朝には、さらに大きな2匹目が寄り添うように作られていたという。

 鋭い目つきや背中の凹凸など実物そっくりな姿が話題になり、砂浜はワニを一目見ようと集まった人たちでにぎわっている。

 やがて消えてしまうはかなさも人気の秘密。

※月刊ジュニアエラ 2020年10月号より

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「負けました」が人を育てる! 羽生善治九段も考える将棋“感想戦”の重要性とは?

 藤井聡太二冠の登場が「変革」をもたらしたのは、将棋界だけではない。子どもの教育に将棋が良いのでは──そう感じた人も多いはずだ。挨拶が心を落ち着かせ、「負け」が人を豊かにする。AERA 2020年10月5日号将棋特集から。

【「こんなこと普通できません」藤井聡太二冠がみせた“真逆の展開”に渡辺明名人が驚き】
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 大盤を前に、「次の一手は、どこに駒を動かすのがベストかな?」と問いかける。すると、小学生18人が次々に「ハイッ!」と元気な声で挙手する。

 9月中旬、東京・吉祥寺にある将棋サロン「将棋の森」の子ども教室「しょうぎテラコヤ」を訪ねると、ワイワイした講義風景が見られた。指導役は、高橋和(やまと)女流三段(44)だ。

 対局の時間になると、子どもたちは一気に集中モードに。教室に響くのは駒音だけになった。子どもたちのマナーの良さに、正直驚いた。

 高橋さんはオンとオフの「モードの切り替え」ができるようになるのは、将棋ならではの良さだと話す。

「将棋の場合、『三つの礼』の決まりがあって、必ず対局する相手と挨拶を交わしますよね。これが切り替えスイッチの役割を果たしていて、周りの雰囲気から自然と学んでいくんです。『あ、今は静かにするんだな』と。それに、大きい子が低学年の子に『静かにしないとね』とさり気なく注意してくれたりする。なので、私が大きな声で注意する必要もないんですよ。楽させてもらってます(笑)」

■負けを認めるプロセス

 将棋を習うと、精神面での成長にも結びつくという。

 都内在住の11歳の男の子は、将棋歴が9年。子ども向けの大会で賞をもらった経験もあり、ここにきて将棋の腕を上げているという。母親は言う。

「うちの子は幼児の頃は癇癪(かんしゃく)持ちで、我慢することが苦手でした。欲しい物があれば、『買って!』と騒ぐし、カードゲームで負けただけでも、ワーッとカードをばらまいたりしていたし。でも、将棋を習い始めてからは、我慢や待つ姿勢を身につけることができるようになったんです。将棋って、相手が熟考している間は、ひたすら待ちますから。精神論というより、純粋に対局が楽しいから待てるようになったんでしょうね」

 礼儀も、我慢強さも、対局の経験を重ねる中で、「子ども自身が獲得していく」と高橋さん。


 まずは、「よろしくお願いします」と“始まりの礼”を交わす。勝負が進み、勝てないと判断した側が敗北を認めて「負けました」と自ら頭を下げて伝えるのが“負けの宣言の礼”だ。

「何度も負ける経験をして、自分の中での折り合いの付け方を学んでいくのが将棋。この負けを認めるプロセスって、子どもにとっては苦しいと思いますよ。悔しくて、涙を流す子どももいます。私も小2で道場に通うようになった時、大人の人たちにどうしても勝てない自分が悔しくて、目にいっぱい涙をためて帰りの電車に乗っていた日々がありました」(高橋さん)

「三つの礼」は、対戦相手とフェアに戦う精神性を養う。ひいては、将棋そのものの強さにもつながる──。そう話すのは、東京福祉大学教育学部の専任講師で、日本将棋連盟学校教育アドバイザーを務める安次嶺(あじみね)隆幸さん(57)だ。かつて、デビューしたての頃の藤井聡太二冠が、「負けました」と頭を下げて投了する相手よりも低く頭を下げていた姿を目にした。安次嶺さんは、「藤井さんが勝ったはずだが」と目を疑った。この「謙虚さ」があるからこそ、藤井さんは強豪の先輩たちを前にしても、落ち着いた気持ちで自分の将棋が淡々と指せるのではないかと言うのだ。

「少し前に、大学の授業で藤井さんの対局の写真を見せたことがあるんですよ。ある学生は、深々と礼をする姿を見て、『あれ? 藤井さん負けたんですね』と勘違いしたぐらいです」

 と安次嶺さん。藤井二冠の凄さは、この「謙虚さ」を今も続けていることにあるという。


■リスペクトを言葉に

 負けの宣言の礼の後は、一局を振り返る「感想戦」が始まる。安次嶺さんは、この感想戦こそが、将棋を将棋たらしめている大事なエッセンスだともいう。

 勝者も敗者も関係なく、二人がボソボソと感想を述べ合う。局面を再現しながら、たとえばこんな風に。

「この局面では、まだ(勝てる)自信はなかったです」
「私は7八金(という手)もあると思ってましたが」
「なるほど。そう来ると、銀で受けられますね」

 勝った側は相手の気持ちを察して大喜びしたい感情を堪え、相手へのリスペクトを言葉に込める。負けた側は冷静な目で勝負の内容を顧みる中で「心を折りたたんで」波立つ心を浄化していく。

 安次嶺さんは、負けの宣言から、「ありがとうございました」と“終わりの礼”に至るまでの間に感想戦の時間を挟むことの意義を、こう語る。

「直前まで真剣勝負を繰り広げていた相手と『もっと違う手もあっただろう』と最善を探り合う。これ、すごいことですよ。だって、ホームランを打たれたピッチャーが打者に『お前、今の球どうだった?』とは言わないでしょ? 将棋の場合は、あえて言うんです。それは、お互いに高みを目指す中で、高度な学びが得られるから。それと、一局を俯瞰する中で『あの時、勝ちを急いで焦る心理が邪魔をしていた』などと自己の内面を見つめ直す時間にもなる」

 折々に対局の解説も行う安次嶺さんは、感想戦をみれば、トップ棋士こそ振り返りを大事にし、「次は、もっと」とあくなき探究心を持ち続けているのがわかるという。

 印象深いのが、羽生善治九段があるタイトル戦に挑んだ際に目にした光景。羽生さんには残り時間が1時間あり、自分が負けだとわかっている局面でいつまでも投了せずに盤面を凝視し、考え続けていた。後日、安次嶺さんが対談の場で「なぜ、考え続けるんですか?」と尋ねると、羽生さんは、こう答えたという。

「簡単に投了すれば、その時は楽だけれど、次に全力が出せなくなる。『自分は最後まで最善を尽くして負けたんだ』と、感想戦などを通じて振り返った時に思えるかどうかが大事なんです」

 探究性を高める感想戦の要素を、教育現場に生かす取り組みもある。聖隷クリストファー大学(静岡県浜松市)社会福祉学部こども教育福祉学科で実践している「板書感想戦」だ。

 将来、先生となって授業をする学生たちが先生役と児童役とを交代して模擬授業を行う。授業を担当しない回は、児童役兼参観者となる。授業の流れが記録されているのが「板書」であり、それを将棋の盤に見立てる。授業後、参考になった授業のやり方だった板書の箇所は黄色の、要検討の箇所は赤い付箋を貼っていく。すると、付箋の色の分布で、授業の振り返りができる。特に、要検討箇所の指導のあり方を吟味する。


■「板書感想戦」の効果

 発案したのは、同学科の飯田真也教授。将棋の感想戦に着目したのは、「この局面でこの手は、どんな意味があるのか」という、意味の理解が深まる点だ。

 今年6月から8月まで、算数科指導法で板書感想戦を試みたところ、「授業者も参観者も分け隔てなく、全員が板書に向かうことで、最善の手、つまり『より良い指導のあり方』を目指す協働の場での探究性が生まれた」と、飯田教授は実感している。

 このように将棋には、感想戦一つを取ってみても、子育てに効く要素が満載だ。とはいえ、まだ幼く、初心者のうちは感想戦の意味を見いだせないし、細やかに感想を述べ合うのは難しい。盤面一つひとつをクリアに記憶しきれないからだ。前出の高橋女流三段は言う。

「感想戦って、正直、子どもの頃はしたくなかった。負けた後はやっぱり悔しいし、早く終わりたいし。だから、子どもが本将棋を指せるようになったら、対局後に『まずは良かったことを一つ、悪かったことを一つ、お互いに言ってごらん』と。そういうところからスタートしてみるとよいと思います」

(ノンフィクションライター・古川雅子)

※AERA 2020年10月5日号

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福島県飯舘村で「移住者101人」 避難指示解除から3年余り、戻らない住民も多い一方で

2020年10月7日 18:30 AERA/写真・菅沼栄一郎

 原発事故で、村の全域が計画的避難区域となった福島県飯舘村。避難指示が解除されても 戻らない住民も多い中、移住者が101人となり、村の担当者を驚かせている。 AERA 2020年10月5日号から。

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 福島県飯舘村。9月下旬の祝日。小高い丘の上にある旧草野小学校の教室に、20人余りが集まった。村に移住してきた人たちやその暮らしに関心がある仲間たち、村の人たちが参加したワークショップで、村の「将来ビジョン」を語り合った。


 小原健太さん(42)は、4カ月前に埼玉県から妻と2人で引っ越してきた。「来年から花栽培農家を始め、スターチスを育てます。年収500万円を目指したい」。サラリーマンをやめて、「不便で、知らなかった場所で」、初めての農業にチャレンジする。「稼げる農業モデルを実現できたら、満員電車に嫌気がさしている都会の勤め人は、どんどんやってくると思いますよ」。放射性物質は日常生活では気にならないし、花栽培にも影響はないと思っている。ただ、「山林に入る場合は、まだ線量が高い部分があるので気をつけている」と話す。

「100人目の移住者」となった造園業の塚越栄光さん(45)は、小原さんと新たな「契約」を結んだ。塚越さんは東京・渋谷の商店街にも拠点を持つ。小原さんが手始めに、知り合いの畑で咲かせたシクラメンがこの秋にも、パルコに向かう通りに並ぶことになりそうだ。

 2011年3月の福島第一原発の事故の後、当時の住民約6200人の大半が村を出た。原発から半径20キロ圏内の「警戒区域」以外にも避難指示が出たからだ。飯舘村の中心部は原発から約40キロ離れているが、風向きや地形の関係で他地域より積算放射線量が高くなる恐れがあるとされ、全域が計画的避難区域となった。当時、暮らしが消えた村には、牛や飼い犬が牧草地や庭先に残され、たまにエサやりに戻る村人の姿が見られるだけだった。

 17年3月、「避難指示」は一部を除いて解除されたが、全国に避難した3800人余りはなお、戻らない。9月1日現在の村内居住者は1472人(震災前の約2割)とされるが、福島市(避難者約2400人)など近隣地区に建てた家との二重生活をしている人も少なくない。


 佐藤健太村議(38)は、避難期間中に結婚し、今は家族4人で福島市で暮らす。同市内から毎日のように、自ら経営する飯舘村内の工場に通っている。「放射性物質の子どもへの影響を気にする親もいますが、むしろ、震災から10年近くが経って、生活の拠点を動かしにくくなった人が多いと思う」という。

 一方でこの8月末、村外からの移住者が100人を超えて、村の担当者を驚かせた。

 村づくり推進課によると、移住した101人のうち、60代が27人と最も多く、これに次いで働き盛りの40代が19人。50代以上が半分だが、小原さんのように40代、あるいはそれ以下の若い世代も目立つ。移住の理由は、「実家にUターン」が29人ともっとも多いが、「就職、就農」も合わせて25人だった。

 村では3年前の避難指示解除で村内に居住が可能になって以来、移住者支援に力を入れてきた。「家の新築には最大500万円、中古には最大200万円のほかに修繕費として最大100万円を補助する」といった、手厚い政策を展開している。101人の「移住者」は厳密に言えば「移住定住支援事業補助金」を受け取った人だ。補助金を受け取らなかった人も含めた「転入者」は全体で182人いる。

 ワークショップで小原さんと背中合わせの席にいた、松本奈々さん(28)が話した。「どんな人でもやってきて住むことができる『多様性』を大事にしたい」。松本さんは、昨年の春、「地域おこし協力隊」の一員としてこの村にやってきた。この日の会場になった旧草野小学校を改造して、村外からやってくる移住者やアーティストの活動の場にする作業を進めるため、仲間を募集中だ。近くの民家を、シェアハウスにする事業も、村から任されて進めている。福島市の出身だが、東京の大学にいる時から、飯舘村の支援事業に関わった縁で、村に飛び込んだ。

 若い人たちの議論を、教室の後方で聞いていたのが、元物理研究者の田尾陽一さん(79)だ。田尾さんは避難指示解除後、住民票を移し、家を建てて東京から引っ越した。

 同村に初めてやってきたのは、11年の震災後間もなくの6月。原発事故の放射性物質を浴びた現場を、医師や研究者、退職した元教師ら17人とともに視察。地元の農業者と「再び農業ができる村をつくる」目標で意気投合。後にNPO法人「ふくしま再生の会」を立ち上げた。

 ワークショップの主催者は、田尾さんの娘で今年、東京藝術大学を卒業した矢野淳さん(25)だ。矢野さんは、東京の大学と村を拠点としながら、大学などの仲間と共に、飯舘村の歴史や事故後のあり方を調べてきた。「ふくしま再生の会」の9年余りの活動記録を踏まえ、地域おこし協力隊の松本さんと相談しながら、7月以来2回のリモートワークショップを重ね、村の将来のあり方を探ってきた。

 3回目の今回は、初めての対面でのワークショップとなった。矢野さんは「飯舘村だけの特殊な将来像でなく、高齢化、少子化が進み、コロナ禍が広がるなかで、世界にアピールできる課題解決への道を、みんなで紡ぎ出したい」と言う。「世界にアピール」は既に現在進行形だ。田尾さんによると、「ふくしま再生の会」のメンバーが学会や英文誌に発表しているほか、香港の大学研究員が世界各地で報告している。この研究員は昨年の3カ月間、村内の再生の会事務所に泊まり込んで、「ふくしま再生の会」のNPOとしての活動実態を「文化人類学的手法」で調べた。来年にも再来日し、飯舘村の研究を続行する予定だ。

 避難中の人たちも、飯舘村の将来設計に意欲的だ。原発事故後に北海道栗山町に避難、牧場を経営する菅野義樹さん(42)は、このワークショップの常連で、今回もリモート参加した。

「(故郷に)戻った人、戻りづらい人、新しく住んだ人が、集まることができて、ぼくの念願もかなった。今後もこうした機会を重ねて、みんなが知恵を出して、これからの『いいたて』を作っていきたい」

 元村職員の杉岡誠さん(44)は今回初参加。「自分も200年前に北陸から移住してきた寺の6代目住職です」と自己紹介、移住者や学生たちと熱心に議論を続けた。10月に任期満了を迎える村長選は、6期務めた現職(73)が引退、今のところ杉岡さんだけが出馬表明している。

「私は明日が待ち遠しくなるようなワクワクする村にしていきたいと思っています。村に戻った人、新しい生活を始めた人、新しくやってきた人、皆が語り合うこうした場がふるさとを育てていきます。これからもぜひ続け、私も参加させてほしい」

 飯舘村の現実は、必ずしも楽観視できない。村のなかで、野菜や魚など生鮮食料品を売る店は、まだない。商売として採算が合わないからと言われており、村民は隣の川俣町のスーパーまで行く人が多い。そうした中で、村の内外で様々な居住形態の人たちが参加して、ひとつのコミュニティーづくりを目指す試みが、動き出した。主催者の矢野さんは言う。

「こうしたワークショップをさらに重ね、広げて、村内外の仲間を増やし、将来を担う若手主体の組織を作り、ふくしま再生の会とも提携していきたい」

(朝日新聞社・菅沼栄一郎)

※AERA 2020年10月5日号

【温かい食事が当然の海外と雲泥の差…日本の“避難所”事情 海外避難所では不可欠な「TKB」とは?】

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芦田愛菜、16歳の真っすぐな眼差し 「ありがとう」はぜんぶ言葉にする理由

 子役時代から現在まで、圧倒的存在感で人気を集める俳優の芦田愛菜さんがAERAに登場。俳優歴10年を迎える芦田さんが、現在の思いを語った。AERA 2020年10月12日号から。

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 本誌表紙フォトグラファー・蜷川実花に、深くお辞儀をしてからカメラに向かった。丁寧なあいさつ、そして蜷川の言葉に真摯(しんし)に向き合う姿に、背筋が伸びる思いがする。

 主演映画「星の子」で、新興宗教に傾倒する両親を持つ中学生・ちひろを演じた。同級生や想いを寄せる教師との関係のなかで、ちひろの心は揺れる。言葉にならない感情をまなざしや佇(たたず)まいで表現する、難しい役どころだ。「すべてをわかりやすく伝えることだけがお芝居の面白さではない」と、身をもって知ることができた現場だったという。

「演技はプラスするだけでなく、マイナスすることも大切なんだ、と改めて感じました。ちひろも、気持ちが落ち着いているときもあれば、急に感情が爆発するときもある。ときに引き算していくことも演技には必要なんだ、と」

 俳優歴は10年を迎えた。実質的なデビュー作であり自身の原点とも言えるドラマ「Mother」(2010年)が、演技への向き合い方を決定づけた。

「みんなで一つのものを作り上げていくことの素晴らしさを教えてもらいました。最初の作品がこの作品で良かった。そう思える作品でした」

 仕事をするうえで、日々大切にしていることはなにか。そう問うと、真っすぐな姿勢の奥にある、彼女の生き方が見えてきた。

「自分ができること、自分がしなければいけないことを一生懸命頑張ること、そして『感謝すること』です。『ありがとうございます』は思うだけでなく、きちんと言葉にするようにしています。多くの人のおかげで自分はカメラの前に立つことができている。そのことをいつも忘れずにいたいと思っています」

(ライター・古谷ゆう子)

※AERA 2020年10月12日号

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もはや「無理ゲー」 教員の9割が負担増 新学期も減らぬ雑務と続く消毒作業

2020年10月7日 18:30 AERA

 ただでさえ忙しかったところに、コロナ禍で雑務が激増──。教員たちの負担増が止まらない。AERA 2020年10月12日号から。

【#先生死ぬかも…SNSで教師が悲鳴 オンライン授業で負担増「これ以上は地獄」】

*  *  *
「教職は、いわゆる『無理ゲー』です。人間ができる仕事量じゃない。それがコロナ禍でさらにひどくなりました」

 北海道の公立小学校に勤務する女性(37)はそう訴えた。

 女性は毎朝7時45分に学校に行き、慌ただしい給食の時間以外はノンストップで6時間の授業をこなす。児童が下校した後の15時45分から16時半までが休憩時間だが、膨大な雑務のため、とれることはまずない。教材研究と授業準備、ノート添削、評価、採点。校内の消毒や急な打ち合わせや会議も入る。定時までにはとても終わらず、21時頃まで勤務することもザラだ。

 教員の激務はかねて問題視されていた。長時間労働とサービス残業が常態化していたところに、コロナ禍で業務が上乗せされ、負担増に歯止めがかからない。夏休みが明けても状況に変わりはない。

「死ぬかもではなく、もう人も死んでいます。過去にストレスによる脳出血などで亡くなった先生は、私の知り合いだけでも複数います。流産した先生はもっと多い。死屍累々です」(女性)

■業務増の教員が9割


 AERAが教員や保護者向けにアンケートを実施したところ、100件を超える回答が寄せられた。以前より就労時間や業務が「非常に増えた」「やや増えた」とする教員は、89%にものぼった。理由として「消毒などの感染予防対策に時間をとられる」「休校による学習の遅れを取り戻すための授業時間増」を指摘する声が目立った。

 神奈川県の男性(50)の勤務先である公立小学校では、児童が下校した後、18時頃からの教員による消毒が日課だ。

 児童は毎朝検温して連絡ノートに書いてくる決まりだが、忘れた児童は保健室まで教員が連れていって検温する。そのため授業開始が遅れることもある。

 授業では、感染予防のため、児童の授業中の発話や、教壇に出て黒板にチョークで答えを書くことを禁止している。

「質問も確認もできないので、理解度はノートをチェックするしかない。6時間分の全員のノートを見ることになります」(男性)

消毒に関しては、文部科学省は8月6日、衛生管理マニュアルを改訂し、「床の消毒や机・椅子、トイレ、洗面所の特別な消毒は不要」としている。だが、多くの学校で教員による消毒作業が続いているのが現状だ。

 沖縄県の男性(22)が勤める公立小学校では、毎朝7時半、登校してくる児童の靴裏消毒を行っている。塩素系漂白剤をしみこませた雑巾を玄関に置き、靴で踏んでもらう。男性は7時に学校に行き消毒の準備をして、7時15分から児童を待つ。

 感染予防を意図しているなら、「中途半端」だと男性は言う。

「靴裏消毒は登校時だけ。子どもたちはその後、外で植物に水をやったりしますが、戻ってくるときには雑巾は踏まない。もはや儀式のようなものです」

 文科省の方針転換にもかかわらず、消毒作業をやめられない理由を、男性はこう考えている。

 一度は感染予防に効果があるとされ、励行されていた習慣だ。行わなくなって感染者が出たら、対策を怠ったからだと糾弾されるかもしれない。「万一のとき、『対策は常にやっていた』という保護者への言い訳、ポーズだと思う」

(編集部・小長光哲郎)

※AERA 2020年10月12日号より抜粋

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稲垣えみ子「共助とは『助けたつもりが助けられていること』なのかもしれない」

2020年10月5日 19:00 AERA

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマーの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【7年間あまり、生きづらさは変わらなかった 政治にこそジェンダー多様性を…小島慶子】

*  *  *
 報道によれば、日本女性の4人に1人は70歳以上とか。やっぱりね。だって今や私の知り合いといえばほぼご近所さんだが、メーンは圧倒的に70以上の女性。自分も年だからかと思っていたんだが、そもそも人口が多かったのだ。

 にしても、やはり我が人脈の高齢化は甚だしいように思う。何しろ会社員時代は高齢の友人などほぼゼロ。それがなぜこうなったかというと、会社を辞めた直後に母を亡くしたことが大きく影響している。晩年、認知症を得て自信をなくし、悲しそうな顔をしていた母。そんな母をちゃんと受け入れられずジタバタしているうちに母は旅立ってしまった。

 それからというもの、やたらとお年寄りの姿が目についた。目が合えば思い切ってコンニチハと挨拶するようにもなった。もし母にも、こんなふうに挨拶しあえる近所の人がいたらきっと嬉しかったんじゃないかと思ったのだ。そうこうするうちにどんどん知り合いが増えた。多少なりとも誰かの支えになればいいなと思った。

 ところが事態は思いもよらぬ方向へ。

 何もかもが思うようにいかない時、ベンチで日向ぼこをしている馴染みのオバアに挨拶すると、満面の笑みと挨拶が返ってくる。で、ふと気づけば私の背筋は少し伸びている。胸を張っている。オバアを元気づけたつもりが自分が元気になっているのだ。そうか。オバアは私に、こんな私にもちゃんとできることがあると思わせてくれているのだ。

 次第に、人を助けるってことがよくわからなくなってきた。助けるほうが助けられている。助けられるほうが助けている。どっちがどっちだかわからない。

 で、これを「共助」というのではと思ったので書いてみた。菅総理はじめ、皆さん、かつての私と同じで案外やったことないんじゃないかと思って。助けられることが得で、助けるのは損と思ってるんじゃないかと思って。そうじゃないんだよ。人を助けることは人生に必須のエネルギー源なんだと思う。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

※AERA 2020年10月5日号

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cat_1_issue_oa-aera oa-aera_0_wuhfouankssf_月イチ積立はもう古い!? 「毎日積立」の投資信託のオトク度検証 wuhfouankssf wuhfouankssf 月イチ積立はもう古い!? 「毎日積立」の投資信託のオトク度検証 oa-aera 0

月イチ積立はもう古い!? 「毎日積立」の投資信託のオトク度検証

2020年10月5日 18:00 AERA

 株価が暴落したニュースなどを見ると「やっぱり投資は怖い」と思う人が多いだろう。そんな暴落をチャンスに変えられるのが「積立投資」だ。

 AERA増刊『AERA Money 今さら聞けない投資信託の基本』では、積立投資の中でも「毎日積立」に注目し、その利益を試算している。

【池井戸潤が「半沢直樹」新作を語る! 情報の多寡でモノの値段は変わる】

 積立投資のいいところは、「始めどき」を考えなくてもいい点だ。「今、投資をはじめるのがいい時期か、悪い時期か」を正確に予測することは誰にもできないが、積立投資ならいつ始めてもいい。

「資金をいっぺんに全額投資してしまうのではなく、月末に5000円ずつなどの小分けに買って時間を分散することで、大きな損をなるべくしないことを目指しませんか。これが積立投資のいいところです」

 と、マネックス証券マーケティング部の西尾貴仁さんも背中を押す。簡単なのに威力のある投資法なのである。

 ある金融商品に一括投資した場合と、10年間、毎月1万円ずつ投資した場合の、運用成果を比較すると、「毎月1万円」のほうが最終的に利益は多くなる。

 積立投資の場合は、価格が下落する過程でもコツコツ買っているため買値が平均的に下がるからだ。そのあとに価格が値上がりすれば、大きな利益を得られるというわけである。

 積立投資は、毎月積み立てる金額を定額にすると、より損をしにくくなる。

「同じ金額を積み立てる形で投資すると、価格が下がったときにはたくさん買えて、価格が高くなったときには購入数量を減らせます。投資の失敗の代表格である高値づかみを防ぐことができるうえに、価格が安いときにたくさん買うことができるのです」(西尾さん)

 これが「ドルコスト平均法」と呼ばれる、損をしにくい投資法だ。この方法なら、あれこれ投資のタイミングについて考えなくてよい。毎月、自動的に定額で積立をしているだけでいいのである。「投資は手間をかけず、ほったらかしにしたい」というわがままな欲求が、最も効率のいい運用につながるというわけ。

 ネット証券などの金融機関では自分の決めた金額で投信を積み立てられる。ふだん使っている銀行を使って毎月自動で買うことも可能だ。

 銀行で投信を買えば、もちろん銀行口座から自動引き落としができる。資金移動に関する手数料も一切かからない。

 毎月積立方式はかなりメジャーだが、最近はネット証券各社が「毎日積立」のサービスをはじめている。

 毎月と毎日。毎日のほうがより分散できるわけだが、どっちがトクになるのだろう。西尾さんに試算をお願いした。

 日本株の指数・日経平均株価と、米国株の指数・S&P500に連動するインデックスファンドに「毎日積立」で投資をした場合と、その資金をまとめて月末に全額投資した場合の、運用成果の差を検証した結果は?

 積立金額は1日当たり100円(つまり1カ月だと約3000円)と仮定すると、3カ月では損益で約3%、金額にして約200円ほど毎日積立のほうが有利だった。

 たかが200円と思うなかれ。これが1カ月約3万円分の積立なら約2000円の差である。

 6カ月、1年と期間が長くなると差は縮まるが、それでもわずかに毎日積立のほうが好成績。あくまで「このファンドの場合」というただし書きはつくが、参考になる。

(取材・文/安住拓哉、編集部・中島晶子、伊藤忍)

※アエラ増刊『AERA Money 今さら聞けない投資信託の基本』の記事に加筆・再構成

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「携帯値下げおじさん」菅首相のジレンマ 圧力過剰なら「デジタル化」に支障の恐れ

2020年10月5日 18:00 AERA

 携帯電話料金の値下げは、菅義偉首相の総務大臣時代からの肝入り政策。寡占状況の業界の競争促進という劇薬には副作用もともなう。AERA 2020年10月5日号で掲載された記事を紹介。

【「8割おじさん」のはち切れそうなシャツから妻が感じたサイン 西浦博】

*  *  *
「令和おじさん」どころか「携帯値下げおじさん」と言えるほど、携帯電話料金の値下げに執念を燃やしてきたのが菅義偉首相だ。「首相がわざわざ言及すべきことか?」「総選挙前の人気取りだ」など批判の声もあるが、菅氏の意をくんだ武田良太総務相は「1割(の値下げ)では改革にならない」と強調するなど鼻息は荒い。

 携帯電話会社はあくまで民間企業であり、値下げは各社が実行することだ。本来なら、政府は各社が値下げしたくなるように、市場の競争を活性化させる政策を打ち出すことしかできないはずだが、携帯電話大手からは「確実な値下げのために料金を政府の認可制に戻すのでは」との不安も聞かれる。

 政府関係者は認可制についてはきっぱり否定したが、世界的にも高い大容量プランを主なターゲットと明かした上で「手段はまだまだある」とほくそ笑む。

■コロナ禍でも高利益率

「国民の財産である公共の電波を提供されているにもかかわらず、上位3社は市場の約9割の寡占状況を維持し、世界でも高い料金で20%もの営業利益をあげている」

 菅氏は9月2日の自民党総裁選出馬会見で携帯電話市場の問題点について言及。首相就任後も携帯値下げに向けた改革を進める考えを強調した。菅氏が指摘したように、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社は、4~6月期に新型コロナウイルスの影響で多くの企業が減収減益となる中で20%以上の営業利益率を確保した。総務省の調査では、特に20GBの大容量プランが、世界で最も高価な水準となっている。

 菅氏の方針を受けて武田総務相も値下げを「100%やる」と断言した上で、「健全な市場競争が行われる環境を作る」と話した。

 では、どのような方法で値下げを実現するのか。総務省関係者への取材で見えてきた施策の大きな方向性は、従来と変わらない。格安スマホを提供するMVNOを含めた携帯会社間の乗り換えを活発化させ、利用者を引き留めるためより安価な料金を設定させようという流れだ。

 具体的には、番号を変えずに携帯会社を乗り換えるMNPの手数料を、年度末までに無料化するよう各社に義務づける。さらにインターネットの光回線と携帯のセット割引を禁止する。「2年縛り」など拘束期間付きで安くなる携帯の料金プランについては携帯大手はすでに見直しを進めているが、総務省関係者は「光回線については依然として縛りがあり、光とセットのプラン利用者は携帯会社を乗り換えにくい」と問題視している。

 特に高いとされる大容量プランの値下げに向けては、MVNOに期待する。総務省は今年から、MVNOが携帯大手からデータ通信回線を借りる際に支払う「接続料」の算定方式を変更した。これにより、接続料が3年後には半額程度まで下がる見通しとなった。総務省はまずはMVNOに大手の半額程度の大容量プラン導入を促すことで、次に、携帯大手が対抗値下げすることに期待を込める。

【有働アナに対してムキになって…「菅首相」の“野心”が見えた瞬間 池上彰と佐藤優が語る】

■切り札eSIMに難点

 しかし、これまでの総務省の競争促進に向けた環境整備は狙い通りの結果をもたらしていない。料金値下げはおろか、その前提となるはずの携帯各社間の乗り換えの活性化も起きていない。値下げ期待が利用者の腰を重くしている面もあり、各社の解約率は0.5%程度のままだ。

 乗り換えを増やす「切り札」はないのか。携帯大手の関係者が「乗り換え活性化につながるのは間違いない。携帯大手は確実に嫌がる」と断言するのが、オンライン上で携帯電話会社を簡単に変更できる「eSIM」という仕組みへの対応を携帯大手に義務付けることだ。

 SIMとは、携帯電話会社や電話番号などの情報の入った小さなカードで、機種変更の際にスマホに差し込んだことがある人も多いはずだ。eSIMはこれをスマホに組み込んだもの。ショップで契約したり、カードを差し替えたりしなくても、スマホ操作で簡単に携帯会社を乗り換えることができる。

 すでにiPhoneやGalaxyの最新機種には組み込まれているが、「携帯会社を毎月乗り換えるのも苦ではなくなるため」(関係者)、大手各社は対応に後ろ向きとされる。また、新型コロナで客足が激減している携帯電話ショップの営業に悪影響を与えるなどのデメリットもあるため、総務省は慎重に検討するとみられる。

 しかし結局、間接的な環境整備しかできない以上、どこまで値下げするかは携帯大手任せという図式は変わらない。また携帯大手への値下げ圧力を強め過ぎれば、各社が5Gを整備するための資金的な余裕を削ぐことになり、菅氏が進める社会のデジタル化に支障をきたす恐れも出てくる。様々なジレンマを抱えた携帯値下げに政府も消費者も満足する日は来るのか。菅氏が総務大臣時代の07年から始まった携帯電話各社とのバトルの最終戦の勝者は。(ライター・平土令)

※AERA 2020年10月5日号

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コロナ禍で「あーん」「もぐもぐ」がわからない子どもたち 保育や家庭でできること

2020年10月5日 18:00 AERA

 赤ちゃんが人間性の土台を作る乳児期に、マスクをした大人ばかりで表情が読めず、反応が薄い乳幼児が増加している。医療や保育の現場で、家庭で、どう健やかに子どもを育んでいくべきか。AERA2020年10月5日号から。

*  *  *
 保育現場でも懸念が高まっている。園長が集まる会合で、東京都目黒区保育課の大塚浩司課長はこんな話を聞いた。

「複数の園長から、『先生がマスクをしていると、怒っている、喜んでいるという感情が子どもに伝わらなくて心配だ』と意見が挙がっています」

 細部小児科クリニック(東京都文京区)の細部千晴院長(57)も乳児への影響を実感している。

「笑わない赤ちゃん、静かな赤ちゃんがコロナ禍に増えたと思います。マスクで表情が伝わりにくいのもそうですが、自粛が続き人との交流が減ってしまい、親も抑うつ気味で子どもとほほ笑み合う時間が減ったからではないかと思います」

 それだけではない。

「のどを診るとき、『あーん』と言っても、口を開けてくれない赤ちゃんが増えました。私がマスクの下であーんと口を開けても、赤ちゃんには見えていないし、学習していないからだと思います」(細部院長)

 台東区立たいとうこども園では、口の動きを伝えるために、独自の工夫を行っている。ある日のお昼どき、マスクをした保育士が、0歳児を膝に抱えておかゆを食べさせていた。スプーンでおかゆを取り、赤ちゃんの口に近づけた。

「アギアギするよ」

 保育士は目尻を下げて、うなずくように咀嚼(そしゃく)する動作をした。すると、子どもは保育士のマスクや目を見て、もぐもぐと噛み始めた。

 池田美恵子園長(41)は語る。

「口を使った動きは、おもちゃではなく、人との関わりのなかで獲得するものだと考えています。いまは、先生がマスクをしているので、乳児は模倣しにくい。食事中にうまく上あごでつぶせているか、飲み込めているか、いつも以上に気をつけて見ています」

■口元の動きを見せる

 東京都江東区の東大島駅前保育園の園長(46)も、乳児が「もぐもぐ」できなくなることを心配している。

「0歳児は、『もぐもぐ』という言葉の意味もまだわかりません。言葉を聞くだけでなく、口の動きを見て、大人のまねをしながら覚えていきます。感染対策をしなければならないけれど、口元は見せてあげたいと思っていました」

 そこで、この園では、食事や読み聞かせのときに限って、マスクを外してフェイスシールドを着けることにした。

「表情や笑顔が格段に伝わりやすくなりました」

 新型コロナウイルス感染症は、国内でも世界的にもいまだ終息の兆しは見えない。保育と新型コロナウイルスの感染対策をどう両立させるかは、保育の現場にとって大きな課題だ。

 対策の方針は自治体によってさまざまで、結局は園が独自に判断していくことになる。子どもになるべく1人遊びをさせたり、散歩やプールを中止したりした園もあったと聞くが、関係者の話では、「これでよかったのか」と自問自答が続いているようだ。

 どこまで感染対策が必要なのか、見えづらい状況のため、子どもより親の方が混乱している面もある。東京都世田谷区の上町しぜんの国保育園の青山誠園長は言う。

「『きちんと対策した』という大人のリスクマネジメントの意味合いが大きいのではないか。教育の場は、育つ子どもを主体に考えるべきでは」

■家庭でできることは

 保育士の経験がある、医学博士の東京家政大学の細井香准教授(乳児保育)はこう提案する。

「マスクで表情がわかりにくいなら、『グッド』と言って腕で大きな丸を作るなどジェスチャーをつけると伝わりやすくなるでしょう。フェイスシールドやマウスシールドは、飛沫を完全には防げないかもしれませんが、食事や口元を見せたいときなどに使うといいと思います。口元が見えれば、発音の難しい『あ』と『お』の口の形が違うことも伝えられます」

 アクリル板などで仕切りをすれば、口元を見せて絵本の読み聞かせをすることもできる。

 家庭でも、子どものためにできることはたくさんあるという。細井准教授のおすすめは、着替えやミルクを飲ませるときに頻繁(ひんぱん)に呼びかけたり、ベビーマッサージや抱っこで触れ合ったりすることだ。

『乳児期の親と子の絆をめぐって』の著書がある、しぶいこどもクリニック(東京都大田区)の渋井展子(ひろこ)院長(昭和大学医学部小児科客員教授)もこうアドバイスする。

「家に一緒にいる時間に、子どもに言葉のシャワーを浴びせましょう。できるだけ子どもの思いや欲求に応えて、安心させてあげてください。それが子どもの成長につながり、自分を励ますことができるようになると思います」

(ライター・井上有紀子)

※AERA 2020年10月5日号より抜粋

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