ふわふわのパンに挟まれた少し甘めのクリーム。長野県民にとって懐かしさも感じさせる「牛乳パン」の新商品を駒ケ根市赤穂中学校の生徒31人が開発した。地域のパン店と連携して試作を重ね、地元生産の練りごまや友好都市の抹茶などを使った、4種類の新たな味のクリームを考案。3月末に校内で行った一般向け販売では行列もできた。開発は一区切りしたが、協力したパン店で限定販売されるなど中学生考案のパンが今も楽しまれている。
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新商品を開発したのは昨年度の1年6組の生徒たち。年度始めに、総合的な学習の時間で何をするか話し合う中で、地域の人と交流した先輩や、商品開発をした高校生の例を知り、「地域と関わる商品開発をしよう」と決めた。
当初は、駒ケ根市といえばと「ソースかつ丼」を対象にしようとの案も出たが、千切りキャベツの上にソース味のかつという形が完成されており、「中学生が入り込む余地は少なそう」と方向転換。市が2018年に「牛乳パン生みのまち」を宣言したことを受け、牛乳パンに着目した。
昨年の夏休み明けから、開発がスタート。牛乳パンの歴史を学び、牛乳パンを作っている市内の四つのパン店などに協力を依頼。生徒も4班に分かれ、班ごとに一つの新商品を作ることにした。
土台のパンは協力パン店のものを使い、生徒は中に挟むクリームのレシピを開発。一つの店が作っている製造過程のクリームを基に、新たな食材を混ぜ足して、新しい味を追求した。
■「地域のため」、楽しく追求
試作品を作って食べ、改善すべき点を探った。試作にはパン店の大人も参加。ある班は、芋の裏ごしや角切りなどの工程が多く、「人件費がかかる」と指摘された。駒ケ根市産の生のイチゴを挟んだ班は「保存期間が短く、店で売りにくい」と気付かされた。
計3回の試作中、試行錯誤が続いた。イチゴを試した一つの班は、生の果物よりは日持ちのする地元生産の飲むヨーグルトに変更。ヨーグルトの酸味とクリームの甘さを生かす配合比率を試した。奥村果凛(かりん)さん(13)は「失敗しても完成に向けて追求するのが楽しかった」と語る。
「地域のため」を意識し、市内生産の練りごまを使った班の有賀琥珀(こはく)さん(13)は「自分が育ってきた地元に貢献したいと思った。やりがいがあった」と振り返る。市の友好都市の特産品に目を向けた班も。静岡県磐田市の抹茶と、石川県かほく市のサツマイモ「かほっくり」だ。特産品を使えば、相手の市でも取り扱ってもらえて地域の人が喜ぶと考えた。
完成した4種のパンは、3月23日に学校内で販売した。パンは、協力した4店が中学生のレシピ通りに製造。価格は、パン店から原価を教わり、各店の通常価格を参考に中学生が決めた。「高いと売れないし、安すぎるとお世話になったパン店の人に迷惑をかける」と真剣に検討した。
販売当日は雪が降る中、販売前から約50人が行列を作った。保護者のほか、学校関係者ではない地域住民らも並び、用意した510個は1時間弱で売り切れた。石川県かほく市が能登半島地震の被災地となったことを受け、4万円弱の利益は被災地に送る。
■一部パンは店舗などで限定販売
完成した「商品」の一部は今も販売中だ。駒ケ根市は4月14日、石川県かほく市で開くイベントに出店するブースで、かほっくりのパンを限定販売する。ごま味の「牛乳パン」は市内のパン店「ル・プレジール」で20日まで、抹茶味は「Bimi」で5月5日まで販売している。
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