浦和レッズの2021年シーズンは、天皇杯優勝で閉幕した。リーグ戦は6位で終えたが、開幕前に掲げたAFCチャンピオンズリーグの出場権を獲得。東京五輪明けからは結果に内容がともなってきた。明るい未来を感じさせたシーズン後半戦を振り返る。
東京オリンピックで列島が沸いていた夏、浦和は各ラインに戦力を増強し、パワーアップを図った。
リーグの中断期間中は新戦力の融合に時間を費やし、後半戦の追い上げに備えた。迎えた8月、“リニューアル・レッズ”の快進撃が始まる。
24節のサガン鳥栖から30節のFC東京戦まで、1引き分けをはさんで7戦負けなし。5試合連続のクリーンシートを達成するなど、スキのない戦いぶりを見せた。
年間17試合を無失点で抑え、クラブ記録を更新。チームづくりも着実に進んだ。夏以降は相手にプレスをかけられてもうまくいなし、敵陣まで余裕を持ってボールを運べるようになった。
シーズン途中に移籍加入した選手たちをスムーズに組み込み、チーム力の向上につなげた指揮官の手腕は目を見張るばかりである。
柏レイソルから電撃加入した江坂任は、中断明けとなった23節の北海道コンサドーレ札幌戦からスタメンに名を連ね、2試合目には初ゴール。パスの出し手にもなれば受け手にもなった。
シーズン中盤以降は攻撃の核となり、リーグ戦16試合で5ゴール1アシスト。天皇杯の決勝でも貴重な先制ゴールをマーク。本人は数字に満足していなかったが、しっかりと目に見える結果を残した。
24節の鳥栖戦にはフランスのマルセイユから加入した酒井宏樹が登場。東京オリンピック日本代表から戻ってくると、ほとんど休むまもなく天皇杯の決勝までフル稼働。格の違いを見せつけるパワフルなプレーで相手を蹂躙した。
1対1ではほとんど負けず、セットプレーでも空中戦の強さを発揮していた。リーグ戦14試合に出場し、2ゴール。数字では測れない、強烈なインパクトを残した。
デンマークリーグでMVPを獲得したセンターバックのアレクサンダー ショルツは25節の徳島ヴォルティス戦で初先発。試合を重ねるごとに持ち味を出し、欠かせないピースとなった。
読みを生かしたインターセプトは光り、奪ったボールはそのまま持ち上がってチャンスにつなげた。
無失点へのこだわりは強く、シーズン後半だけで6試合の完封勝利に貢献。チームとしてビルドアップの質が向上したのも、ショルツ加入の影響は大きかった。自陣から敵陣までボールを運び、巧みにパスを供給。新たな攻撃オプションができた。
中盤で存在感を示した平野佑一の活躍はサプライズに近い。
夏にJ2の水戸ホーリーホックから加入し、すぐさま司令塔として君臨。最終ラインに落ちて、ぽんぽんと縦パスを入れ、バイタルエリアではワンタッチパスで違いを生み出した。24節の鳥栖戦からコンスタントに先発出場し、37節の清水エスパルス戦まで駆け抜けた。
シーズン後半、チームとして成長していることを証明する試合はいくつかあったなかで、象徴的だったのはカップ戦。9月のルヴァンカップ準々決勝では半年前の3月に0-5と大敗した王者の川崎Fと互角以上の戦いを繰り広げる。2試合合計スコアで4-4に持ち込み、アウェイゴールの差で退けた。
敵地での第2戦。2点を追う87分から怒涛の反撃を見せた。ユンカーの得点でチームに火がつくと、アディショナルタイムには途中出場の槙野智章が準決勝に駒を進める同点のアウェイゴールをマーク。あきらめない執念が奇跡のドラマを呼び込んだ。忘れられない夏の日曜日となった。
最大のハイライトは、シーズンを締めくくる天皇杯の決勝。90分に1-1に追いつかれて試合の流れが変わりかけたときだ。
途中から出てきた“お祭り男”の槙野智章がまたも大仕事をやってのけた。
アディショナルタイムに劇的な決勝ゴール。すでに契約満了が決まっているなかでも、浦和の漢として意地を見せた。12月19日、冬の日曜日も深く記憶に残っている。
今季限りで生え抜きの宇賀神友弥もチームを去り、阿部勇樹は現役引退。3年ぶり4度目(前身の三菱重工時代を含めると8度目)の優勝とともにレッズの一時代に終わりを告げた。
そして、来季はアジアの舞台に返り咲く。
(取材・文/杉園昌之)
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