【浜辺美波 好物は意外と渋い海産物 俳優として憧れるのは原節子!】
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小栗旬(以下、小栗):原作を読んだとき、フィクションとはいえ、これが真実だったんじゃないかと思えるほどのリアリティーを感じました。だから、この作品を映画化すると聞いたときは「覚悟がいるチャレンジになるな」と直感しましたね。
■リアリティーある怖さ
星野源(以下、星野):僕は、このプロローグのくだりを聞いたときに、鳥肌が立ったんです。モチーフとなった事件も、幼い頃にテレビで報じられているのを見た記憶があります。事件に利用された子どもがまだどこかで生きていて、しかも自分と同世代であるという事実に、すごくリアリティーのある怖さを感じました。
塩田武士(以下、塩田):実際の犯行でも、3人の子どもの声を吹き込んだテープが使われています。いちばん年少の子は、私と同じ関西出身で、しかもほぼ同い年。小学生のとき、道ですれ違っていてもなんらおかしくはないんです。さらに、これだけの劇場型犯罪で、多くの証言や遺留品があるのに、真相はまったくわかっていません。私は作家として、リアリティーのある小説を書きたいと常々考えていますが、こうした題材は一生のうちにいくつも巡り合えるものではないと思っています。
■小道具一つひとつまで
小栗:僕は原作を読んで、阿久津というキャラクターには塩田さんの血が色濃く流れていると感じたんですよ。それで撮影が始まって少ししてから、塩田さんと食事をご一緒させていただいて、新聞記者時代の話を聞かせてもらったりしました。そこで聞いた体験談や塩田さんの人となりが、阿久津ににじみ出ればいいな、と。
塩田:物語の中で、阿久津が犯人の手がかりを求めてイギリスのヨークという街に取材に行くシーンがあるんです。やっぱり、小栗さんが歩くとかっこいいんですよ。ヨークの美しい街並みを背景にしても負けない存在感があって、そんなところは記者時代の私とはまったく違いましたね(笑)。
星野:撮影現場では、数時間でしたが、本物のテーラーの方から作業内容を習うことができました。自宅でその動画を見ながら、ダイニングテーブルの上に型紙を広げて、チョークで寸法を書く練習もしました。布地にアイロンをかけるシーンは、服のシワを伸ばしていく気持ち良さが画面から伝わるといいですね。そしてとにかく、セットがリアルですごい。
塩田:試写を観たとき、小道具の一つひとつまですごく気を使って再現しているのがわかりました。観た瞬間、これは半端じゃないと思いましたね。
星野:曽根が店主を務めるテーラーのお店は、実際に京都の空き地にセットを建てたんです。
小栗:セットじゃなくて、現実にあるお店で撮影させてもらったような感じがするよね。
星野:もう、ロケに行ったんじゃないかってくらい。感動して、めちゃめちゃ写真を撮っちゃった(笑)。
(ライター・澤田憲)
※AERA 2020年11月2日号より抜粋