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「2020年を振り返ったら、本当に何もなかった。時間が失われた感覚がしました」
「小中高生や社会人は制限付きでも、通勤通学できています。それを見ていると、モヤモヤしてしまう。県外に住む友達とは、もう1年以上会っていません」
「若い方は体力があり、行動力がある方々が、自分自身が感染している自覚がないままあちこち活動される」(20年3月、小池百合子都知事)、「どうか、若い世代の皆さん、日本の危機を救う立役者になってください」(今年1月、尾身茂・政府分科会会長)。
■涙が出る日も多かった
「若者に呼びかけるのに、政治家はクラブに行ったり、飲酒を伴う会食でクラスターが発生したりしている。私たちが我慢していることのすべてが無駄に思えました」(女性)
「若者が感染を広げているというのは、コロナ禍の初期に作られた設定なのかなと思うようになりました」
「どんどん新しい情報が出て、何が許されて何が許されないのかの設定が変わっていく。そう考えるようになってからは、そこまで気にならなくなりました」
「カラオケクラスターが頻発したときには、カラオケや高齢者を名指しした警報は出なかった。また『若者が』と言われる日がくるのかとうんざりしています」
■若者の孤立化進む
「近年は出自が多様化し、またそれが顕在化したことで、他人と自分は異なるものだという感覚が強まっています。さらに、コロナ禍では集まって相互理解を深めることもできません。自分が何かの代表という意識を持って発言することはますます難しい状況です」
「東日本大震災時や就職氷河期の若年層にも、その世代特有の問題はありました。ただ、コロナ禍ではそれが顕在化しづらい。震災などの災厄とは違うレベルで孤立化が進んでいると感じます」(富永さん)
「できるものなら1年を返してほしい」
■自粛の「見返り」どこに
「成人式の後に同窓会があるかないかは、今後開かれる同窓会にも影響します。私たちの代は、将来音信不通になったり、生死不明の同級生が増えたりするのではないかと思います」
「当事者しかわからないかもしれませんが、18~30歳くらいの世代とそれより上の大人の1年は遥かに重みが違います。なのに、どうして『最近の若者は』なんて言う人たちのために我慢しなければいけないのか。『見返りは?』というのが本音です」
「見返り」というと、自分勝手に聞こえるだろうか。だが、そうした感情を持つ人は少なくないようだ。心療内科医の海原純子さん(68)は、若年世代が受けた教育の影響を指摘する。
「診察していて感じるのは、大学入試や就職といった『目標』が掲げられ、その結果のために行動を求められ、行動してきた世代だということです」
「若い世代と年長世代の見返りへの感覚は大きく異なります。我慢という形で貢献すれば、安全になった社会で楽しさを享受できるというのが年長世代の考える見返りです。ただ、若い世代からすれば、楽しさは本当に享受できるのかと疑ってしまうほど、社会の展望が見えない状況です」
「若い頃の方が吸収する力は圧倒的に大きいのに、行動制限で活動範囲が狭くなってしまったことは、今後の人材育成にも影響するように感じています。いつまで我慢していればいいのか、夢だった仕事に就くことができるのか、不安なままです」
■不満は人に伝えて
「若い世代の方には、不満を個人の中にため込まず、人に伝えてほしい。そして社会はその声に耳を傾けなければいけない。過去の若者政策の失敗は、彼らの声に対して社会が適切なセーフティーネットを提供できなかったことにあります」(富永さん)
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※AERA 2021年3月1日号