弱冠20歳とは、とても思えない。レッズのGK鈴木彩艶は冷静に自己分析し、試合を重ねるたびにパフォーマンスを向上させている。
9月3日の鹿島アントラーズ戦ではリーグ戦で今季初めて先発出場したものの、2ゴールを許して痛恨のドロー。「いずれも防ぐことができた失点だった」と猛省して臨んだ10日の柏レイソル戦では、要所でピンチをしのぎ、勝利に貢献した。
「自分としては最後のチャンスだと思い、すべてを懸けて戦いました」
3点リードで迎えた後半の67分過ぎからの仕事ぶりは圧巻。ニアサイドを狙われた強烈な一発は外に弾き、クロスボールも的確なパンチングでクリアした。なおも相手の攻撃が続くなか、至近距離からのシュートを防ぐと、次はファーサイドに飛んだボールまでセーブして見せた。
190cm、93kgの大きな体が飛び上がれば、目を引くものがある。ビッグセーブの連続には埼玉スタジアムも沸き上がり、『ザイオン』コールがこだました。
「シュートを続けて打たれても集中していました。ミスしても、失点しても、最後まで同じメンタル状態を保つことを心がけていたので。
後半はクロスを上げられる前のポジショニングが良かったです。セーブした場面は、練習でやっていることをいつもどおりにできたと思います」
試合後の受け答えもいつもどおり。自らのスーパープレーを振り返っても、興奮した様子は一切ない。むしろ、いくつか反省点もあったという。
「また課題が見つかりました。しっかり反省して、次もチャンスをもらえれば、頑張りたいです。ただ、自分のパフォーマンスよりも、まずは勝つことが大事。ファン・サポーターの方たちも、何よりも勝利を求めていると思います。僕は勝利に貢献するためにプレーします」
一本筋の通った言葉には、強い覚悟がにじんでいた。
真面目で硬派な男は、取材ゾーンでもスキらしいスキを見せない。一回り、二回りも年齡が上の報道陣に囲まれても、慌てることはなく、自らの言葉ではっきりと応える。
ただ、明確な理由がないことを聞かれれば、さすがに少し困惑した表情を浮かべていた。2週間前に染めたばかりの髪の毛である。
「なぜシルバーに染めたのか? うーん。それは気分ですかね。どんな気分? うーん。いいかなと思って……」
さいたま市内の有名なメンズサロンで染め上げた自慢のヘアは、周囲の評判も上々。レッズユースの先輩である伊藤敦樹は「ザイオンだからこそ似合うカラー。すごくいいと思いますよ」と絶賛していた。
彩艶本人もまんざらではない様子。当初こそ慣れない感覚があったと言うものの、いまではすっかり気に入っている。
「チームの人たちは、『絶対にこっちの方がいい』と言ってくれるんです。本当に染めて良かったな、と思います。ちょっと色が落ちてきましたけどね」
最後にふと口元を緩めたときだけは、20歳らしさが垣間見えた。いまは伸び盛り。髪色は色あせても、彩艶の輝きは増すばかりだ。
(取材・文/杉園昌之)
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