民間組織「人口戦略会議」が公表した「消滅の可能性がある自治体」に、県内では26市町村が「分類」された。名指しされた自治体の住民からは「その通りではあるが…」と落胆の声も聞こえる。ただ、それでも今の場所で生きることに希望を見いだし、「消滅」にあらがおうとする人の姿もあった。
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■生活する人がいる。そんなに簡単じゃない
北安曇郡小谷村役場から車で15分ほどの山あいにある同村中土真木地区。集落への道は、23日に地区住民が行った「道普請」で落ち葉や泥が掃き出され、さっぱりしていた。ただ、参加した宇田川光平さん(47)の表情は「5~10年後、同じようにできるかは読めない」と複雑だ。
真木地区の道普請は年に2回、約1キロの区間で行う。春は雪の重みで道にせり出したカヤを切り取り、側溝に詰まった落ち葉などを取り除く。景観の整備や安全の確保のために重要な仕事だが、参加者5人のうち70歳以上が3人。高齢者施設から駆け付けた90代の人もいた。
真木地区は2014年11月の神城断層地震で家屋の大半が損壊。生活再建を諦めて村外や、村の震災復興住宅に移る人が続出した。今も集落を見渡せば空き地が広がる。村によると、今年3月末時点で同地区の人口は6世帯9人。10年前と比べて半減した。
それでも、昨年冬には1世帯だが移住者がいた。地区内で「蕎麦屋蛍」を営む宇田川さん自身も、20年前に千葉県から移住した。自然豊かな場所でそば店を開きたい―と考えた時、今はもう行われていない真木地区での山村留学の経験を思い出したという。
生老病死で人は入れ替わるかもしれない―としつつ、「私たちのような人間がやって来て、集落は残る可能性だってある」と宇田川さん。「消滅」という言葉に「生活する人がいる限り、そんなに簡単じゃないですよ」と首をかしげる。不便も、困り事もあるかもしれない―。それでも、この場所で生きていくつもりだ。
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