ベンチで出迎える西川周作の笑顔には、特別な思いが詰まっていた。
3月26日、YBCルヴァンカップ第2節の清水エスパルス戦。浦和レッズでの公式戦で初めて先発出場したGKの牲川歩見が引きあげてくると、すぐに労いの言葉を掛けた。
『ニエ(牲川)のおかげで、勝ち点を取れたよ』
試合後は浦和駒場スタジアムで多くの報道陣に囲まれる牲川歩見を遠巻きに見ながら、この日の控えGKは満足そうな表情を浮かべていた。
「素直にうれしくて。一緒にジョアン ミレッGKコーチのもと、練習している仲間ですから。あの落ち着いたセービングは、練習の成果だと思います。味方のミスもカバーして、試合に負けなかったのも彼のおかげかなって。それくらい素晴らしかった」
1枠しかないポジションを争うライバルではあるが、切磋琢磨するチームメイト。レッズGK陣の結束は強いという。ジョアンGKコーチの指導を受ける仲間だからこそ、ビッグセーブの裏側まで見える。
「失点直後、北川航也選手のシュートを防いだシーンは、わざとコースを空けて、誘い込んでいたと思います。終了間際のセーブも、ニアに誘っていたから、シュートが真ん中のコースに飛んで来ても、対応できたのかなと。偶然でシュートはストップできません。そこには、必ずセーブできる理由があるんです。そこがキーパーの面白いところ」
すべては必然。試合終盤、キャッチしてすぐさま、鋭いパントキックで興梠慎三に送ったボールもGK陣として取り組んでいることだった。
「僕たちの優先順位はまず一番奥(遠い場所)、そして中間、最後に手前。これもジョアンの教えが生きたプレーでしたね」
西川はU-22日本代表のヨーロッパ遠征で活躍する鈴木彩艶のプレーもチェックし、「練習どおりのプレーを出せていた」と頬を緩めていた。
リーグ戦では正GKとして君臨するベテランは、後輩たちの突き上げに常に危機感を抱きながらも自らのモチベーションに変えていた。
「1試合ごとにこれが最後かもしれないという気持ちで、ゴールマウスに立っています。今のGK陣は、すごく良い関係性を築けていると思います」
取材ゾーンで話を終えると、36歳の守護神は去り際ににっこり笑って付け加えた。
「ニエのこと、(記事で)取り上げてくださいね」
さりげない気遣いの言葉にもチームワークの良さがにじみ出ていた。レッズのGK陣は、これからもグループでレベルアップしていくつもりだ。
(取材・文/杉園昌之)
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