3年計画の2年目。2021年シーズンはリカルド ロドリゲス新監督のもとでスタートした。新生レッズは新しいスタイルを構築するために産みの苦しみを味わい、壁を乗り越えながら成長していった。苦労を重ねて、ベースを築いたシーズン前半を振り返る。
スタイルの変革期となったシーズン序盤は、我慢の連続だった。
リーグ開幕から5試合を消化し、わずか1勝のみ。スペイン人監督が新たに取り組むサッカーは思うように機能しなかった。
自陣の深い位置からパスをつなぐ姿勢を見せていたが、敵陣までボールを運ぶことができずに悪戦苦闘した。
初めのターニングポイントとなったのは、悪夢のような第6節。前年王者の川崎フロンターレに完膚なきまでに叩きのめされ、0-5の大敗を喫してしまう。
ただ、ショッキングな敗戦を境に、指揮官はより大胆かつ柔軟な采配を見せ、チームを立て直した。
試合ごとにコンディションや調子を見極めながら選手を入れ替え、システムも4-2-3-1と4-1-4-1を使い分けて対応していく。
チーム状態を好転させる上で、各ラインに大きな役割を果たしたキーマンもいた。
川崎戦後の7節・鹿島アントラーズ戦から右サイドバックとして先発に名を連ねた西大伍はそのひとり。ビルドアップに多く関わることで、パスワークに落ち着きをもたらした。
プレスをいなし、敵陣へ侵入する回数が増加。相手に圧力をかけられると、あたふたしていたチームがまるで嘘のようである。7節からはシーズン初の3連勝を飾っている。
不安定だった守備を引き締めた柴戸海の働きも語り落とせない。
開幕当初はスタイル変更に戸惑いベンチを温めていたが、徐々になじんでくると、持ち前のカバーリングとボール奪取力を生かし、中盤で存在感を示した。
そしてシーズン前半戦、新生レッズの勢いを加速させたのは、移籍ウインドーぎりぎりで加入したキャスパー ユンカー。ノルウェーリーグで得点王を獲得した実績は本物だった。
デンマーク人ストライカーは、デビュー戦となったルヴァンカップの柏レイソル戦(5月5日)でいきなり挨拶代わりの一発を叩き込む。
続くリーグ戦でもベガルタ仙台戦、ガンバ大阪戦と2試合で3ゴールを奪取。ユンカーが初先発した13節の仙台戦からチームも3連勝を含む5戦負けなしと、好調を維持した。
東京オリンピック前の過密スケジュールは、多くのメンバーをうまくローテーションさせて対応。J1全38節の折り返しの試合なった19節の柏レイソル戦も、その3日前に開催された前節の湘南ベルマーレ戦から選手を大幅に入れ替えて、勝ち点3をしっかり積み上げた。
リカルド ロドリゲス監督は確かな手応えを得ていた。
「全員がいいプレーを見せたことはすごくポジティブなこと。これからリーグだけでなくルヴァンカップ、天皇杯もある。12月まで戦い続けていくためには、きょうのようにチームで戦っていかないといけない。今回の勝利は、非常に良かった」
まるで後半戦の戦いを予言しているようだった。【シーズン後半総括に続く】
(取材・文/杉園昌之)
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