荒木隼人と満田誠、そして仙波大志。この3人の共通項とは何か。
広島ユース出身?惜しい。
「広島ユースから大学経由でサンフレッチェに戻ってきた選手たち」が正解だ。そして《ユース→大学→トップ》という流れを初めてつくったのが、2014年に東京学芸大から加入した茶島雄介である。
同学年の野上結貴と鎬を削る。野上とは常に刺激を与え合う間柄。2020年対FC東京戦では野上のゴールを茶島がアシストした(4月20日撮影)
茶島のスタイルは、知的かつ献身的なオールラウンダー。ドリブルもパスも守備もできる。だが、サッカーの世界は皮肉なもので、全教科75点の秀才よりも1教科でいいから120点がとれる天才肌の選手の方が名を為すものだ。
松本泰志と談笑する茶島。優しくて知的な彼は、若手のいい相談相手だ(4月20日撮影)
実際、今季の彼はカップ戦では先発するものの、リーグ戦での出場時間はわずか1分。ベンチ入りは2試合しかない。
「試合に出るには、どうすればいいのか」
茶島は悩み、考えた。チームのために走り、戦うことはできている。でも、それだけではダメだ。
トレーニングでは見ることも大切。しっかりと様子を見て、次のプレーに茶島は活かす(4月20日撮影)
「自分の個としての力をもっとわかりやすく、練習で表現しないといけないんだ」
オールラウンダーだけでは認められない。藤井智也のスピード、柏好文の得点力。では、茶島雄介は何なのか。そこを表現してこそ、チャンスは広がる。茶島は、そう理解した。
「今の自分が試合に出るために何をするべきかを感じた。そういう意味では、試合に出られないことも成長に繋がる」
質の高い動きも茶島の特長。ポゼッショントレーニングでは、彼の特長が存分に発揮される(4月20日撮影)
現状を悲観することなくトレーニングに取り組む彼の姿を、スキッベ監督は高く評価する。
「茶島は今、確かにゲームに絡んではいないが、トレーニングでのパフォーマンスは素晴らしい。このチームを助ける重要な選手です」
茶島についての質問ではなかったのに、自ら彼について語ったという事実が、指揮官の想いを物語る。
茶島が磨きをかけるのは右足のキック。精度のズレを確認する(4月20日撮影)
「クロスを含め、個の力を生かしていきたい」と語る茶島雄介は、かつて公式戦で直接FKを決めた経験を持つ。その右足をさらに磨けば、精度の高いクロスを武器とするサイドアタッカーがいないチームに対し、大きなインパクトを与えるはずだ。
茶島雄介、まだ30歳。もっともっと、上手くなれる。
茶島雄介(ちゃじま・ゆうすけ)
1991年7月20日生まれ。広島県出身。スクール・ジュニア・ジュニアユース・ユースとサンフレッチェ広島の育成組織で育った。2010年、東京学芸大に進学。1年の時からレギュラーとして活躍し、2013年のユニバーシアード日本代表に選出され、日本代表の3位入賞に大きく貢献。ウルグアイ戦では直接FKも決めた。2014年、広島に加入。2015年、クラブワールドカップでアシストを重ねて、「世界3位」に貢献。2018年から千葉に期限付き移籍し、エスナイデル監督に「ヨーロッパでも通用する」と言わしめた。2020年、広島に復帰。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】